現代社会に冒険者という職業が出来るそうですよ?

Motoki

No.9 迷宮、野営2日目

  目が覚めると、知らない街にいた。
  周りにはビルも無ければ、信号機もない。というか道路や車も見当たらない。
  けど街だ。ゲームやアニメの中で見る、の様な街。
  よく分からない言語があちらこちらに書いてあり、見た事もない食べ物もある。

(なんだ、あの食べ物)

  俺はそれを確認する為に一歩踏み出した。
  途端、道が沈み、俺は踏み出した足から地面に飲まれていく。
  誰も俺に気付かない。
  意識とともにここでの記憶も薄れていく。

(なんだったんだ……)










 「お、やっと起きた。おはよう」

  莉奈が俺の覚醒に気付き挨拶してくる。

 「おはよう。何か夢見てたんだけど、忘れた見たいだ」

 「そーゆーの良くあるよね」

  俺と莉奈が、良くある、話をする。
  何か大事な夢だった訳では無いだろう。焦りも恐怖も愉快さも感じない。

 「ふわぁ〜、おはよ〜〜〜」

 「悪い、勇気。起こしたか?」

 「ん?いや、そんな事ないぜ」

  俺達3人の周りには既に剣心達の姿は無く、テントの外にいるようだ。莉奈からテントの外へ出る。
  どういう原理かは知らないが、外は明るい。太陽でもあるのだろうか。確認したいが生い茂る木々が邪魔で空があまり見えない。

 「おはようございます」

  なずながエプロンを外しながら声を掛けてくる。どうやら朝食を作ってくれていたようだ。

 「おはよう、なずな。朝食ありがとな」

 「い、いえ!優人さんや剣心さんには夜の間見張りをして貰いましたし!」

  「あれっ!?俺はっ!?」と勇気から聞こえてきたが、そういうキャラだ。受け入れろ、騎士(笑)なら。
  
  凜々花と剣心にも挨拶をして皆でテーブルを囲う。朝食を見て、勇気と莉奈が我慢出来ないと言った顔でなずなを見ている。

 「は、はい!どうぞ食べてください!」

  若干引き気味のなずなを気にする事も無く、赤い光が出そうな速度で箸を持つ。

 「「いただきますっっ!!」」

 早口でそう唱えた二人はモンスターもビビるであろう顔をしながら、ご飯を喰らい……食べ始めた。







  朝食を終え、俺達はテント等を片付けると攻略の準備を始める。

  武器を確認。
  さらに端末で今現在の迷宮内の情報やクエスト、PMパーティーメンバーの体調等を確認する。

 「凜々は準備完了なのです」

  凜々花が一番で終わったようだ。
  それに続いて他の皆も俺も準備が完了する。

 「では、行こう」

  剣心の言葉に皆が気を引き締め、二日目の攻略が始まった。










  15層。
  モンスターの強さは確かに上がっているが、俺たちも強くなってきている為か攻略は進む。
  
  巨大なカマキリヘ(゜∀゜ヘ)を勇気が盾で殴って倒す。
  何か戦いに剣を使わなくなってきたうえに、戦闘スタイルが莉奈に似てきた。

 「お、階段が見えたぞ」

  剣心が指さす方向には16層へと繋がる階段が見えていた。
  
  「次の層は確か、廊下みたいな層なんですよね?」

 「あぁ、床も壁も天井も。全部綺麗な平面らしい」

 「やっとこの森から抜けられるのか!次の層は歩きやすそうだね!」

  莉奈が喜ぶ。確かにこの層はすごく歩きにくかった。
  それに次の層の敵は俺達と相性が良い。攻略もしやすそうだ。

 「よし、行くぞ。」

  俺がそう言うと皆は階段に向かって歩き出す。
  そして段々慣れてきた螺旋階段を登りきる。

  そこには、森や草原と比べると少し閉鎖的な空間が広がっていた。
  壁にある松明が周りを照らしてはいるが、決して明るくは無い。

  地面…というより床だな。床から天井までの高さは5m程で横幅は3m程だろうか。情報として知ってはいたが、想像より大きく感じる。
  この様子だと敵さんも俺の想像より大きいかもしれないな。

