俺の妹はヤンデレでした

繭月

11話

〈隆盛〉
「俺たち付き合うことになったから」
家の近くのいつもの公園の前で俺に葵が告げてくる。
「ありがとね隆盛君」
笑顔の葵と楓の二人を俺も笑顔で見つめる。
「じゃあ俺らちょっとデートに行ってくるから。また学校で」
そう言って二人は幸せそうに去っていく。
「はあ、これで俺の仕事も終わりか。ようやくゆっくりできるな」
俺も家に帰るために葵達とは反対の方に進もうと振り返ろうとして、
「やっぱり隆盛さんが裏にいたんだ〜」
「警告はしたよね〜」
背後から割れたガラスのように鋭い声が聞こえてきた。
そのまま振り向くことなく走り出そうとして、
「逃がしませんよ?」
一瞬にして翠に地面に組み伏せられる。
「それにしてもまさかお兄ちゃんがあんな女に口説かれるなんて・・・隆盛さんはお兄ちゃんのことよく知ってますね」
俺の上で馬乗りに翠が乗りその横から俺を見下ろすように瑞樹ちゃんが立っている。
「正直それだけで嫉妬で頭がおかしくなりそうなのにあんな女がお兄ちゃんと付き合うなんて許せるとでも?」
目からハイライトを完全に消し去り瑞樹ちゃんが俺に尋ねる。
「そんなのーーー」
あの二人が付き合うって決めたんだからいいだろ。と答える前に上から言葉が聞こえた。
「許せるわけないよね」
瑞樹ちゃんの問いに俺の言葉を制して答えたのは翠だった。
そしてその言葉に瑞樹も便乗する。
「ええ。許せるわけないんです。だってお兄ちゃんにふさわしいのは「私」ですから」
そこは譲れないのか瑞樹ちゃんの言葉に翠ものって重なる。
その後少し二人は睨み合い決着がつかないとわかったのかまた俺に視線を落とす。
「まぁ私か翠ちゃんのどっちかとして・・・それなのにあんなぽっと出の女にお兄ちゃんが取られるなんてありえない!だから私達決めたんだ。障害になるものは全て壊してでもお兄ちゃんを手に入れるって」
それは俺の一番嫌いな二人だった。
まるで何かに取り憑かれたように周りの意見、ましてや葵の意思すらも関係ないというそんな歪んでる考え。
だからこそ俺は葵とこの二人をくっつけるのが親友として我慢できなかった。
「そして隆盛さんも障害邪魔だってわかったのでーーー」
そこで一言くぎるとどこから取り出したのか包丁を瑞樹ちゃんは手にしていた。
「死んでください」
笑顔でその包丁を俺の胸元に突き立てて。
「うわぁぁぁぁあああ!!」
ガバッ!
目を開けると見知った天井に窓の外からは朝日が部屋を照らしている。
「なんだ夢か・・・」
いわゆる夢オチというやつだ。
まぁ今回の場合は夢だったことが幸いしたのだからいいとしよう。
寝間着が湿っているほど汗が出ていたようだ。
「風呂入ってくるか」
ベットから起き上がり部屋を出ようとして、
ピロン
机の上に置いてあるスマホが着信を告げる。
「誰だよこんな朝早くに」
文句をこぼしながらスマホのメッセージを見ると、
『なぁ今日柏木さんも一緒なのか?』
葵からのメッセージに俺は壁にかけてあるカレンダーに目を向ける。
カレンダーには今日の日付に赤で丸がされておりその下のメモ欄には「9時30分に駅前集合」と書かれていた。
そしてその側の時計に目を向けると8時45分をさしていた。
「なんでもう集まってるの!」
盛大にツッコミ急いで準備をして家をでた。



