桜雲学園の正体不明《アンノウン》

美浜

12話 アス研の意味

 次の日の放課後

 俺は志穂菜しほなに連れられてアス研の部室の前まで来ていた。


 トントン


「失礼します」


 ノックをしてから部屋に入る。
 そういえば、こういう時ってお約束があるよね?
ほらっ、あれだよあれ。
 扉を開けたら中に着替え中の美少女がいて············


「きゃ~」


 そうそう。
 そんな風に叫ぶんだよ。
 で、次は···········


石崎いしざきくんのエッチ」


 そうそう。
 ちゃんとお約束を守ってるな。


「ご、ごめん。別に覗く気はなかったんだ。不可抗力だ」


 定番の言葉セリフを言う。




 はぁぁ.....
 さすがにもうこの茶番には付き合えないな。



「あんた何やってんだ?」



 部屋の中には上半身裸のがいた。
 そいつがさっきから叫んでいたりしたんだが、何? この不審者?



「いやー、まぁ、場をなごませようとしてな」



 全然和んでねー。


「男なら分かるだろ? ドアを開けたら着替え中の美少女がいるっていう、この萌える展開!」


 ま、まぁ、わからなくもないかな。


「俺は海崎良隆かいざき よしたか、よろしくな石崎。いやー、さすがに部活に、男一人っていうのは肩身が狭くてな、これで少しは気が楽になるわ」


 今の茶番は歓迎されてたってことでいいのかな?


「本当に何やってるのよ海崎」


 微妙な顔をしていたのに気づいたのか、確か··········陽奈ころなだったかな? 陽奈が言う。


「でもよ、部長。普通にやるんじゃつまらないだろ?」

「まぁ、そうね。どうせやるならもっと派手にやりたかったわね。例えば······校庭で特大花火をあげたり!」 

「いいな! それ、やろうぜ!」

「············いい加減にして。··········また風紀監査に、怒られる。それに、もうそれ、やった」


 もうやってたんだ......


「··········どうせやるなら、バレないようにやらなきゃ」

「いや、ダメでしょ」


 さすがにツッコミを入れる。
 やっと真面目な人が出てきたと思ったのに。


「··········バレなきゃ···········犯罪、じゃ·········ない」

「そうだそうだ、いいぞーもっと言え! 副部長」


 この部活はどうなってんだよ。


「まぁいいわ。その事についてはまた今度話しましょ。それより······ようこそアス研へ。私たちはあなたを歓迎するわ」 

「いや、まだ俺は仮入部だったはずじゃ········」

「もう、部員名簿に書いちゃった。てへっ」


 いや、てへっ、じゃないし


「生徒会の方にも言ったし、顧問も了解してるわよ」


 手が速い!
 まぁ、面白そうな部活だしいいのかな?


「この部活って何をやっているの? せめてそれは教えてくれ」

「うーん、頼まれたら基本、何でもやるって感じかな?」


 お手伝い系の部活ってことかな。

 あと、聞きたいことは········
 

「アス研ってどういう意味なの?」 

「あー、えっとなんだっけ確か、明日は桜が散る? みたいな」

「いや、明日は散る桜が、じゃなかったか?」

「大して変わらないじゃない」 

「みんな、ちゃんと覚えようよ~、明日ありと思う心の仇桜、でしょ。ねっ? 陽奈ちゃん」


 志穂菜しほながフォローに入る。


「それで、ことわざなんだけど、意味は明日何があるかわからないから今すぐ行動しよう! みたいな感じで、陽奈ちゃんの性格と似ていていいねって、決めたんだよ」


「そっ、そうね、みんな何やってるのよ、自分の部活の名前を覚えていないなんて」

「なら部長は言えるのか?」

「もちろんよ、明日あした·········えっと、明日あした·······」

「陽奈ちゃん、明日あしたじゃないよ、読み方は
明日あすありと思う心の仇桜あだざくら、だよ」  

「···············もう、アス研でいいんじゃない?」


 いや、自分の部活の名前くらい覚えようよ。
 明日あした··········なんだっけ、明日あした········まぁ、いっか。
 俺も覚えられないや。

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