slave sword fighter and a sword of destiny

パクリ田盗作@カクヨムコン3参戦中

第31話



今日は久々のスペシャル同士の試合。
闘技場は熱気に包まれ、観客達はスペシャル戦が始まるのを今か今かと首を長くして待ちわびている。


今日の対戦相手はドワーフ族の男。1mと30cmの小柄な身長ながら、まるで丸太のような太い腕周りに筋骨隆々とした体躯、髭飾りを無数につけた長いヒゲが特徴の戦士だ。
聞いた話によるとドワーフ族は髭飾りの装飾や位置でどの氏族出身か、氏族の中での地位が分かるようになっているらしい。


今回の対戦相手ドワーフのドルトロイはスペシャルクラスの剣闘士だけでなく、有名な鍛冶職人でもあり、自らの手で武器や防具を作り、その性能を試すために試合に出ているらしい。


「へぇ、おめぇ……なかなかいい目してやがるな」


試合会場で対峙した時、ドルトロイは俺の目を見てそう言った。
ドルトロイはバトルアックス二刀流に自身が討伐したというミノタウロスの頭蓋骨を加工した兜、胴全体を覆う金属鎧を着用している。
ドルトロイは俺が持っているフリツの大剣を見て驚いた表情をする。


「ほう……その剣を持っているということは……そうか、運命はお前を選んだ……いや、お前がその運命を選んだのか」


ドワーフのドルトロイはフリツの大剣について何か知っている口ぶりだ。


「あんた、この剣について何か知っているのか?」
「まあいいじゃねえか、ここでおしゃべりしてもしょうがねえ。俺に勝ったらなんでも教えてやるよ」


そう告げるとドワーフのドルトロイは戦闘開始位置につく。どうやら勝たなければフリツの大剣について答える気はないようだ。俺も戦闘開始位置に立つと剣を構える。


「それでは次の試合は、スペシャル戦! 名物ドワーフ! 職人の気まぐれドルトロイ選手対不屈の剣闘士ギルバード選手っ!!」


マミの解説と同時に割れんばかりの大歓声に拍手。試合を盛り上げるために花びらが撒き散らされる。声援の声を聞いていると俺よりドワーフの方が人気のようだ。



「それでは試合開始です!!」
「うおおおおお!!」
「はあああああっ!!」


マミの試合開始の合図と同時に俺とドルトロイはお互い駆け出し、フリツの大剣とドルトロイの二刀流のバトルアックス……金属と金属がぶつかり合い轟音と火花が試合会場に飛び散る。


小細工なしのガチンコ勝負。正面向いてお互い剣を斧を振り、ぶつけ合う。
ドワーフは体の小ささとは正反対に恐ろしい腕力を持っている。ドルトロイのバトルアックスをフリツの大剣で受け止めるたびに手首に衝撃が走る。
受け止め方を間違えれば手首の骨がイカレる。それほどの衝撃だ。


その上、ドルトロイは戦士としての経験も俺より上だ。徐々にバトルアックスの攻撃の鋭さが増していく。時折危なげな位置で受けて手首に伝わる衝撃に思わず顔を歪めてしまう。


「おらぁっ、もっと撃て! 若いんだからもっと力任せでいいだろう、剣が泣くぞ!」
「だったら遠慮なく行かせてもらう!!」


防御を捨てて攻撃に全力を振るう。ノンブレスによる連撃、だがドルトロイは俺の連撃を全部受け流す。


「やるじゃねえかっ! こりゃ想像以上だ」


おおおおおおおおおおおっ!!
観客は大盛り上がり。


「すごいっ! 凄い凄いっ! お互い足を止めて剣と斧がぶつかり合っている! 双方一歩も引かずに連打の嵐だァ!!」


マミの解説に観客たちが盛り上がる。


俺たちは観客の声など聞こえていないほど休まず撃ちまくり、そしてさらに撃ちまくる。お互いの攻撃は目で負えぬ程の動きとなり金属のぶつかり合う音と飛び散る火花だけが激戦であることを観客に知らせている。


