現代社会に冒険者という職業が出来るそうですよ?

Motoki

No.8 迷宮、野営1日目

  俺は今、寮を出たすぐの所に立っている。勇気と剣心も一緒だ。
  ここは男子寮と女子寮に別れるY字になった道の分岐点だ。今日はこれから迷宮に行き、10層まで一気に攻略する予定だ。
  時刻は午前9時30分で集合時間丁度なのだが、まだ女子3人が来ていない。

 「お、チャット来たぞ〜」

  勇気がそう言いチャット画面を見せてくる。

『すみません!寝坊してしまいました!今から出ます!』

  どうやら寝坊らしい。3人とも一緒にか、昨日の夜何かしてたのだろうか。
  チャットから2分と経たずに3人が到着する。

 「ごめんなさいなのです!昨日はちょっとガールズトークに花が咲いてしまったのです」

  がーるずとーく?まぁいい、早く行かなければ。

 「ガールズトークってどん「じゃあ行こうか」なこ…と…」

  勇気の言葉を遮って出発を促す。これから学校へ行って野営セットを借りなければいけない。
  野営セットはとても便利で、持ち運び可能かつ野営するに十分な道具や食料が入っている。1パーティー用のを借りるので1つで6人まで野営できる。

  学校へ到着したので俺と凜々花で野営セットを借りに行く。貸出名簿に名前を書こうとしたところで俺の動きが止まる。

 「どうかしたのです?」

 「あ〜。俺たち固定のメンバーでずっとやってく訳だし、血盟作っちゃった方が便利だなと思ってさ」

  俺の貸出名簿にはパーティーリーダー名又は血盟名と書かれている。
  血盟とは冒険者同士が集まったコミュニティでパーティーの上位互換とも言える存在だ。
  人数に制限は無く、血盟チャットも使える。それに血盟員が一緒に住める家《アジト》に住めるようになる。この家は立派な一軒家で、大きさはその血盟の人数によって異なる。ただ、アジトを得る為には少くない数のクエストをこなしギルド(学校)に貢献しなければならない。

