桜雲学園の正体不明《アンノウン》

美浜

14話 志穂菜のクッキー

「みんな~~、そろそろ休憩しない?」


 志穂菜しほながどこにいるか考えていると、ちょうど部室の奥から、美味しそうなクッキーをもってやって来た。


「おおー、志穂菜のクッキーだ♪」

七星なほしさんの作ったお菓子はうまいからな」

「············待ってました」


 確かに美味しそうだけど、みんな俺の話聞く気ある?







「うまい、めっちゃうまいよ志穂菜」


 あーうまい、めっちゃうまい。
 これはあれだな、人をダメにするクッキーだな。
 もうなんか、タレントのこととかどうでもよくなった。

 みんなが夢中でクッキーを頬張っていると、荒々しく扉が開かれた。


「た、大変です兄貴! ま、また出たんですよ!」

「んっ? なんだいきなり。何が出たんだよ?」

「実は例の.......」

「で、出たって、何が? も、もしかして幽霊? 幽霊なの? 幽霊が出たの?」

「おい、部長落ち着け、大丈夫だ幽霊なんていない」

「いや兄貴、出たんですよ」 

「や、やっぱり出たのね? 幽霊が! こうなったら············」

 
 なんだろう、なんか嫌な予感がする.........


陽奈咆哮コロナブラスター!」


 辺りが一瞬光ったかと思うと、突如として大爆発が発生した。






「終わった~~!!」

 
 先程···········というか、約2時間前。
 陽奈が放った陽奈咆哮コロナブラスターのせいで部室は木っ端微塵こっぱみじんに消えてなくなったかと思われたがそうでもなかった。
 もう日が落ちてきてはいるけど、それでも今日中に終わったのは奇跡に思えた。
 というか........


「みんな片付け、手慣れてないか?」

「···········慣れてる、から」


 あっ、そういうことか(察し)

 ちなみに、以前にも似たことがあったようで、部室の備品は全て耐久性に優れているものを選んだそうだ。
 実際、あの爆発で壊れたものは一つもなかった。
 建物は生徒のタレントで壊れないようにと、特殊な素材でできていて、よっぽどのことがない限りタレントでは傷一つ付かない。
 部室の壁に少しひびができていたのは見なかったことにする。
 

「じゃあ、片付けも終わったことだし、お茶会の続きをしようよー」

「そういや、なんであっしまで手伝わされているんすか?」


 確かに、この人は何も悪くない気がする。良隆よしたかを兄貴と呼んだのは謎だけど。


「まぁまぁ、まずはこれを食べて~~」

「うぐっ、もぐもぐ、うぁいうまい。うわっ、なにこれめっちゃうまいっすね」

「·············結局、何が出たの?」

「なんでしたっけね、忘れちゃいましたよ。そんなことよりクッキー食べましょう」










「そういえば。クッキーを食べることに集中しすぎて忘れてたけど、·········出たんですよ」


 怪談話を話すときのようなノリで言う。
 ちなみに、食べきれなさそうな量があったクッキーはすでになくなっている。
 みんな我を忘れて夢中で食べていた。
 志穂菜のクッキー恐るべし。


「おい、吉田よしだ、ちょっと表出ろ」

「ちょっ、なんすか兄貴、怖いですよ」

「お前はまた部長にアレ・・を打たせる気か?」

「で、出た? また出たの? まだいるの? これはもう一回·············」

「いや、だから幽霊じゃなくて、6人目の行方不明者が出たんすよ。あの失踪事件の」

「え!?」

「なんだそういうことか、そういう大事なことは最初に言おうな?」

「はい、すいません兄貴」

「よかった、よかったよ~~~ や、やっぱり幽霊なんていなかったのね」 

「··········よしよし。··········怖くなーい、怖くなーい」

「うわぁ~ん、風花ふうか~~」

 
 なんか風花さんが優しいお母さんに見えてきた。
 泣いてる赤ちゃんをあやしてるような。


「·············陽奈ころなちゃんは············いい子~~、だから···········駅前の、クレープ···········おごってくれる、よね?」

「うん」 

「··············じゃあ早速、レッツ、ゴー♪」


 ちょっと腹黒いお母さんだった。

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