現代社会に冒険者という職業が出来るそうですよ?

Motoki

No.10 野営前日、ガールズトーク

 〜凜々花side〜

 明日は迷宮にお泊まりをするのです。
 少し不安だけど、それ以上に楽しみなのです!

 「凜々花〜、今日は私の部屋で寝よ!」

 莉奈がそう言ってくる。なずなも隣で微笑んでいるので一緒に寝るみたいなのです。

 「わかったのです!でも夜更かしはしないのですよ?」

 「わかってます!明日は迷宮攻略なんですから!」

 なずながそう言うけど、少し心配なのです。
 前に1度、3人でお泊まり会をした時はなずなが1番はしゃいでいたのです…。

 「そうと決まれば!れっつごー!」

 莉奈の妙にテンションの高い声を聞きながら、3人で莉奈の部屋に向かって足を進めた。








 お風呂や歯磨きを終え、後は寝るだけ。
 …なずなの目が光ってるのです。

 「では!お泊まり会恒例!恋バナタイムです!」

 「恒例って言っても前に1回やっただけなのです…」

 「じゃあ、いきなり本題!剣心さんと優人さんと勇気さん。1番気になる方はどなたですか!?他に気になる人がいるならその方の名前を!」

 凜々の突っ込みは華麗にスルーして、なずながマイクも持つフリをして聞いてくる。
 …なずなは恋バナになるとテンションがおかしくなるのです。

 「まだ出会ってから日も浅いですけど、皆いい人ですよね!」

 「そーだね、私は皆好きだよ!1番ってなると、う〜ん…」

 これは経験上パパっと寝てしまうのが最善の手なのです。
  
 「凜々花ちゃんは?私は、その…」

 誰も質問してないのに勝手に話し始めたのです…。

 「優人さん「っ!?」か剣心…さんで…す?凜々花ちゃん?何でそんな反応するんですか?」

 なずなの口から“優人”の名前が出た時に身体が自然と反応してしまった。

 「おや〜?凜々花はもしかして〜?」

 莉奈までニヤニヤしながらこっちを見てくるのです…。

 「…寒かっただけなのです!ここ数日たまに雪が降ってるのですよ!まだ10月なのに、さすが北海道なのです!」

 「そうですね〜!で?やっぱり優人さんなんですか?」
  
 話をすり替えようとしたけど、全く変えられなかったのです。
  坂本優人さかもとひろと
 この学校に来た初日にパーティーを組んで一緒に迷宮に挑む事になった仲間の1人。
 男子なのに背が低く可愛らしい容姿。だけど性格や口調はクールでそれがなかなかにシュールな雰囲気を醸し出している。
  
 凜々はそんな彼に少し親近感を感じているのです。凜々の外見は銀髪で日本人とは程遠い顔付き。
 小学校の頃から他の人と違い過ぎる容姿が少しコンプレックスだったのです。

 優人も低い身長を少し気にしているようで、本人は無意識だろうけど勇気や剣心と話す時にたまに背伸びしている。
 そんな彼を見ていると妙に親近感が湧いてきたのです。
  
  「別に好きって訳じゃないのです。会ってまだ数日しか経ってないし。ただ、親近感が湧いているのは確かなのです」

 「ほうほう、なるほど、もう少し経てば可能性ありと…」

 そろそろなずなをどうにかした方がいいかも知れないのです。

 「私は勇気かな」

 莉奈が唐突に言う。けど、何となく気が付いていた。
 二人で話しているところをよく見かけるし、気もあっているようなのです。

 「ふむふむ、それはどうしてですか?」

 「初めて迷宮行った時、正直ちょっと怖かったんだけどね、勇気の言葉を聞いて笑顔を見てると安心出来て…ね」

 あぁ、あの時からなのですか。確かに納得できるのです。あの時は、あの時だけはカッコよかったのです。

 ………あの時だけなのですよ?

『そこまで言わなくてもいいんじゃないか!?』

 遠くから勇気の声が聞こえた気がしたのです。

 「確かにあの時だけはカッコよかったですね。もう恋愛感情はあるんですか?」

 「ん〜、どうだろ。まだわかんないな!」

 一目惚れってやつじゃない限りはまだ好きにはなっていないだろう、なのです。

 「そういうなずなはどうなのです?」

 「私ですか?私は莉奈と同じような理由で優人さん、凜々花と同じような理由で剣心さんが強く心にありますね」

 「なんか男たらしっぽいセリフだね」

 莉奈がストレートな言葉をぶつける。けど、その言葉には同意せざるを得ないのです。

 「違いますよ!まだ恋愛感情ではないですし!こんな感じになってるので、二人の気持ちを聞いて参考にしたかったんです!」

 なるほど、そういう事だったのですか。参考になると良いのです。

 …凜々はまだそういった感情は抱いた事がないのですが、優人に抱いている気持ちが変わっていくのかもしれないのですか…。
  なんか、余計に意識しちゃうのです!







 気付くと誰も言葉を発していなかった。時計の針の音だけが、いつもより大きく聞こえてくる。
 莉奈となずなの顔を見ると少し赤くなっている。二人ともさっきまでの話を自分なりに考えているのだろう。

 凜々も明日、優人に変な態度を取りそうで心配なのです。


 …明日?明日は迷宮があるから早く寝なきゃいけなかったのです。 
 今は…。午前1時50分。

 「ああぁぁぁぁ!!もう夜中なのですっ!!!」

 「ええぇぇぇぇ!!そんなさっきまでは11時前だったはずです!」

 「考え事しすぎたね〜、てかそんな叫んだら…」

 莉奈が言葉の続きを言おうとした、その時。

 _____コンコン。

 部屋のドアを叩くノックの音が聞こえた。凜々も含めた3人の動きが止まり、顔が強ばる。

 「…3人とも〜、出てきなさ〜い。ここにいるのはわかってますよ〜」

 声が聞こえる。その声を聞くだけで涙目になる。この声はモンスター何かよりも全然怖い、寮の管理人のお姉さん恐怖の権化のものだ。

 「に、西島さん!えと、そのすみません!静かにします!おやすみなさい!」

 なずなが即座に謝る。

 「いいのよ〜。さあ、早く出てきなさい」

 どうしても出て行かないとダメなようなのです。外からマスターキーを取り出す音が聞こえる。

 電子ロックが解除される音がして、満面の笑み泣く子も気絶する顔で管理人さん、西島凛にしじまりんが部屋に入ってきた。

 「あらあらうふふ。随分と元気に話をしていたようね〜」

 「い、いや〜、その。少し盛り上がりすぎちゃって…。てへっ」

 その「てへっ」の後にはもう、莉奈は言葉を発する事は無かった。管理人さんが笑顔で見つめてきたからだ。流石の莉奈も本能には逆らえず、恐怖で動けなくなった様なのです。

 「とりあえず私の部屋でお話したあと、反省文を書いてもらうからね〜。ついてきてね」

 凜々達には「yes」と「はい」しか選択肢が無かった。






 その後、1時間以上西島さんのお話は続き、眠りについたのは午前3時過ぎだったのです……。


 ご愛読ありがとうございます!

 無理だァァァァ!!
 自分には女の子達のガールズトークをリアルに書く事は出来なかったようです。

 では!また次話で!

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