チェガン

林檎

仲間たち

「戻ったぞ〜」

中は思っていたより綺麗に掃除されているが、蛍光灯が少ないのかあまり明るくなく少し不安さが残る。

「ね〜?なんでこんなに暗いの?」
「確かに...ちょっと怖いかも」

リヒトもエレナも不安はあるものの、一応周りを見渡してみると、廊下の奥の方に人影が見えた。

「ひ?!...」
「だ...だれ?」

  怯えている二人の横から

「おぉ〜、ソフィアか、珍しいな?本には飽きたのか??」

アルカがリヒト達の前に出て呑気な声で言っていた。

「なんでそうなる?普通人が来たと思ったら確認しに出てくるだろう?馬鹿なのか?」

  聞き覚えのある言葉に何となくムカッとした。

「いつも人が来たとしても出てこないだろ?つーか本読んでる時は周りの音なんていつも聞こえてないのにどうしたんだ?」
「別に...ちょうど読み終わったら音がしたから来てみただけだ」
「なるほどな」
「あと、お前を呼び出したやつから伝言だ。」

その言葉を聞いたアルカはいきなり真面目な顔になり、耳を傾けている。

「お前が予想した所に二人は行き無事、事を得たそうだが、」
「...だが?」
「まだ、他のところに現れるかもしれないそうだ」
「だろーな」

少しの沈黙のあと、男の人は私たちに気づいたのかこっちに顔を向けた。

「ところで、後ろにいる二人は誰だ?」

リヒト達のことを機嫌が悪そうな口調で聞いた。

「お!こいつらか。なんか俺に協力したいとかなんとか言ってたから連れてきた」
「またか...ここは遊び場じゃねぇーんだ。軽々と人を入れるな」

なんか少し怒ってる気がする。
目がこの暗さに少し慣れてきたのか前に立っている人の姿がはっきり見えてきた。
  白い髪で顔の半分を隠し、長めのマントみたいなのを羽織って立っていた。

「あの人は誰なの?」

リヒトはアルカの後ろに周り小さな声で聞いた。

「んあ?あいつか?あいつは〜仲間だな」

ドヤ顔をしながらリヒトでもわかるような答えだった。

「それはわかるのよ!どんな人なのかって聞いてるの!!」
「見た目はすごく若そうよね?私たちと同い歳ぐらいじゃないかな??」

いつの間にかリヒトの隣にエレナが移動してきていた。

「確かに...身長も私たちとそんなに変わらないかも?」
「ば?!おま?!」
「「え?」」

アルカは真っ青ですごく困った顔をしながらリヒト達の方を見ている。

「一体どうし...」

聞く前に、先程の人から何やら嫌な空気。みたいなものが流れてきた感じがする。背には冷や汗がたくさん流れてきた。

「り...リヒト...あの人...すごく怒ってない?」

エレナは、すごく怯えながらソフィアという人を見ていた。
リヒトも恐る恐る見てみた。

「ひ?! 」

ソフィアという人はこっちを睨みながらすごく怖い顔で静かにリヒト達の方に向かってきている。

「え?なに?!私たち何かひどいこと言ったの?!」

リヒト達は後ずさりたくても動くことが出来ない。その人から目をはなせなかった。今まで体験したことのない感覚が二人を襲う。

「わからない...でも、あの人がすごく怒ってるってことは...わかる...」

金縛りにでもあっているような感覚に陥る。
怖い...
そう思っているうちにその人が目の前に立った。
目の前に来た時、遠くで見ていたよりしっかりした体つきなのだと気づいた。

「あ...あの...」

やっとの思いで出た声もかすれかすれで多分この人には届いていない。
動けないでいると、いきなり手を伸ばしてきた。

(やられる!)

そう思い咄嗟に目を閉じると、階段の方から聞き覚えのある声が聞こえた。

「お〜いアルカ??いるのかっ...」
「...?」

前の人が階段の方にいる人をチラ見した。

「あ...やば...」
「え?」

リヒトは目を開けアルカとさっきの男性を交互に見合わせた。すると。

ドガン!

