チェガン
チェガン
  チェガンは大きくわけて二つに分かれる。
  1つは生まれ持った才能
  2つ目は自身の感情で強制的に現れてしまった才能
  この2つだ。俺達には前者が少しばかり多い気がするが平均的に考えると後者の方が多い。
  「前者じゃないのか?」
  そもそも、チェガンは現れてはいけない。それを生まれた瞬間に持っていて、使ってしまったら子供の体にはさすがにきつい。だからなのかは知らないがほとんどが十代の時に現れる傾向にある。例外もあるけどな。
  ガブとかソフィアとかのチェガンは常に発動しているため体への負担は少ない。それに、この二人は生まれた時から持っている。
  「ガブのは何となく教えてくれたから分かったけどソフィアさんのはどんな力なの?」
  ソフィアのは『人の黒い部分か見える』だ。
  相手の嘘がわかったりなにかを企んでいたらそれがなにか見えたりだな。
  だが、相手の心を読める訳では無い。あくまで悪い部分が見えてしまう。
  だからソフィアは片目を隠している。見えるのは右目だけみたいだしな。
  
  「それが常に見えているの?」
  そうだ。だが、本人はもう慣れたらしい。そりゃ、ずっと見えてるんだからな。ガブの場合はチェガンを持っている人のみだから隠さなくても大丈夫らしい。
  「見映えは...悪いけどね...隠したら...ソフィアさんじゃないし...動けない...」
  らしいぞ。
  そんで、途中で強制的に現れてしまった。ヒュースやカルねぇの場合は制御型ともいえる。
  普段から発動するのではなく瞬発的に発動できる。発動出来たら結構強いが体にも負担がかかる。
  体が痛んだり目眩がしたりな。
  最初は一分も発動できなかったが今は大分発動時間を伸ばせるようになった。鍛えれば強くなる。これが特徴だな。
  「カルムさんのチェガンは何?」
  『触れた人の心を読み取ることが出来る』
  こっちは本当に相手の気持ち、考えていることを、読むことが出来る。
  ただし触れないといけないためアドルみたいなアタッカータイプのやつとは相性が悪い。
  「人の気持ちを読むことが出来る...でも、それってヒュースさんほどのチェガンでは...。」
  確かに、制御型にしてはそこまで強いわけでは無い。だから、俺がいる。
  カルムの情報を俺が聞いてヒュースやソフィアに伝える。作戦をな。
  戦闘系ではないにしろ使い方によって大分こえーぞ。カルねぇのチェガンは。
 
  「そ...そうなんだ...」
  そして、チェガンの発動条件はまだ詳しくはわからないが、恐らくは死にかけたり絶望したりした時に現れる。らしい。
  「それって!」
  
  まぁ、平坦な道のりではなかったって事だな。
  それについては今は話さん。チェガンとは関係ないからな。
  
  「...。」
  不満そうにすんな。話したところで何も変わらん。
  今は先のことだけ考えてろ。
  「...うん」
  よし。次行くぞ。
    大きくわけた場合は最初の説明で話したが細かく分けると四つある。『戦闘系』『アシスト系』『視覚系』『回復系』がいる。この中では『回復系』がすごく珍しい。うちにも一人しかいない。
  あとは使い方にもよるがシャインには『アシスト系』『視覚系』が結構いるな。俺やアルバは『アシスト系』。ガブやソフィアは『視覚系』だ。そんで、一応わかっていると思うがヒュースは『戦闘系』に入る。シャインには『戦闘系』が一人しかいない。だから、今までヒュースを軸にやってきた。
  まぁ、ソフィアもリリーフも普通に戦えるからあまり心配とかはなかったけどな。
  あと、これは絶対ではないが四つの種類の中でも体にかかる負荷が違う。
   一番体に負荷がかかるのは『戦闘系』だ。次に、『回復系』。『アシスト系』。最後に『視覚系』だ。
  視覚系は元々生まれ持つことが多いため体が自然にその体に合うように成長する。
  だが、戦闘系だと途中開花が多いため体がそれに耐えられない。
  ヒュースの場合はもともと体が丈夫なのもあるし、生まれ持った才能があるんだろう。だから、チェガンを使ってもあまり体に負担を感じさせない。使いすぎるとさすがに筋肉が悲鳴をあげるらしいけどな。
  んで、最も珍しいと言われる『回復系』。俺が知っている限り一人しかいない。そいつ曰く、治す怪我によって変わるらしい。
  切り傷とかならさほど考えなくていいらしいが骨折とかを治そうとすると時間がかかるし『喉』を痛めるらしい。
   「喉を?」
  そいつの場合だと思うけど、歌で傷を癒す。だから喉なんだろうよ。
  「そっか」
  おう。
 