 「じゃあ打ち合わせ通りに進もう。勇気頼んだぞ」

 「おうよ!」

  勇気を先頭に物理攻撃勢3人が∴の様な感じで進む。その後ろにこれまた俺を先頭に∴のフォーメーションを取る。

  しばらく歩いていると、遠くから…いや近くからドシンドシンと地面が揺らされる音が聞こえる。それはすぐに振動となり俺たちに伝わる。

 「来たぞっ!!」

  剣心が叫びつつ抜刀する。
  俺達は敵を視認し、少し怯んだ。
  デカい。今までのモンスターよりデカい。レッドウルフ・ロードより高さはある。

  そこに立っているのは巨大な人型の____牛だった。

 「モォォォォ!!!」

  牛面人?が叫ぶ。声は牛のようだ。

 「こっちだ牛さん!」

  勇気がすぐにスキルを使い敵の注意を引く。
  その隙に莉奈が牛の側面から近付いていく。

 「はあぁぁぁ!!!」

  莉奈の身体が赤く発光する。ロケットの様に牛面人に突進すると赤い光を右の拳に集め、ぶつける。
  ぶつけた瞬間に赤い光が爆発し敵を吹き飛ばす。莉奈の使うスキルの一つで、殴り攻撃にノックバックを付与するものだ。これなら普通は飛ばせなさそうな敵も飛ばす事が出来る。

  牛面人が立ち上がろうと手(前足?)を床につけて状態を起こす。
  その手を剣心が斬りつけ再び転倒させる。
  俺は気配を消しながら牛面人の上へと飛ぶ。牛面人は俺に気付く事無く勇気を睨んでいる。

 「使ってみるか…」

  俺はそう呟くと、身体から緑色の光を発する。
  その光は俺の身体を包み込む。
  目に見えて俺の速度が上がった。緑石のスキルの一つで移動・攻撃・思考等、全ての速度を上昇させるものだ。

  緑色の尾を長く伸ばしながら、俺は牛面人の頭目掛けて急降下する。

 「優人さん!援護します!」

  なずなの声が耳に届くと同時に俺の身体を黄色い光が包む。攻撃力上昇の効果があるようだ。

  俺は身体を捻って回転させる。高速で右から左へと世界が流れる。いわゆる回転斬りというやつだ。

  黄色と緑色の光を放つコマのような俺が牛面人の頭にぶつかる。それだけで牛面人の頭に酷い切り傷が大量に出来る。

 「モアァァァァ!!!」

  悲鳴をあげ、俺に狙いを変え攻撃してこようとする牛面人に、俺は後ろに飛び退きつつ手裏剣を投げる。
  投げた手裏剣は牛面人の右眼を潰し、敵の攻撃を止める。

 「凍れっなのです!」

  後方から凄まじい冷気を感じる。凜々花の氷魔法だろう。銀色の凍てつく様な冷たさの風が牛面人にまとわりつく。

 「モァ、モオォォォォ……」

  身体の表面がどんどん白く輝いていく。それに合わせて悲鳴も小さくなり、やがて完全に静止した。

 「さようなら、なのです」

  凜々花が杖で床をトンっと叩くと牛面人はその姿を無数の氷片へと変え、そして光の粒となり消えた。

 「何度見ても綺麗ですよね、凜々花の魔法…」

  なずなが小さな声でそう言ってくる。確かにすごく綺麗だ。
  だが、なずなは少し落ち込んだ様子をしている。おそらく自分より凜々花の方が戦闘に貢献していて、なおかつ綺麗だと思っていて少しショックを受けているのだろう。

