君と僕の七不思議

はゆゆ

全ての始まり

思えば、あの時の会話が全ての始まりだった。




4/10   16:04

入学したての高校一年生の放課後。
することと言えば、友達と遊びに行くだとか、部活動を見て回るとか。

僕は、後者を選ぶ。
特に遊ぶ用もないし、高校の部活動に興味があったからだ。

廊下の掲示板に貼ってある各部活動の紹介ポスターをみてみる。

…混んでいるため、背伸びをして。

陸上部、柔道部、バスケ部、バレー部…定番の運動部たちが一番目立つところにある。
それに続いて、吹奏楽部、美術部、写真部…これまた定番の文化部。

僕はふと、一番下の端にあるポスターに目をつけた。
背景が真っ黒に塗りつぶされ、白や赤の色で、文字が書かれてあるという、斬新なデザインだった。
何部だろう、と思い、近くで見てみる。

『心霊研究部』…うげ。

斬新なデザインだったから、変な部活だろうとは思っていたが、よりにもよって、僕の苦手なホラー系だったなんて。
この部活はないな、と思い、掲示板をあとにする。

…と思った瞬間。

「ねえ!そこの君!」
「うひゃっ!!」

目の前に突然、人が現れ、思わず変な声をあげてしまう。
そんな僕に構わず、先輩?らしき女子生徒が話を続ける。

「さっき、あのポスターみてたよね!!」
「えっ…?あ、はい…?そ、それがどうか…?」

なんか不味いものなのか。
そう思ったが、キラキラと目を輝かせて話す彼女の様子を見れば、違うと確信した。

「心霊!!好きなの!?好きだよね!?」
「えっ…」

半ば強制的に好きと言わせようとしてくるぞ…
もしかして…じゃないな。確実に…部活勧誘か。
ってことは、この人が心霊研究部の人、か…。
とりあえず、丁重にお断りしてっと…

「すみません。僕、心霊系はあまり得意じゃなくて。」
「得意じゃない!?…得意じゃないってことは…苦手ではないってことでしょ!?」

すごく必死な様子だ。
人手が足りないのだろうか。

「いえ…正直言うと…苦手、です。」

僕が率直にそう言うと、彼女の顔は明るい表情から歪んだ表情に変わる。

「そんなこと言わないでよー!!苦手、なんて…お化けは怖いものじゃないんだよ!!」
「そんなこと言われても…。えっと…部活勧誘ですか?」

彼女は必死に僕を引き止める。
心霊は…ほんと、苦手なんだ。勘弁して欲しい。

「うん。部活勧誘…だから…。お願いお願いお願いお願いお願いー!!入ってよー!!」
「うわっ!む、無理ですってば!!」

彼女は急に大人しくなったと思いきや、僕の腕をがっしりと掴んで離さない。

本当に女子高校生の力か…?

と言うくらい力が強く、逃げられない。
ていうか痛い。

「お願いお願いお願いお願いー!!こんなにかわいいJKのお願いだよー!?」
「かわいいJKのお願いって…僕、JKに飢えてるおっさんじゃないんですから、そんなお願い、簡単に引き受けられませんよ!!」

周りの人の視線が一気に集まる。
いっけね。大声出しすぎた…。

「お願い!!!じゃないと、この腕、一生離さないからっ!!」
「脅迫じゃないですか!それ!!てか、なんで僕なんですか!?他の心霊好きの人を探してくださいよ!」
「だって!君、あのポスターに魅入ってたじゃん!!他の子は手当り次第声をかけまくったけど、全員逃げられたの!!君が希望なのーっっ!!」

魅入ってたわけじゃないけど…
と、心の中で呟いた。

「僕、本当に心霊系苦手なんですって!!」
「お願い!そんなに怖いことしないから!入部するだけ!幽霊部員でもいいから!本当は毎日来て欲しいけど!あっ、そうだ!兼部でもいいよ!!」

幽霊部員でもいいってことは…
そこまで人が足りないのか。
廃部寸前ってことだな…。
いい加減離してほしいし、もうここは折れるしかないかな…

「わかりました、はいりま…」
「コラーーーーーーッッッッッ!!!!」

僕が入ります、という声は、何者かの声によってかきけされた。

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