             ❂ ❃ ❅ ❆ ❈ ❉ ❊ ❋
  「こんなもんだ。俺達が知っている情報」
  頭がいっぱいいっぱいだ。
  この街のこと。そして、チェガンについて。
  全てを理解出来た訳では無いけど、今日聞いたことは家に帰ってノートにメモしておこう。難しいことも結構あったし、また分からなくなったら聞こう。
  「俺は『戦闘系』に入るのか?」
  そう静かに言ったのはアドルだ。
  アドルの場合は感情などもある。何に入るのだろうか。
  「恐らくはそうだとは思う。が、お前の場合は本当に特殊なんだよ。今まであったことがねぇ。謎だらけなんだよ」
  「...ちっ」
  舌打ちをし、アルカから目線をそらす。
  「役に立たねぇとか思ってねぇーだろうな...?」
  「...。」
  「返事くらいしろよ」
  呆れながらため息をつくアルカ。
  二人の仲は今後どうなるのだろうか。心配だ。  
  
  「説明...終わり...?戻っても...いい?」
  「そうだな。今日はこれで終わりにするか。さすがに俺も疲れたわ」
  そう言い、二人はその場を立ち出ていこうとした。
  「待って待って!!」
  「どうした?」
  「どうしたじゃないよ!私達はこれからどうすればいいの?どこに入ればいいの?!」
  行かせまいと呼び止める。
  リヒト達は入ったばかりでどこに何がある分からない上に何をすればいいのかもわからない。放ったらかしは困る。
  「好きに歩き回ってればいいだろ。この中を。」
  「簡単に言わないでよ。ここの中を好きに回ってたら迷子になっちゃうわよ!」
  「方向音痴なのか?」
  
  そういう問題ではない!
  「それじゃ...アドルと一緒に...行動すれば...?」
  「へ?」
  「あ?」
  二人して腑抜けた声を出した。
  「んじゃ、それでいいんじゃね?それに、万が一迷子になったとしてもどこかの部屋に入れば誰かしらいんだろ」
  そう言うと二人は行ってしまった。
  自分勝手すぎませんかね。
  「.........。」
  アドルの方に目を向けるがまた寝てるのかわからない状態になっていた。疲れているのだろうか。
  このままここに居るのも何となく重い。空気が...。
  「あの、アドル?寝てる?」
  「...起きている」
  起きてるらしい。良かった。
  「この屋敷の中見て回らない?」
  「何故だ?」
  「何故って...。」
  一生懸命言い訳を考えるが出てこない。
  「理由がないのなら回る必要はない」
  「待って待って!!ある!理由ならあるよ!」
  
  再度目を瞑ろうとしたアドルを無理やり起こし何とか理由を考える。
  「ほ!ほら!これからお世話になるわけだしこの屋敷のことは知っておいた方がいいんじゃないかな??それに、ここの人達とも仲良くなる必要があるし!」
  「俺には関係ない」
  「なら!私に付き合って!」
  「はぁ?」
  面倒くさそうにこちらに目を向けるアドル。その表情から察するに本当に嫌なのだろう。だが、ここで引き下がるわけにもいかない。リヒトがこの状況に耐えられないのだ。
  「お願い!」
  顔の前で手を合わせお願いした。
  アドルは考える素振りを見せ席を立った。
  「俺もこの屋敷のことは知らん。方向感覚はないぞ」
  「それでもいいよ!ありがとう!」
  そう言いアドルの隣へと移動し一緒に行動した。その時、アドルは顔を俯いてしまっていて見えない。
  顔立ちとかはっきり見た訳では無いから分からないけど、結構かっこよかったように見える。なんか、もったいない。
  「アドルはなんでフード被ってるの?」
  「理由はない」
  「......今日天気がいいね。明日も晴れるといいね」
  「そうだな」
     .........。
  会話が続かない!
  アドルと何を話したらいいのか分からない。エレナと同じ感覚で話してはいけない気もするし、かと言って無言はリヒトが持たない。
 
