チェガン

林檎

  〜屋敷内〜

「なぁー。なんであの二人も行く必要あったんだ?アルカが行ってる間に説明すれば良かったじゃねぇーか」

  最初に口を開いたのはヒュースだった。
 
 「エレナさんに仲間になってもらうにはまず私達の力を信じて頂かなくてはなりません。アルカさんの力はちょっと分かりづらいですが、見せたら少しは理解できるのではないでしょうか」

  そう答えてくれたのはアルバだった。

「なるほどな!」理解したヒュースはそのあとは何も発せずに机に突っ伏した。

「ですが、カルムさん。何故アルカさんのチェガンを?ヒュースさんのを見せた方が早く理解できるのでは?」
  「確かにそうですけど、ヒュースさんのは危険すぎですので。それに、怖がらせてしまう可能性も有ります。でしたら、安全なチェガンを見せた方がよろしいかと」
  「使い方次第では怖いものになりますけどね。アルカさんのは」
  「それは、ここにいるみんなに言えることでわなくて?」
  「確かに、そうですね」
  「ですが、理由はそれだけではないのですけれど」
  「他に何か?」

  その質問にカルムはただただ微笑むだけだった。

〜外〜

「アルカって探偵だったんだね。知らなかった。」
「そりゃー言ってねぇーからな」

  当たり前だろと言った感じで言うアルカ。
  前もって言ってもよかったのではと思ったがまた言い争いになる予感しかしないため黙っておいた。
  言い争いになったとしても勝てはしないが...。
  そう思いながらもアルカの後ろを淡々と着いていきながら帰宅するリヒト達。
  今日初めて見た訳では無いが何となくチェガンと言うものがどんなものなのかわかった気がした。
  全部ではないがとりあえず、普通の人ではありえない力なんだろう。
   そうすると、他にも屋敷には人はいた。その人たちも何かしらの力を持っていることになるのだろうか。
  そうするとどんな力なのか、なんでそこにいるのか聞きたいことが沢山ある。だが、そんなに話したことの無い人や、怖い人(ソフィアさん)とかに聞くのは普通に嫌だ。

  溜息をつきながらアルカ達の屋敷へ戻っている途中あることに気づいた。

「エレナが...静か?!」
「いきなり何?!」

  思ったことがそのまま口に出てしまい何とか言い訳をしようとしたが、自分でも驚いてるため言葉が出てこない。
  とりあえず謝っておこう...。
  
「ごめんごめん。ついね」

  笑いながら誤魔化した。誤魔化されるとは思ってはないが。

「もう!いきなり酷いよ!アルカさんの心臓にも悪いよ!」
「アルカの心臓?」

  エレナの指差す先にはお腹を抱えてしゃがんでいるアルカの姿があった。

「蹴り飛ばしてもいいかしら」

  呆れすぎてものが言えない。笑いのツボが浅すぎではないだろうか。
  いや、傍から見たら先程の自分の行動は確かに変ではあった。いきなり脈絡もなく言葉を発したのだから。
  ここが住宅街や人通りが多いところじゃなくて良かった。
  小さく溜息をつきアルカに近づく。

「笑ってないで早く屋敷に戻ってくださーい」

  肩をゆさりながら言うとアルカが不意にこっちに顔を向ける。

「...。」
「な...何よ...」

  いきなりこっち向いたと思ったら何も話さずじ〜っとこっちを向いている。

「だ、だからなんなのよ!!」

  先程より大きな声で言うと何を思ったのかそのまま歩き出してしまった。

「はぃ...??」

  この行動が一体何なのか分からない。

「リヒト?行かないの?置いていかれちゃうよ?」
「...うん...」

  アルカの事だしどうせしょうもないことを考えているのだろうと勝手に解決し歩き始めた。

  そのあとはエレナといつも通りの会話しをしながら屋敷へと向かった。
  アルカが静かなのが少し気味悪かったが、それを言うとまた馬鹿にされそうなので何も言わないでおこうと思う。