一瞬。

まるで何かをものすごい力で粉砕したような。
そんな、大きく危ない音が私達の斜め前から聞こえた。

「あちゃ〜...タイミング悪いな...」

アルカは、片手を頭の後ろに回し、本当に困りきっているような表情をしている。

「「な...なに?」」

  音がした方を見てみると、さっき窓から顔を出してリヒト達を呼んでいた人が(正確に言えばアルカを呼んでいた人)すごく怒った顔でさっきの人を見ている。
逆に、さっきリヒト達に近づいて来た人は怒っているような、めんどくさいと思っているような。
眉間にシワを寄せ何かを言いたげな顔で帽子を被った人を見ている。

「え?なに?どうしたの?」
「り...リヒト...か...壁が...床が...」

リヒトはエリナが指さす方を見てギョッとした。
  壁は壊れており、周りには木の粉や大きい破片や小さい破片がばらまかれており、床は帽子を被った人の下が一番へこんでいる。男性が少し動く事にミシミシと嫌な音をたてていた。今にも穴が開きそうな感じだ。

(こ...これを一発でやったの...?)

「ソフィア!!今日こそあんたをぶっ殺してやる!!」
「めんどくさいのがいる...視界にも入れたくないな」
「なんだとー!!」

帽子をかぶった人がまたさっきの男の人を殴ろうと立ち上がる。

「え?これって大丈夫なの?」

アルカに聞こうと後ろを向いたら

「あ〜俺俺、ちょっといいか??」

いつの間にか誰かに電話をしている。

「ちょっと!電話してないで...」

リヒトがアルカに対して怒ろうと思った時。

ドガン!!

ビクッ

またもや先ほどと同じ音が後ろから聞こえた。
さっき言い争いをしていた二人がいつの間にか殴りあっている。
いや、帽子の人のほうが一方的に殴っているようにも見えるが早すぎて何が起こっているのかわからない。

「エレナ...これどうしたらいいんだろう...」
「こればっかりは...私にも...」

リヒト達が困っている時後ろから声が聞こえた。

「お前達は何もするなよ?余計な仕事を増やすな」

いつの間にか電話を終えたアルカがリヒト達に対してそう言った。
言い方に棘があるような気がしたがそんなことを気にしている場合では無い。

「でも、このままじゃこの家が...」

家が軋む音が聞こえる。
本当に崩れそうになっていた。
  怖くなったリヒトはアルカの肩を掴み揺らした。

「じゃ...じゃーあなたがなんとかしなさいよ!!このままじゃ生き埋めになっちゃうわよ!」
「いやいや〜俺があの二人を止めるだって??無理無理〜俺そもそも戦闘系じゃないし〜」

手をひらひらさせながら言っていた。
余裕な感じで焦りなどが一切感じられない。

「じゃー!この家はどうなんのよ!てゆーか!私達が生き埋めになっちゃうじゃない!」

リヒトが怒ると、
アルカは少し遠くを見ているようなさっきとは変わって真面目な顔をしている。

「こんなのでここが壊れてたらそもそももうなくなっちゃってるっつーの...」
「「え?」」
「それに、この喧嘩はもう終わる」

少し笑いながらリヒトの目を見て言った。

「もう、終わるって?」

喧嘩と呼んでいいものなのかわからない大乱闘は一人の一声で止まった。

「何をやっているのかしら?お二人共」

ぴたっ...

