slave sword fighter and a sword of destiny
第24話
今日は俺が宿泊している宿屋ドラゴンズ・アイの手伝い。
最近ドラゴンズ・アイに新しい従業員が増えた。
新しい従業員はキャタル。俺が拾ってきた猫だ。
キャタルはドラゴンズ・アイの看板猫として働いている。いつの間にか近所では客を呼び幸運を招く猫とまで呼ばれている。
「今日もご苦労さん」
「ニャー」
仕事を終えた俺はキャタルを連れて自室へと戻り、キャタルを労いながら頭を撫でる。
部屋の明かりを消して寝ようとするとぼうっと淡い光に部屋が包まれる。月や星明かりと違う明るさに怪訝に思いながら光の元を探すと、窓辺に佇むキャタルが淡い光をまとっていた。
「キャタル?」
「ギルバード」
キャタルが人の言葉を喋った!? 聞き間違いか、それとも俺はもう寝ていて夢を見ているのだろうか。
「命を助けてくれてありがとう。すまない、もっと早く言うべきだったけど……力を失って言葉も喋れなかった」
「あ……ああ、別に……気にしなくてもいい……」
俺はあまりに唐突のことに呆然としながら応える。
「僕はギルバードが付けてくれた名前と同じ名前……キャタルだ。この宿の主人が言っていた夜明けを見守る猫の一族の王の末裔だ」
「………」
「もう国は滅び、一族は散り散りに生きてきた、そして王族の生き残りももう私一人」
キャタルはそう言って悲しそうな表情をする。
「国が滅んだってどういうことだ?」
「黒龍によって我らの国は滅ぼされた。ギルバードも黒龍の話ぐらいは聞いたことはあるだろう? あれは事実だ」
黒龍……鈍い黒檀色の鱗を持つ強大なドラゴンで、世界を滅ぼそうとしてこのダントーイン帝国初代皇帝が討伐した伝説がある。まさかお伽噺だと思っていた存在が実在したとはな……
「長い年月を生きて私は力を取り戻した。ありがとうギルバード、君が僕を助けてくれなかったら野垂れ死んでたかもしれない」
そう言ってキャタルは深々と頭を下げる。
「夜明けを見守る猫の一族の王族の習わしで命の恩人の願いをひとつ叶えることになっている」
「願い事といってもな……」
突然過ぎるし、猫だしなあ……と思っているとキャタルの体が光り、光りが収まるとキャタルの口には金貨がくわえられていた。
「王族の力だ。生まれつき魔法の力がある。命の恩人のどんな願いも叶えることができる。ギルバード、君が望むなら巨万の富もこの国の皇帝の地位だって僕はあげれる」
「なら……一つ叶えて欲しい願いがある」
「言ってくれ! ギルバード、君の望みを叶えるのが僕の恩返しだ」
「ならその力でキャタルの国を復興させてくれ」
俺が願い事を言うとキャタルは驚いたような顔をする。猫の驚いた顔ってこんな顔なのか。
「お前が欲するものはないのか?」
「やりたいことは自分の力で手に入れて叶えないと意味がない。だからその力はお前の国を復興させるのに使ってくれ、それが俺の願いだ」
「………」
キャタルは何も言わずただ見つめている。
「我ら夜明けを見守る猫の一族の神に感謝を……僕は君と出会えたこの運命に感謝する。君に避けようが無い運命が訪れる時、我ら夜明けを見守る猫の一族はギルバードの味方になる事を誓う。……ありがとう、ギルバード、君のおかげで僕たちはまた国を取り戻せる」
キャタルがそう言うとキャタルの体を包んでいた光が増していく。
「別れの時が来たようだ。ありがとうギルバード、僕は君がくれた恩を絶対に忘れない」
光が消えるとキャタルはどこにもいなかった。朝を迎えてもキャタルは宿のどこにもおらず近辺を探してもその姿を見ることはなかった。
「キャタルちゃんどこ行っちゃったのかなぁ……」
「きっと王国に帰ったのさ。うちは宿屋だ、客はいつかは出て行くものさ」
キャタルがいなくなったことでミナが元気がない。
ドランが慰めるが元気になるのには少し時間が必要のようだ。
俺は宿の外に出ると空を見上げる。この空がきっとキャタルの国に続いてる。
「立派な王様になれよ、キャタル」
俺は空に向かってそう呟く。きっと風が俺の伝言をキャタルに届けてくれるだろう。
          
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