  「おい」
  「ん?何?」
  アドルが見ているのは大きな二つ扉だ。
  「この中に入ってみる?」
  「おう」
  あまり表情には出ないがちゃんと自分の意思は伝えようとしてるし案外普通に話せるのかな?
  中に入ってみるとそこには本棚が沢山あった。図書室みたいな感じの部屋らしい。  
  つーか、図書室のある屋敷。いや、屋敷と言ってるわけだし不思議ではないのか。
  そう思いながら周りを見ていると窓側に一人。本を開きながら座っている人がいる。
  近づいてみると。
 
  「あ...。」
  ソフィアだった。
  直ぐに隠れたがなんの反応もないためもう一度顔を出してみる。
  ソフィアは先ほどと変わらず本に手を置いていた。眠っているらしい。
  「部屋にいたわけじゃなかったんだ」
  そう思いながら近づいてみる。
  近づいても起きる気配がない。爆睡しているのだろうか。
  「近くで見ると本当に綺麗な顔をしてるなぁ」
  アルカもそうだけどここの人ってみんなカッコ良かったり可愛い顔をしている。だが、性格に難アリのためもったいない。
  そう思っているとソフィアの後ろ辺りに何か黒いものが横切る。
  「なんだろう?」
  そう思いソフィアの肩辺りから見てみるとそこには蜘蛛がいた。しかも、今まで見た蜘蛛より体一つ分くらい大きい。
  「ひ!いやぁぁぁ!」
  「ぶっ」
  リヒトはとりあえず近くにあるものにしがみつきアドルを呼ぶ。
  「アドル!アドル!!虫虫!蜘蛛!!」
  リヒトは虫が大の苦手なのだ。見ただけで取り乱すほど。
  「どうした?」
  本棚の隙間から顔を出したアドルに向かって叫ぶ。
  「虫!蜘蛛!!無理無理むり!取って!!!」
  アドルはその取り乱し様になのか少し目を見開き驚いている。
  いや、驚いてないで助けて欲しい。
  そう思っていると手の中にある『何か』が動きそのまま蜘蛛を窓の外に出してくれた。
  
  「はぁ...はぁ...。」
  半泣きになりながら息を整える。そして、助けてくれた人を見るため下を見ると...。
  「あ...。」
  白い髪が見えた。
  さっきの状況を思い出す。この場で白い髪をした男の人って...。
  1つは生まれ持った才能
  2つ目は自身の感情で強制的に現れてしまった才能
  この2つだ。俺達には前者が少しばかり多い気がするが平均的に考えると後者の方が多い。
  「前者じゃないのか?」
  そもそも、チェガンは現れてはいけない。それを生まれた瞬間に持っていて、使ってしまったら子供の体にはさすがにきつい。だからなのかは知らないがほとんどが十代の時に現れる傾向にある。例外もあるけどな。
  ガブとかソフィアとかのチェガンは常に発動しているため体への負担は少ない。それに、この二人は生まれた時から持っている。
  「ガブのは何となく教えてくれたから分かったけどソフィアさんのはどんな力なの?」
  ソフィアのは『人の黒い部分か見える』だ。
  相手の嘘がわかったりなにかを企んでいたらそれがなにか見えたりだな。
  だが、相手の心を読める訳では無い。あくまで悪い部分が見えてしまう。
  だからソフィアは片目を隠している。見えるのは右目だけみたいだしな。
  
  「それが常に見えているの?」
  そうだ。だが、本人はもう慣れたらしい。そりゃ、ずっと見えてるんだからな。ガブの場合はチェガンを持っている人のみだから隠さなくても大丈夫らしい。
  「見映えは...悪いけどね...隠したら...ソフィアさんじゃないし...動けない...」
  らしいぞ。
  そんで、途中で強制的に現れてしまった。ヒュースやカルねぇの場合は制御型ともいえる。
  普段から発動するのではなく瞬発的に発動できる。発動出来たら結構強いが体にも負担がかかる。
  体が痛んだり目眩がしたりな。
  最初は一分も発動できなかったが今は大分発動時間を伸ばせるようになった。鍛えれば強くなる。これが特徴だな。
  「カルムさんのチェガンは何?」
  『触れた人の心を読み取ることが出来る』
  こっちは本当に相手の気持ち、考えていることを、読むことが出来る。
  ただし触れないといけないためアドルみたいなアタッカータイプのやつとは相性が悪い。
  「人の気持ちを読むことが出来る...でも、それってヒュースさんほどのチェガンでは...。」
  確かに、制御型にしてはそこまで強いわけでは無い。だから、俺がいる。
  カルムの情報を俺が聞いてヒュースやソフィアに伝える。作戦をな。
  戦闘系ではないにしろ使い方によって大分こえーぞ。カルねぇのチェガンは。
 