空気が一気に変わったような感じがした
さっきまでの殺伐とした空気は凍りつき、冷たく身震いするほどだ。
声の主を見つけようとドアの方に顔を向けると女性が一人、立っていた。
その人は、リヒト達の隣をす〜っと散歩をするような感じの歩き方であの二人の方へ向かって行った。

「ちょ!危ないんじゃないんですか?!」

声をかけたがその人は聞こえてないのか振り向かずあの二人へ近づいた。

「問題ねぇーよ、てかあの二人を平和的に止められる唯一の人物なんだよ、あの人は」

その顔は、すごく安心しているようにも見えた。まるでお姉さんを見て喜んでる子供のような顔をしている。

「どういうこと...?」

そう思いながらも先程まで喧嘩をしていた二人の方を見ると、二人が立ち止まってさっきの女の人を見ていた。
  だが、表情が先程からは考えられなきほどに怯えているように見えた。

「何をしているのかしら?喧嘩は程々にと、いつも言っているでしょう?」
「いや...これは...その...」

帽子をかぶっている方は焦っており、言葉出てきていない感じだ。
片目を隠している人は、目をそらしたまま何も言わない。

「...。」

どうしたんだろうか。
さっきまではお互いを敵対ししているような、すごい暴れていたのに
あの人が声をかけた瞬間静かになった。

「言い訳かしら??この場を見て言い訳は聞くのかしら?」
「いや...。」

ニコッ

「いい加減にしなさい?」
「ご...ごめんなさい!!」
「...俺は悪くないと思うが...」
「ソフィアさん??」

ニコッ

びくっ

肩を震わせた。

「...悪かった...」
「ふ〜もうやめなさいね?あと、ここの壁と床の修復を、行いなさい!」
「「はい...」」

ーーすごい。
素直にそう思った。
あの人が来て声をかけただけでこの場が収まってしまったのだ。
あの人は一体何者なのだろうか。
  そう思っていると、アルカが少し前に出てあの女の人に近づいて行った。

「お疲れ様!助かったぜ。」
「い〜え、お構いなく。」

  改めてその女の人を見た。女のリヒトでも見惚れてしまうほどの美人さんだった。、
さっきまでは人をしっかり見る余裕がなく見た目はあまり認識できていなかった。
  見た目は、着物を来ており髪は短く内側へカールしている
前髪は長いのか片目が隠れてしまっている。

「あら?お客様?」

リヒト達の方を向きながら言った。

「あ!そうだ...忘れてた(笑」
「なっ!」
「こ〜ら、お客様に失礼でしょう?」
「はぁ〜い」

その人に対してだけはすごい素直な態度に何となく、複雑な気持ちになった。

「はじめまして、私はカルム·リリアーナ。カルムって呼んでくださって。」

手を出しながら自己紹介をしてくれた。

「はじめまして、私はグラオザーム·リヒトって言います。こちらは私の友達の」
「エレナって言います。はじめまして」

二人共順番に握手をした。

「リヒトさんとエレナさんね。可愛いわね。」
「...えへ...ありがとうございます。」
「ありがとうございます。」

笑いながらも顔が赤くなってしまっているのがわかる。
こんな綺麗な人にそんな事言われたら誰でも照れてしまうんじゃないだろうか。

「あなた達はなぜこんなところへ?迷って入ってしまったってわけでもありませんよね...」
「俺が案内しましたァ〜」

軽々と言っていた。

「あなたが?なぜ?この子達には何か力があるのかしら?」
「いや!多分なんもないと思うよ?まぁ〜...一人を除けば...だけどね」

  目を細めながらリヒト達に顔を向けた。その後も二人は話を続けている。

「ねぇ〜?一体何を話してるのかな??私達に関係あることだと思うんだけど」
「多分、私達がここに来た理由を話してるんじゃないかな??」
「そうなのかな?」

リヒト達が話していると...

「ちょっと、あの子を呼んでもらって来てもいいかしら?もしこの子達に力があれば多分なにかわかるんじゃないかしら?」
「あぁ〜、確かにね。」
「あと、ソフィアさんからは聞きましたかしら?」
「聞いたよ、でも多分時間の方は大丈夫だとと思う。」
「わかりましたわ。では、おねがいね」
「了解!」

アルカは廊下の奥へと消えていった。

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