 「確かにそうなのです。得にアジトが魅力的なのです」

  後で皆に確認してみよう、と思いつつ手続きを済ませ野営セットを借りる。キャリーバッグの様に引きずりながら持ち運べるので便利だ。

 「遅かったね、何か困った事でもあった?」

  莉奈の言葉に凜々花が答える。

 「ちょっと将来の話をしてたのです。具体的には一緒に住む家についてなのです」

 「「「「え」」」」

  凜々花の言葉に皆が驚きの声をあげる。すぐになずなが硬直から立ち直り凜々花を問い詰める。

 「も、もうそんな所までいっていたんですか!?」

 「? 皆は違ったのです?」

  凜々花が答えると莉奈となずなが顔を赤くする。

 「で、でも昨日はそんな事一言も言ってなかったよね!?」

   莉奈が慌てている。珍しいな。でもこの会話には齟齬そごがある。

 「おい、俺と凜々花の家じゃないぞ。血盟を作ってアジトに住むかどうか話をしてたんだ」

  俺がそう言うと二人(莉奈となずな)は固まり顔を赤くして「そ、そっか〜」「で、ですよね〜」等と言っている。

 「? 何か勘違いされる事言ってたのです?」

  凜々花はまだ気付いてないようだ。…おっと、徐々に顔が赤くなってきたぞ。

 「ち、違うのです!何でそうなるのです!確かにそれも魅力的な話なのですが………」

  凜々花が凄い勢いで否定する。少し傷付くな…。最後の方は何言ってるか聞こえなかったし。

 「まぁ、血盟の話は後でするとして取り敢えず行こうか」

  俺がそう言うと皆が気持ちを入れ替えて頷いた。
  ……勇気はニヤニヤしているが。気持ち悪いな。今日死ぬんじゃないだろうか。

 「優人、その、程々に、な」

  剣心まで意味の分からない事を言い始めている。このパーティーはもうダメなのかもしれない。







  迷宮に到着した俺達はエレベーターで3層まで上がる。凄い便利だ。

 「今日はマッピングはしないでモンスターを倒しながら上の層へひたすら登ろう」

 「わかった。前衛は俺と莉奈と勇気。後衛はなずなと凜々花。優人は遊撃であってるな?」

 「あぁ、それで行こうと思う。敵の数が多くなってきたら剣心も壁役になってもらうかもしれない」

 「心得ている」

  俺達は4層へ繋がる階段へと最短ルートで歩き始める。
  ここも1・2層と同じで洞窟の様な感じだ。地面は平で歩きやすいが、壁や天井は所々尖った箇所があって危険だ。

 「おっと、さっそくお出ましのようだぜ」

  勇気がそう言うやいなや盾を叩いて挑発する。敵のターゲットが勇気1人に絞られる。

 「支援します!」

  なずなの杖から黄色い光が放たれる。すると盾を構えていた勇気が黄色い光を薄く纏う。
  なずなの支援魔法によって防御力が上がったようだ。

 「グルル…」

  今回の敵はブルーウルフが1体だ。ブルーウルフは魔法を使って攻撃してくるらしい。

 「グラァッ!」

  ブルーウルフがそう吠えると周囲に火の玉が3つ浮かぶ。もう一吠えするとその火の玉が勇気に向かって飛んでいく。

 ____ボォンッ!!

  爆発音が響く。熱風が俺の身体を撫でていく。

 「お返しなのです!」

  凜々花の声とともに周囲に氷の粒(といっても小石程の大きさはある)が無数に出現する。
  凜々花が杖を前に突き出すと、氷の粒も一斉にブルーウルフに向かって飛んで行った。

 「グルァ!」

  ブルーウルフが炎の壁を作り出す。氷の粒はそれに飲み込まれると、どんどん小さくなっていった。

  が、止まらない。炎の壁を突き抜けるとそのままブルーウルフに迫っていった。
  ブルーウルフは避けられずに氷の粒をくらう。
  少なくないダメージを与えられ、ブルーウルフはフラフラしている。

 「とどめだ!」

  弱ったブルーウルフに剣心が瞬時に近づく。その勢いを殺さずに刀で首を断ち切る。

  ブルーウルフは悲鳴をあげられずに光の粒になった。

 「あ、何か落ちてるよ!」

  莉奈がブルーウルフが倒れた所を指差し言う。
  そこには……なんかグロイな。…そこには青い毛皮が落ちていた。

 「これが噂に聞くドロップという現象なんでしょうか?」

 「多分そうなのです!確か毛皮集めのクエストがあったのです、それを受注してギルドに渡すのです」

 「そうするか。ドロップは敵を出来るだけ傷つけ無いようにすると確率が上がるらしいから、毛皮集めるなら今みたいにスパッと倒そう」

  あ、いま莉奈が残念な顔した。莉奈の攻撃だと絶対に綺麗に倒すなんて無理だからな。
  毛皮をバッグに入れた俺達は先を急いだ。毛皮はウルフ系なら何でも良いので、レッドでもグリーンでもイエローでも大丈夫だ。ウルフは5層までは出続けるし、このまま先を進んだ方が良いだろう。


  道を確認する為に端末で地図を見ると、目の前に罠のマークがあった。
  良く目を凝らすと地面の色が微妙に異なっている箇所がある。

 「ここの地面に罠があるみたいだ。なずな、頼む。」

 「はい、任せてください!」

  俺達は今まで罠を発見するたび、なずなの力を借りてそれを乗り越えてきた。

  なずなが杖をかかげると、空中(地面から10cmほど上)に地面と並行になるように障壁が展開される。これを足場にして進む事で地面にある罠を回避するのだ。

 「ありがとう(なのです)」

  皆が礼を言ってから素早く渡る。障壁の展開も魔力をそこそこ使うからな。ただ、今彼女の首元には綺麗なネックレスがある。学校で貰ったもので消費魔力が下がり治癒力が上がるものだ。これがあれば多少は楽になるだろう。