  「そ...そうなんだ...」
  そして、チェガンの発動条件はまだ詳しくはわからないが、恐らくは死にかけたり絶望したりした時に現れる。らしい。
  「それって!」
  
  まぁ、平坦な道のりではなかったって事だな。
  それについては今は話さん。チェガンとは関係ないからな。
  
  「...。」
  不満そうにすんな。話したところで何も変わらん。
  今は先のことだけ考えてろ。
  「...うん」
  よし。次行くぞ。
    大きくわけた場合は最初の説明で話したが細かく分けると四つある。『戦闘系』『アシスト系』『視覚系』『回復系』がいる。この中では『回復系』がすごく珍しい。うちにも一人しかいない。
  あとは使い方にもよるがシャインには『アシスト系』『視覚系』が結構いるな。俺やアルバは『アシスト系』。ガブやソフィアは『視覚系』だ。そんで、一応わかっていると思うがヒュースは『戦闘系』に入る。シャインには『戦闘系』が一人しかいない。だから、今までヒュースを軸にやってきた。
  まぁ、ソフィアもリリーフも普通に戦えるからあまり心配とかはなかったけどな。
  あと、これは絶対ではないが四つの種類の中でも体にかかる負荷が違う。
   一番体に負荷がかかるのは『戦闘系』だ。次に、『回復系』。『アシスト系』。最後に『視覚系』だ。
  視覚系は元々生まれ持つことが多いため体が自然にその体に合うように成長する。
  だが、戦闘系だと途中開花が多いため体がそれに耐えられない。
  ヒュースの場合はもともと体が丈夫なのもあるし、生まれ持った才能があるんだろう。だから、チェガンを使ってもあまり体に負担を感じさせない。使いすぎるとさすがに筋肉が悲鳴をあげるらしいけどな。
  んで、最も珍しいと言われる『回復系』。俺が知っている限り一人しかいない。そいつ曰く、治す怪我によって変わるらしい。
  切り傷とかならさほど考えなくていいらしいが骨折とかを治そうとすると時間がかかるし『喉』を痛めるらしい。
   「喉を?」
  そいつの場合だと思うけど、歌で傷を癒す。だから喉なんだろうよ。
  「そっか」
  おう。
 
             ❂ ❃ ❅ ❆ ❈ ❉ ❊ ❋
  「こんなもんだ。俺達が知っている情報」
  頭がいっぱいいっぱいだ。
  この街のこと。そして、チェガンについて。
  全てを理解出来た訳では無いけど、今日聞いたことは家に帰ってノートにメモしておこう。難しいことも結構あったし、また分からなくなったら聞こう。
  「俺は『戦闘系』に入るのか?」
  そう静かに言ったのはアドルだ。
  アドルの場合は感情などもある。何に入るのだろうか。
  「恐らくはそうだとは思う。が、お前の場合は本当に特殊なんだよ。今まであったことがねぇ。謎だらけなんだよ」
  「...ちっ」
  舌打ちをし、アルカから目線をそらす。
  「役に立たねぇとか思ってねぇーだろうな...?」
  「...。」
  「返事くらいしろよ」
  呆れながらため息をつくアルカ。
  二人の仲は今後どうなるのだろうか。心配だ。  
  
  「説明...終わり...?戻っても...いい?」
  「そうだな。今日はこれで終わりにするか。さすがに俺も疲れたわ」
  そう言い、二人はその場を立ち出ていこうとした。
  「待って待って!!」
  「どうした?」
  「どうしたじゃないよ!私達はこれからどうすればいいの?どこに入ればいいの?!」
  行かせまいと呼び止める。
  リヒト達は入ったばかりでどこに何がある分からない上に何をすればいいのかもわからない。放ったらかしは困る。
  「好きに歩き回ってればいいだろ。この中を。」
  「簡単に言わないでよ。ここの中を好きに回ってたら迷子になっちゃうわよ!」
  「方向音痴なのか?」
  
