戦闘員No.25の活動日誌

とろろこんぶ

夢うつつ

夢を見ていた。
ほんの数ヶ月前だけど、ひどく懐かしい内容だった。


俺は白い部屋に立っていた。本当に白いって形容するのがぴったりな、そんな部屋だ。
部屋の真ん中で男の子が泣いていた。さほど大きくない彼はすごく小さく感じた。大きな声をあげて泣いていた。ずっとずっと、いつまでも泣いていた。


「どうして泣いているんだ?」

男の子はようやく俺の存在に気がついたようだ。

ひとりぼっちだから、と彼は答えた。両親が亡くなったそうだ。仕事柄覚悟はしていたようで、全てを男の子に任せて死んでしまったようだ。


ひとりぼっちで戦わなくちゃいけない、と泣いていた。

両親がいないという彼の境遇にほんの少しだけ親近感が湧いた。同時に、胸が痛んだ。
俺には妹が居た。けれど、彼はひとりぼっちなんだ。どうしようもなく孤独なんだ。それでも、戦うことを強要されている。俺よりもずっとずっと小さいのに。


俺はその男の子の手を掴んで、そして。










目が覚めた。白い部屋ではなかった。ボロい部屋だった。208号室だ。こたつだ。ようやく夢を見ていた事を理解した。


「どうした?ニコ?」
総督はみかんの皮を剥いていた。


泣いていた男の子はもう居ない。彼の孤独が少しでも消えるように。その為に、俺は今ここにいる。


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