  「そういえば、エレナはチェガンって言うものがどういうものなのか理解出来た??てか、まだ私の物語とか思ってたらさすがに怒るよ?」

  エレナは最初、チェガンと言う力を信じていなかった。今回のは確かに凄いがヒュースさんの力とかを見せた方が早かったのではと、今になって思った。

  「う〜ん。わかんない」
  「はぃ?」

  笑顔でキッパリとそう言われるとこっちは何も言えない。
  驚いている私にお構いなく言葉を続けるエレナ。

  「だって、アルカさんは頭がいいだけかもしれないでしょ?きっといっぱい勉強したんだよ!!」

  ズレている。普段からズレていると感じたことは沢山あるが、ここまでだったとは...。

  「大丈夫?」

  頭を抱え何も発しないリヒトを不審に思ったのか顔を伺いながら聞くエレナ。
  もう、苦笑いするしかない...。

  「そんなに急かさんでもいい。」

  アルカがなんともないような口調でそういう。
  だが、アルカは何としてもエレナには(というかアドルには)仲間になって欲しいに決まっている。
  仲間にすると決まった時からそういう感じなことを言っていた。
  だから、急かさなくてもいいと言う言葉は意外だった。

  「でも、アルカは何としてもエレナを仲間にするんじゃないの?」
  「確かに、その女には仲間になってもらう。そのチェガンを野放しにするのは勿体ないし危険だ。」
  「だったら...。」

  急いだ方がいいのではと口にしようとした時に屋敷に着いた。
  ドアが開き、中で待っていたのはガブとカルムさんだった。

「おかえりなさい」
「おかえり」

  カルムさんは微笑みながら。ガブはいつも通りの無表情で迎えてくれた。
  
「おー」
「た...だいまです」
「ただ今帰りました!」

  アルカが率先してなかに入り歩き出す。その後をリヒトとエレナは続いていく。
  ガブとカルムさんはアルカを挟み隣を歩いている。こっちまでは聞こえないが何か話している様子だ。
  歩きながら周りを見るがやはり、何回来ても少し気味が悪い。
  これからお世話になるため何も言わないが、せめてもう少し明るくするとか出来ないのだろうか...。
  そう考えていると一つの部屋の前でアルカ達は止まり中へと入っていく。
  その部屋はさっきまでみんなで話し合いをしていた大広間だった。
  中にはリヒト達が出ていく時にいたメンバーがいた。
  ずっと待っていたのだろうか?

  「なんだ。まだあの二人は帰ってきてないのか?」

  あの二人とは恐らく、ソフィアとリリーフのことだろう。
  確かに、出て行ってから結構時間はたっている。

  「さっき連絡がありましたわ。少し、今回は手間取ったみたい」
  「まじかよ。あの二人でもか」
  「そうみたいですよ。でも、大きなキズは無かったみたいです。」

  そう聞いて安心した。
  怪我がないのであれば良かった。

  「それならいい。今日はとりあえずこれで解散しよう」
  「え?」
  「...え?」

  アルカと見合わせているとタイミングよく後ろのドアが開いた。

  「...そんな所で何してる。邪魔だ」
  「ひっ?!」

  後ろにいたのはリヒトが最も苦手とする人。ソフィアが不機嫌そうに立っていた。
  その後ろには少し汚れてしまっているリリーフの姿がある。
 
  「おかえんなさい」
  「ただいまですぅ〜」

  ソフィアは何事もないように自分の席へと座り、リリーフも挨拶しながら席に着いた。

  「とりあえず報告は後で詳しく聞かせてくれ。」
  「...。」
  「無視じゃないよね?これ、無視ではないよね?」

  苦笑いしながらアルカは自分の席へと着く。そして、リヒト達も最初に座った席へと戻る。

  「さっきも行った通り、今日はこれで解散。さすがに遅いからな。この二人も家に返さねぇーとならねぇ」

  時間を確認してみるともう6時を回っていた。

  「もう、こんな時間だったんだ」
  「どっかの誰かさんがひと騒ぎしている間にな」
  「はいはい。すいませんでした」

  アルカの言葉を軽く流し携帯を確認する。
  すると、母からLINEが来ていた。
  やば...

  (昨日も今日もどこで何しているの?早く帰ってきなさい)

  LINEにはこの文章と怒りのスタンプが送られていた。

  「んじゃ、明日はとりあえず自由にしてていい。また何かあれば連絡する」
  
  そのまま話を終わらせようとしたアルカの袖を掴む。

  「どうした?」
  「いや...仲間に入れてくれたのはすごく有難いのだけれど...親にどう説明すればいいのかなって...アルカとかはどう説明してるの?」

  そう言うと、顎に手を当て考える素振りを見せる。
  無駄に顔が整っているので様になっている。
  
  「そういやお前は、親居んのか...考えてなかったな」
  「...どういうこと?」

  その言い方だとまるでこの人たちには親がいないような言い方だ。

  「私たちには親が居ないのです」

  答えてくれたのはアーノと言う人だった。

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