〈星原 葵〉
「お兄ちゃん起きて〜」(ゆさゆさ)
「・・・」
「お〜き〜て!」(ゆさゆさゆさゆさ)
「ぅん?・・・どうした?」
「どうしたじゃないよ!今日は隆盛さん達と買い物に行くんでしょ?早く準備しなきゃ」
そう言われて俺は机の上の電子時計を見る。
「まだ7時前だ。あと少しは寝れるから」
布団を頭までかぶる。
「だーめ〜!お兄ちゃん二度寝したら起きないじゃん!」
「大丈夫だって。ちゃんと起きるからさ。あと少しだけ・・・」
「むぅ〜」
俺の上に瑞樹が馬乗りになって唸る。
そして何か思いついたのか顔をパッと輝かせる。
「お兄ちゃんが起きないならキスするからね」
はぁ?嘘だろ。
そう思いうっすらと目を開けると既に目の前に瑞樹が顔を近づけていた。
「わかった、起きる。起きるからやめろって」
朝から妹とキスする兄なんて変態じゃないか!
「朝から仲良しだね」
その言葉は窓の外から飛んできた。
ジト目と一緒に。
「お、おはよ翠」
「おはようございます翠ちゃん」
向かいの家からこちらをジト目で見つめていたのは幼馴染の翠だった。
「おはよう瑞樹ちゃん。あと、変態
ついでっぽく言われたんだけど。てか今の言い方なんか含みのある言い方だったんだけど!
「あの翠さん。一応言っとくげと俺は断じて朝から妹とキスするような変態じゃないからね?」
「ふふ、瑞樹ちゃん今日の買い物誘ってくれてありがとう。楽しみだね」
「いえいえ翠ちゃんも、お友達ですから」
悔しそうに瑞樹が言う。
「それじゃあまだ準備してないからまたあとでね」
そう言って翠は部屋のカーテンを閉めた。
「そうだった。お兄ちゃん早く準備しなきゃ」
「まだ7時少し過ぎたくらいだしそんなに急ぐ必要なくね?」
「い・い・か・ら。早く準備してね」
しかたなく俺はベットから抜け出して買い物の準備を始めた。


「瑞樹まだかー」
朝食を済ませ買い物の準備もできたので玄関で瑞樹を待っていると、
「まだかかるから先に行っててー」
「いや時間もまだあるし待つよ」
「もう!先に行ってて待ってください!」
そう言って家から追い出されてしまった。
ほんと何がしたいの妹心がわからない。
しかたなく俺は集合場所である駅に向かうとそこで見知った人を見かけた。
「おはよう柏木さん」
「え、あっ、おはよう星原くん」
「誰かと待ち合わせ?」
この街はあまり大きな建物などがないので中高生の多くは駅で待ち合わせをして少し先にあるそれなりに活気のある街で遊ぶのが定番であり従って駅は人気の待ち合わせスポットになるのだ。
なので柏木さんも誰かと待ち合わせしていると思いたずねるとあれ?っという感じの顔をされた。
「えっと隆盛くんに聞いてないかな?今日私も誘われてるんだけど・・・」
なにー!?
え?これって俺達が付いて行っていいの?邪魔にならない?今からでも帰った方がいいかな?
「ちょっと待って今隆盛に連絡するから」
「う、うん」
しかし寝ているのか繋がらない。仕方がないのでメッセージを送った。
「そういえばどれくらい前にここに着いたの?」
「え、なんで?」
「いや俺も含めて待たせることになったからさ」
「い、いや全然!むしろ今さっき来たとこだから全然大丈夫、だから」
「そう?ならよかった」
「このシチュ立場は逆だけどやれて良かった」
最後柏木さんがなんか言ってた気がするけど声が小さくて聞こえなかった。