 「なずなの魔法も暖かくて安心できるよ。それにさっきの支援魔法もナイスだった、よく俺に気付いたな」

  気配も絶っていて高速で移動していた俺を把握し援護するのは簡単な事じゃない。その事を素直に伝えるとなずなは泣きそうな顔で「ありがとうございます」と微笑んだ。

 「…なんだかいい雰囲気なのです」

 「はは、本当だね!」

  凜々花と莉奈が近くに来る。その後ろには剣心と勇気もいる。

 「仲間なんだから当然だろ。さ、先に進もうぜ」

  仲間同士で悪い雰囲気だったらどうすると言うんだ。
  俺は少し疑問に思いつつ、先へと足を進めた。

  後ろで凜々花と莉奈が「そう言う意味じゃないのです…」「……鈍感なのかな?」と言っているのには全く気付かなかった。










  20層。
  牛面人等の大型モンスターとの戦闘にもかなり慣れてきた。“等の”と言ったのは他にも人面犬ではなく犬面人やクワガタ面人もいたからだ。
  リアルで見る大型の牛や犬の顔というものは正直気持ち悪く、クワガタが出てきた時は凜々花となずなが失神しかけた。
  …クワガタの口とかビッグサイズで見ると嫌悪感しか出てこなかった。

 「おっと、また来たぞ〜」

 「クワガタジャアリマセンヨウニクワガタジャアリマセンヨウニクワガタジャ(ry」

  ちょっとなずなの様子がおかしいが、大丈夫だろう。
  徐々に足音が大きくなり、モンスターを視認する。

 「ワンッ!ワァン!」

  犬面人だ。
  俺は端末で地図を確認する。次の層への階段はもうすぐだ。

 「よし!パパっと倒すぞ!」

  俺が叫ぶとそれに反応したのか犬面人がこちらを見たが、勇気がスキルを使いすぐに注意を引きつける。

  犬面人が手(前足?)で殴りつけてくる。それを勇気が盾で受け止める。が、思ったより威力が高いらしく盾を少し斜めにして受け流す。

  莉奈が犬面人の右足を殴り払って転ばせる。
  剣心が左足の腱を刀で絶つ。
  俺が短剣で右腕を浅くだが何度も斬っていく。
  凜々花が珍しく炎をつくり、犬面人を焼く。

  瀕死となっている犬面人は、それでもなお懸命に足掻いていたが、なずなが紫っぽい色の玉を放ちそれが当たった瞬間に絶命した。
  
  なずなの数少ない攻撃魔法で、当たった敵の生命力(わかりやすく言えばHP)を奪いPMに均等に与えると言う魔法だ。

  紫だった玉が六つの小さい黄色い玉に変わり、皆の身体に吸収される。
  体力や擦り傷が回復し、魔力も少量だが回復した。

  光の粒となった犬面人は肉球付きの腕をドロップしていたが、誰も拾わずに放置していると光の粒となって消えた。
   腕は気持ち悪いしな。何か変な所で綺麗に切れてて断面とか見えてたし。

 「じゃ、じゃあ階段まで行きましょうか」

  なずなが端末の地図を見ながら先を指さす。
  時刻はもう午後5時を過ぎている。きりもいいし21層に着いたら攻略を終了しよう。

 「次の層へ着いたら今日は終わりにしないか?」

  剣心が言った。俺と同じ事を考えていたらしい。

 「そーだね。お腹もすいたし帰るとしよう!」

  莉奈も同意し、他のみんなからも反対意見は出なかったのでそうすることにした。


  階段を登り、俺達が目にした21層は……人が全くいない、薄暗いゴーストタウンの様な場所だった。









 「うぅ〜、次の層はあまり行きたくないのです…」

  凜々花は怖いのが苦手らしい。今度からかってみようかな。

  俺達はゴーストタウンを拝んだあと、すぐにエレベーターで戻ってきた。

  「じゃあ、俺はクエストの報告行ってくるから皆は先帰ってて」

 「わかりました、お願いします」

  俺はみんなと別れ、ギルドへ行きクエストの報告をして報酬を貰った。後できちんと分配する。
  なずな達には野営セットの返却をして貰っている。

  今日で血盟設立に十分なクエストはこなした。
  すぐにでも設立したいが、それは次に皆と会うときにしよう。
  明日は日曜で休みだ。次に会える月曜が楽しみだ。


 ご愛読ありがとうございます!

 二日目終わりました!冒頭の夢については、察しがついている方もいると思いますので敢えて触れないでおきます笑

 それではまた次話で!

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