「へえ、俺のタフネスについてくるたぁ、たいしたタマだっ!!」


俺の渾身の一撃を受け止めながらにやりと笑うドルトロイ。だが……

「なっ!?」


俺の渾身の一撃を受け止めたバトルアックスが音を立てて砕け散る。


「隙アリ!!」


俺はフリツの大剣の面でドルトロイを吹き飛ばす。ドルトロイは水平に吹き飛び、観客席の壁に激突する。


「勝者っ、不屈の剣闘士ギルバード!!」


吹き飛んだドルトロイを確認しに行ったマミが勝者宣言をする。


わあああああああああっ!!
割れんばかりの大歓声。歓声による音の振動が俺の体に響いてくる。



「ちっ、打ち損ねがあったとは」


試合後の選手控え室。クレリックによる治癒魔法で怪我の治療を受けてるドルトロイ。不機嫌な顔で壊れたバトルアックスを見つめて、欠陥部分を確認している。


「ドルトロイ、この剣についてだが」
「あー、その剣のことだがな。そいつには呪いがかかっている。呪いっつてもいい呪いってのもあってな、その件は所有者を選ぶ呪いだ。つまり、お前はその剣に選ばれた」


ドルトロイの話を聞いて思い出したことがある。フリツはこの剣を背負っていたが、一度も抜いたことがない。
一度なぜ抜かないのか聞いて主ではないからだって言ってた気がする。


「その剣にもお前にも何かがある。あとは運命ってやつが判定をくだすんだろうな。その剣はすげえもんだ、そしてお前にしかその剣の最高の力を発揮できない。大事に使えよ」


そう言って治療を終えたドルトロイは去っていって……Uターンして戻ってくる。


「おめえ、いい防具欲しくねぇか?」


なぜか俺は大枚をはたいてドルトロイが制作した防具を購入することになった。今まで蓄えた賞金の7割近くが防具代で飛んでしまった。


後日俺はドルトロイの工房へとやって来る。高炉の熱気、槌と金床の叩く音、マジックアイテムで永遠に空気を送るフイゴ、鍛冶に必要な道具や施設が一箇所に集まっている。


「よく来たな、まずは採寸するぞ!」


ドワーフのドルトロイは度を越した職人気質を持つ。ドルトロイが本気で武器や防具を作るとなると、握力から身体の各部の長さ太さ、筋の質から脂身の厚さ、戦い方の癖まで徹底的に分析される。
…………正直、下準備に付き合うだけでも、かなり覚悟がいる。


「山神マーブル様の名において最高の防具を作ってやる」


山神マーブルドワーフの始祖と呼ばれる神で魂の鉄床と槌でドワーフを打ち作ったと言われている。


「確かドワーフを生み出した始祖と呼ばれる神だったか。素材は何を使うんだ」
「防具の素材はヌーメノールの神銀」
「ぶっ!?」


さらりとドルトロイは爆弾発言をする。俺が思わず吹いた姿を見て悪戯が成功した子供のようにニヤリと笑う。


「今は失われしネヴァーダインの王国より、ハイボリアの地を経て、 僅かながらこの地にも流れておった希少金属。けして曇らぬ銀の輝きと、鋼を越える強度を持つ、ドワーフ達の古き祝 唄ほぎうたに歌われし、まことの鋼よ」
「そんな貴重な金属俺に使っていいのか?」


ヌーメノールの神銀、神から与えられた神の金属。それで作られた武具は神話の英雄が魔王や怪物を討伐する際に使われたと言われている。
本当に実在していただけでも驚きだが、それで防具を作るというのが信じられない。


「マーブル様からの囁きを頂いた。お前が背負う運命は強大で困難だ。手助けするには神銀と我が鉄の連峰の氏族の秘技で作り上げた鎧が必要だとな。ちゃんと代金は貰う、気にするな」


こうして俺の鎧作りが始まった。
とりあえず完成までに思ったことは本当に下準備に付き合うだけでも覚悟が必要だった……その一言だけだ。











          

コメント

コメントを書く

「ファンタジー」の人気作品

書籍化作品