それにしても俺はどうすればいいんだ?
友達の彼女(予定)と二人っきりになってるんだけど、他の人が見たら誤解されるんじゃないか?
俺がどうしようか迷っていると袖をクイッと引っ張られてそちらを見ると、
「あの、星原君。私朝ごはんあまり食べてなくて。時間もまだあるしちょっとそこのカフェに行かない?」
それは今いる場所から車道を挟んだ向かい側にあるカフェだ。
「ダメかな?」
柏木さんに上目遣いで見上げながらお願いをされる。
そういうのは隆盛にしてやれよー!
どうするべきだ俺、ここで断ったらこの後の買い物の雰囲気は最悪になるよなぁ。でも誘いに乗ったらそれを目撃された場合どうすればいいんだ!
俺が悩んでいるとそれを嫌がっていると判断したのか少し顔を俯かせる。
「聞きたいことがあったんだけど」
その呟きで俺は閃いた。
もし目撃されたら相談に乗ってるってことにすればいいんだ!
「いいよ柏木さん」
俺が応えると柏木さんは顔をほころばせて店に向かっていく。
俺もその後についてカフェに向かった。

店内は想像していた以上にオシャレで多くの人がいた。
店員さんに案内されて窓際の席に向かいあって座る。
「ここのお店来たいと思ってたんだけどなかなか機会が無くて。ありがとね」
そう言って嬉しそうに自然と笑顔を向けられると少しドキッとしてしまう。
てかまじでそれを隆盛に向けてやれよー!
心の中でまた叫ぶ。
「ここのお店パンケーキがすごい人気なんだって。あ、私これにしよっと」
そう言って柏木さんが見せたのはパンケーキの生地がうっすらとピンク色をしている苺ののったパンケーキだった。
「うわうまそう」
俺はこう見えて(どう見えてるか知らんが)甘いものが大好きだ。
特に洋菓子は暇な時は自分で作るほどなのだ。
だからこのカフェに来たのはそういう理由もあるといえばある。
「俺も同じのにしようかなぁ。あ、でもこっちのレモンを使ったパンケーキってのもいいなぁ。今度また来ようかな」
「でもそれ今日まで限定だよ?」
「え?」
俺はメニュー表をもう一度見ると確かにいくつかのパンケーキの下に今日の日付と赤い文字で期間限定と書かれていた。
「くっ、諦めるしかないというのか!」
「あ、だったら私の分少しあげるよ?」
「天使か!」
「え、えぇ!」
そんな反応に柏木さんの頰が赤く染まったのだがそれには気づかない。
店員さんに注文して数分後俺たちの前には紅茶とオレンジジュース、ピンク色の苺ののったパンケーキと普通のものより少し黄色いパンケーキが並んでいた。
ちなみにオレンジジュースが俺ので紅茶が柏木さんのだ。
二人で手を合わせて「いただきます」と言ってパンケーキを口に運ぶ。
「うま」
「美味しい」
想像以上の美味しさについ言葉が漏れてしまった。
そしてパンケーキを切り分けて食べていると視線を感じて顔をあげると柏木さんと目があった。
「・・・」
「・・・あっ!」
俺は見られてる理由がわかり俺のパンケーキを一口分切り分けて柏木さんに渡す。
「はい」
「え?」
「食べたかったんじゃないの?」
「うぅー、違うんだけど・・・」
そう言いながらも俺からフォークを受け取り口を開けたところで柏木さんの動きが急に止まった。
そしてみるみるうちに顔が茹でダコのように真っ赤になる。
俺はその理由がわからずしかしたずねられる雰囲気ではないのでしかたなくただただ見守っていると、そんな俺の様子に少し不満げになりつつ「葵くんのバカ」と言ってパンケーキを口に入れた。
てかなぜ俺は罵られた?
ちなみに柏木さんのパンケーキは運ばれてきたときに四分の一ほどもらった。
その後残りのパンケーキを堪能した俺たちはちょっとした雑談を交わしながら時間を潰した。







投稿遅くなりすみません。
学校の最後のテスト(今学年)がありさすがに少しは順位を上げないとなぁと思い勉強してました。
もうすぐ春休みなので少しは投稿するのが早くできたらいいなと思います。(希望的観測)

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