 「じゃあ一気に4層まで行こう」




  今俺達がいるのは6層に繋がる階段がある場所だ。
  順調に攻略は進み、毛皮も十分な量が集まったので一旦昼食休憩だ。

 「昼食は俺が適当に作ってもいいか?」

  俺は野営セットから食料を取り出しつつ言う。作る、と言ってもお湯を入れたり温めたりするだけだ。上の層に行くと肉がドロップしたり野菜が取れたりするらしいが、残念ながらこの層には無いので野営セットので我慢する。

 「じゃあ、お願いします。私たちは椅子とテーブルを用意します」

  なずなは莉奈と凜々花に頼み、野営セットから折りたたみ式の椅子とテーブルを取り出す。
  
  ご飯が出来たので、テーブルにそれを運ぶ。大きめのテーブルを6人で囲う感じで座り、「いただきます」と声を揃えて言う。

  
 皆と他愛もない話をしながら食べるご飯は、インスタント食品とは思えない程美味しく感じた。

  血盟についても話がまとまり、必要数のクエストをこなしたらすぐに立ち上げ、アジトに引っ越すことにした。
  
 時折凜々花と目が合ったが、何故かすぐに逸らせれてしまい心が痛んだ。









  何だかんだで攻略は進み、今は午後7時。
  俺達は12層まで攻略出来た。嬉しい誤算だ。

  途中、複数の敵に囲まれたりする事もあったが、勇気が「皆は俺が守る!それが騎士だ!」とか叫びながら全ての攻撃を防ぎきった。

  騎士(笑)のお陰で攻略は予想以上に早く進み、10層に着いたのが午後4時だった為、6時30分まで攻略を続けようと言う事にした。
  
  13層へ繋がる階段を見つけ、すぐに夜ご飯の準備をする。
  6~10層までは何と草原地帯だった。広い草原が広がっていて、そこに牛型のモンスター等が生息していた。
  草原と言っても背の高い草の壁がきちんとあって、ちゃんと迷宮だった。天井はなく、青い空が広がっていたが……。

  そして11~12層。今俺達がいる層は森林地帯だ。
  キノコのようなモンスターが襲ってくるわ、巨大な昆虫の様なものが襲ってくるわで正直気持ち悪い。ここは比較的開けた場所だが、さっきの昆虫を思い出すと背中がゾワっとする。

 「テントの設置が終わったぞ」

  剣心が声を掛けてくる。剣心と勇気が二人でテントを設置してくれていたのだ。

 「ありがとう。女子の方からも許可は出たよ」

  俺達は6人で一つの野営セットを借りた。……テントが一つしか入っていない事を忘れたまま。

  
  テントはそこそこ広いので真ん中に線を引く。
  なずな曰く

 「こ、ここが国境線ですよ!国境侵犯したら莉奈に木っ端微塵にされますからね!」

  という事らしい。死刑が待っていると分かってて国境侵犯など誰がするのだろうか。確かに3人は魅力的だが、それと同じかそれ以上に莉奈のパンチは怖い。

 「じゃあ予定通り男子は交代で見張りな!最初は俺だよな」

  俺達男子は3人で交代しながら夜の間周囲を見張る。
  モンスターはわかないらしいが、油断は出来ない。それに可愛い女子を3人も連れている。怖いのはモンスターだけではなく男性冒険者もだ。

  俺達はジャンケンで順番を決めた。その結果、勇気→俺→剣心という順番になり、俺は貧乏くじを引いた。

 「じゃあ2時間20分後に起こしてくれ。絶対寝るなよ」

  その言葉を残し、俺はテントに入って眠りに落ちた。


 ご愛読ありがとうございます!

 はい、1日目が終わりました。
 騎士(笑)さんは見張りをしながら剣の練習をしていたそうです、真面目ですね!

 では、また次話で!

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