  そういう問題ではない!
  「それじゃ...アドルと一緒に...行動すれば...?」
  「へ?」
  「あ?」
  二人して腑抜けた声を出した。
  「んじゃ、それでいいんじゃね?それに、万が一迷子になったとしてもどこかの部屋に入れば誰かしらいんだろ」
  そう言うと二人は行ってしまった。
  自分勝手すぎませんかね。
  「.........。」
  アドルの方に目を向けるがまた寝てるのかわからない状態になっていた。疲れているのだろうか。
  このままここに居るのも何となく重い。空気が...。
  「あの、アドル?寝てる?」
  「...起きている」
  起きてるらしい。良かった。
  「この屋敷の中見て回らない?」
  「何故だ?」
  「何故って...。」
  一生懸命言い訳を考えるが出てこない。
  「理由がないのなら回る必要はない」
  「待って待って!!ある!理由ならあるよ!」
  
  再度目を瞑ろうとしたアドルを無理やり起こし何とか理由を考える。
  「ほ!ほら!これからお世話になるわけだしこの屋敷のことは知っておいた方がいいんじゃないかな??それに、ここの人達とも仲良くなる必要があるし!」
  「俺には関係ない」
  「なら!私に付き合って!」
  「はぁ?」
  面倒くさそうにこちらに目を向けるアドル。その表情から察するに本当に嫌なのだろう。だが、ここで引き下がるわけにもいかない。リヒトがこの状況に耐えられないのだ。
  「お願い!」
  顔の前で手を合わせお願いした。
  アドルは考える素振りを見せ席を立った。
  「俺もこの屋敷のことは知らん。方向感覚はないぞ」
  「それでもいいよ!ありがとう!」
  そう言いアドルの隣へと移動し一緒に行動した。その時、アドルは顔を俯いてしまっていて見えない。
  顔立ちとかはっきり見た訳では無いから分からないけど、結構かっこよかったように見える。なんか、もったいない。
  「アドルはなんでフード被ってるの?」
  「理由はない」
  「......今日天気がいいね。明日も晴れるといいね」
  「そうだな」
     .........。
  会話が続かない!
  アドルと何を話したらいいのか分からない。エレナと同じ感覚で話してはいけない気もするし、かと言って無言はリヒトが持たない。
 
  「おい」
  「ん?何?」
  アドルが見ているのは大きな二つ扉だ。
  「この中に入ってみる?」
  「おう」
  あまり表情には出ないがちゃんと自分の意思は伝えようとしてるし案外普通に話せるのかな?
  中に入ってみるとそこには本棚が沢山あった。図書室みたいな感じの部屋らしい。  
  つーか、図書室のある屋敷。いや、屋敷と言ってるわけだし不思議ではないのか。
  そう思いながら周りを見ていると窓側に一人。本を開きながら座っている人がいる。
  近づいてみると。
 
  「あ...。」
  ソフィアだった。
  直ぐに隠れたがなんの反応もないためもう一度顔を出してみる。
  ソフィアは先ほどと変わらず本に手を置いていた。眠っているらしい。
  「部屋にいたわけじゃなかったんだ」
  そう思いながら近づいてみる。
  近づいても起きる気配がない。爆睡しているのだろうか。
  「近くで見ると本当に綺麗な顔をしてるなぁ」
  アルカもそうだけどここの人ってみんなカッコ良かったり可愛い顔をしている。だが、性格に難アリのためもったいない。
  そう思っているとソフィアの後ろ辺りに何か黒いものが横切る。
  「なんだろう?」
  そう思いソフィアの肩辺りから見てみるとそこには蜘蛛がいた。しかも、今まで見た蜘蛛より体一つ分くらい大きい。
  「ひ!いやぁぁぁ!」
  「ぶっ」
  リヒトはとりあえず近くにあるものにしがみつきアドルを呼ぶ。
  「アドル!アドル!!虫虫!蜘蛛!!」
  リヒトは虫が大の苦手なのだ。見ただけで取り乱すほど。
  「どうした?」
  本棚の隙間から顔を出したアドルに向かって叫ぶ。
  「虫!蜘蛛!!無理無理むり!取って!!!」
  アドルはその取り乱し様になのか少し目を見開き驚いている。
  いや、驚いてないで助けて欲しい。
  そう思っていると手の中にある『何か』が動きそのまま蜘蛛を窓の外に出してくれた。
  
  「はぁ...はぁ...。」
  半泣きになりながら息を整える。そして、助けてくれた人を見るため下を見ると...。
  「あ...。」
  白い髪が見えた。
  さっきの状況を思い出す。この場で白い髪をした男の人って...。
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