桜雲学園の正体不明《アンノウン》

美浜

25話 DOP 直前(3)

「ちょっと陽奈ころなのタレントを見せて欲しいんだ。自分のやつの参考になると思って」 


 まだ開始まで時間があるしそれくらいなら大丈夫だろう。


「いいわよ。それじゃ·····陽奈咆哮コロナブラスター!」
「··········えい!」


 陽奈が物騒なものを使おうとした瞬間、風花ふうかさんが光の速さで陽奈の脳天にチョップをいれた。

 いつもはゆっくりと穏やかなイメージだったが、やるときは殺るらしい。  

 お見事。
 正直俺の目にもうっすらと残像が見えただけで、気づいたらもう終わっていた。


「痛いっ!?」 

「それは自業自得だよ部長」

 
 はっはっはっ、と笑いながら海崎かいざきは言うが、目が笑っていない。

 どうしてかと思ったら、風花さんが海崎ににっこりと微笑みかける。

 それはもう悪m··、天使のような笑顔で。


「ひぃ!?」 


 この一連のことは気付かなかった振りをして、話を進める。

 心のメモ帳にしっかりと“風花さんを怒らしてはいけない”と刻んだ上でだ。


 冗談だったのに......と少しふてくされていた陽奈だが、俺に言われたことはちゃんと覚えていてくれたらしく、ポケットからカードを取り出す。


「はぃ、それじゃ、ちゃんと見てね〈フレア〉」


 やる気が無さそうな陽奈だが、しっかりとタレントを発動させる。

 やはり、一度みるくらいじゃコツは掴めそうにない。
 
 でも、本当に不思議だよな。
 こんなカード一枚で火をだしたり、水をだしたりするんだぜ?
 なんか簡単にみえてくるんだよな。
 俺のタレントカードが悪いのかな?
 陽奈のだったら使えたりして。


「なぁ、ちょっとカード貸してくれない?」


 

 それはほんの出来心だった。

 教師は他人のカードは使えないと言っていたし、俺だってそれくらいは分かっていた。

 それでも俺は陽奈からカードを受け取り、タレントを使えないはずの俺はタレントを発動・・させた。


「フレア」


 俺は先ほど陽奈が見せたものと威力は弱いものの、正真正銘タレントを使うことができた。
 

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