slave sword fighter and a sword of destiny

パクリ田盗作@カクヨムコン3参戦中

第29話



俺とユキカゼはドラゴンズ・アイの中庭で武器を持たず無手で向き合う。


「無手も拙者達ニンジャの得意とするところ、ギルバード殿とはいえ、全力で向かうでござる」
「それでいい」


お互いに構えを取る。


「参るでござる」


最初に仕掛けたのはユキカゼだ。
ユキカゼの足元に砂塵が舞う。高速移動で俺に近づくと手刀の攻撃。
恐ろしい速さだが対応できない程ではない。俺は最低限の動きでユキカゼの手刀を弾く。
大きく動けばユキカゼに急所を狙われる。


「はあぁぁぁっ!!」


ユキカゼが鋭い廻し蹴りを放つ。俺は一歩下がり上体を逸らして回避する。
俺はユキカゼに攻撃せず、ユキカゼの攻撃を弾き、防ぎ、回避し続ける。


「くっ!?」


ユキカゼは攻撃が当たらないことに焦りを覚え、さらに速度を上げて連撃を繰り返す。だが、その分一撃が軽くなり、攻撃精度も荒くなる。

「セイッ!!」


俺の即頭部を狙った上段蹴りを回避して、拳を振るう。


「………」


俺の拳はユキカゼの顔面に当たる寸前で寸止めする。
そこで手合わせは終わった。


「拙者……兄上の仇討ちができないなら……どうすればいいでござる……」


宿に戻るとポツリとユキカゼが呟く。


「ユキカゼ、俺が代わりに出る」
「なっ、何を……行っているでござるかっ!?」


ユキカゼは俺の一言に驚いている。


「俺はユキカゼの兄代わりといえば肉親も同然、俺がユキカゼのお兄さんの仇をとってやる」
「駄目でござる! 絶対に駄目でござるっ!!」


ユキカゼは珍しく怒りに震え立ち上がり、食堂のテーブルを強く叩く。


「俺に任せろ、それとも……兄代わりの俺が信用できないのか?」
「……そうではない……そうではないでござる……」


ユキカゼは今にも泣きそうな悲しみの混じった声を絞り出す。そして静かに座る。


「………」


座ったユキカゼは俯いたまま何も言わない。


「拙者は……拙者はもう、大切な人を失いたくないでござる。もう……もう、つらいのは嫌でござる」


ユキカゼは肩を震わせ絞り出すような声を出す。テーブルにユキカゼの涙がぽろぽろとこぼれ落ちている。


「俺は死なない、約束する」


大切な弟のユキカゼにもう辛い思いはさせたくない。俺は生きて勝つことを心に誓った。



「見直したぜぇ。やるなこのぉ」
「結局争いごとになるのはどうかなと思います……でも、ユキカゼちゃんの為にも頑張ってください」


マガツとの試合当日、出場の準備をしていると宿屋の主ドランとミナが応援してくれる。
ユキカゼの代わりに俺がマガツとの仇討試合に出場する話は帝都ギランに知れ渡っていた。
協議進行会もギランでは無名のユキカゼよりスペシャルクラスの俺の方が集客を見込めると思ったのか、ユキカゼの代わりに試合に出ることをあっさりと承諾し、大々的に宣伝していた。


俺はいつもと変わらず自らを鍛え戦いに備えて準備を整える。
勝ってユキカゼに笑顔を取り戻す。ユキカゼはあれから宿の自室にほとんど篭っている。時折顔を合わせるが元気がなかった。
試合当日、声をかけたがユキカゼは怖くて見れないからと宿の自室のドア越しから答え、自室に篭ったままだった。


「じゃあ、行ってくる」


俺はユキカゼの部屋の戸の前で言う。立ち去ろうとするとギィっと扉が開く音が聞こえた。
振り向けばユキカゼが部屋から出てきていた。ユキカゼの顔は焦燥しており、先程まで泣いていたのか目が赤く、頬に涙の流れた跡がある。


「拙者、兄上が負ける所なんて想像もできなかったでござる」


ユキカゼは俺に抱きつくと顔を俺の胸に埋める。


「だから怖いでござる。拙者は信じる事が怖いでござる」


俺は優しくユキカゼを抱きしめ、頭を撫でる。


「大丈夫、俺が信じることは怖くないと証明する。必ずだ、約束する」
「ギルバード殿……」


俺は静かに頷き、闘技場へと向かった。
そして仇討試合が始まる。
対戦相手は凶悪な武器で対戦者を無残に殺害する東洋の生ける死神マガツ。
俺は代理仇討、不屈の剣闘士ギルバードとマミにアナウンスされる。


マガツは不気味な動きで異様な雰囲気を作り出す。顔の半分が金属で覆われ、全身を纏う黒いマント。デロリと垂らす長い舌が特徴的な男だ。


「ふひっふひふひっ、ガキが勝てねぇから変わりカイ? まあいい、まずはお前をガキの目の前で無残に殺して、その後ガキを切り刻んで殺してやるぜぇ」
「残念だが……お前はここで消える」


俺はいつになく感情を抑えている。
【心は熱く、頭は冷静に】
昔フリツが言った言葉を思い出して燃えたぎる怒りを抑える。


「言うねぇ、なら次元の違う強さってのを見せてやるよぉ!!」


そして試合開始時間となる。


「さあっ試合開始ですっ!!」


俺の体から熱い戦いのエネルギーが噴出した。
開始宣言と同時に俺はマガツへと突進し、連撃を繰り出す。


「ふひふひふひひひっ! 当たらねえ、ハズレだよおおお」


マガツはグネグネと人体構造を無視したような奇怪な動きで回避していく。横薙ぎを上半身を180度後ろに折って、袈裟斬りを四足の獣のようにしゃがみ、異様なスピードで後方に這い距離を開ける。


「今度はこっちから行くぞぉ!!」


マガツは黒いローブから外側が刃になった円形の輪っかを取り出し、内側に人差し指を引っ掛けて回転させ、オレに向かって二本投擲する。


「そんな子供だましなど!」


刃のついた輪っかは一直線にこちらに向かってくるので容易に回避できる。そのままマガツに攻撃を再開しようとすると……


「ギルバード殿っ! 伏せるでござる!!」


観客席にいたユキカゼの叫びと同時に首筋に悪寒を感じ、その場に伏せる。
伏せた瞬間、あのまま立っていたら俺の首があった部分を先ほどの刃の輪っかが通り過ぎ、俺の髪の毛を斬って、マガツの手に収まる。


「チッ……余計な真似を」


マガツは観客席にいるユキカゼを睨みながら、刃の輪っかをくるくると回し続けている。


「マガツ選手! 奇怪な武器でギルバード選手を翻弄する! ギルバード選手、打つ手はあるかっ!?」


マミが解説し、観客は盛り上がる。
マガツがまた刃の輪っかを投げる。俺は回避してその機動を確認しようとする。


「よそ見してる暇あるかなぁ! ふひふひっ!!」
「ぐあっ!?」


マガツは両手にクローを装着させて攻撃を仕掛けてくる。マガツの攻撃をフリツの大剣で防いでいると、軌道を変えて戻ってきた刃の輪っかに左腕を斬られる。
血が流れるが傷は浅い。フリツの大剣を握り締めて、筋が切れていないことも確認できる。
マガツは刃の輪っかをキャッチし後方に跳躍し、俺の血がついた刃の輪っかを舐める。


「ふひふひひっ、もっと切り刻んでやるぜぇ!!」


マガツはまた刃の輪っかを投擲し、こちらに突進してくる。
俺はフリツの大剣を正眼に構えて大きく息を吸う。


「うおおおおおおおおっ!!」
「なにっ!?」


気合一閃とともに大剣を横薙ぎに振るう。横薙ぎに振るった大剣はマガツの投げた刃の輪っかをマガツの方へと火花を散らしながら打ち返す。マガツは驚いた顔を顕にし、打ち返された刃の輪っかを紙一重で回避した。
刃のついた輪っかはそのままマガツの後方へと飛んで行き、観客席の壁にめり込むように刺さる。


「おおっと! ギルバード選手、マガツ選手が投擲した武器を打ち返したーっ!!」


マミの驚く声と観客席から聞こえる感嘆の歓声。


「こしゃくな真似をぉ」
「もっと芸を見せてみろよ、大道芸人さんよ」


マガツはクローを構えながら俺を睨む。俺は不敵に笑いながらフリツの大剣の切っ先をマガツに向けて挑発する。

          

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