slave sword fighter and a sword of destiny

パクリ田盗作@カクヨムコン3参戦中

第15話



中階層アベレジ商店エリア。
今日も慌ただしく荷馬車が走る。
商品が常に行き来する商店の多い通りは活気づいていて回転が早い。
俺は武具の手入れ、道具の購入、試合で破れた服の直し等を行い帰り道。
また荷馬車が凄いスピードで走ってくる。


「!?」


その荷馬車の進行先によたよたと歩く猫が………
猫は道の外側を歩いているが危ないな………
荷馬車はガタガタと揺れながら左右にぶれる。


「危ないっ!」


俺は猫に向かって走る。
猫の近くで荷馬車の車輪が荒っぽい音を響かせる。
だが猫はそれに気づいていないのかフラフラとおぼつかない足取り。


ガッ!


間一髪、荷馬車に轢かれそうな猫を助ける。
猫は誰?と言いたげな顔で俺の腕の中でこちらを見つめていた。


宿屋ドラゴンズアイで猫にミルクを与えるとすごい勢いで飲む。


「か・わ・い・いーっ!!」


ミナは眼をハートにして猫の頭を撫でる。
ミナは小動物好きのようで猫の一置動作一動作にキャッキャッ反応している。


「こいつも食わせてやりな」


ドランが用意してくれたのは猫が食べやすように切り刻んだ魚の切り身。
猫はガツガツとむしゃぶりつく。


「しかし物凄い食欲だな。よっぽど飯食っていなかったんだろうな、良い食いっぷりだ」


ドランも猫の頭を撫でる。
食事も終わり猫は俺の膝の上で幸せそうな顔して寝ている。


「いいなぁいいなぁ、わたしの膝の上じゃ駄目なのかなぁ」
「ガサツなお前じゃ猫も安心してねむ………むぐぐぐっ!?」


途中でミナがドランの口を捻り上げる。
これからこの猫をどうするかは決まっていないが、とりあえず俺の泊まっている部屋に置いておくことにした。


拾った猫は俺の泊まっている部屋で居候。


「んもー猫ちゃん賢くてかわいいんですよーっ!! お部屋の掃除に入ったらベッドから降りて部屋の隅で掃除が終わるまで待ってるんですよ!!」


と、ミナは猫の話になると異様にテンションがあがる。
拾ってきたこの猫はミナが言う通り賢く大人しい。誰かの飼い猫だったのだろうか。
首輪もなく、その痕跡もない。商店エリア周辺で軽く聞き回ったが迷い猫の話は出ていない。


就寝前ベッドの上で猫の頭を撫でる。


「お前は家族が居ないのか?」
「ニャー」


俺が問うと猫が鳴く。答えているわけではないと思うがなんとなく一人だと思っている。


「俺も一人なんだ。ここであったのも何かの縁だ、一緒に暮らさないか? 俺が闘技場で死ぬまでは餌には困らないぞ」
「ニャー」
「もし俺が死んだら、多分ドランやミナが面倒見てくれるからから安心しろよ」
「………」


その言葉には答えることがない。眠たくなったのかな。俺も消灯して眠りについた。



翌朝、店々が開き始める頃街を歩いていると銀髪の見慣れない女剣士が歩いている。鋭い視線、好きのない物腰。
かなりの腕前だな、前回前々回の試合で戦った女性剣闘士とは雲泥の差だ。
女剣士はキョロキョロしている。
この街は初めてなんだろうか。


「どこか探しているのか?」
「あ………」


女剣士は警戒する、流石だな。こういう時はこれでいい。


「俺の名はギルバード、行き先を教えるぐらいでお金は取らないさ」


ただ道を教えるだけでお互い無駄に緊張感を持っても仕方ない。


「私は………ダリアです。初めてここに来たのですが………人探しに情報を得られる場所を知らないでしょうか?」
「それなら酒場だな、俺の行きつけで良ければ教える。俺の名前を出せば………多分悪く扱われることはないと思う」


そして地面に簡単な地図を書き道を教える。
帝国の首都は無駄に広い、慣れていないと日が暮れても目的に到着できないなんて笑い話があるぐらいだ。


「感謝する、それでは」


地図を見てダリアは礼を述べるが………まだ警戒は解いていない。
ここで俺が不埒なことをしようとすればすぐに反応できるように警戒している。


俺は両手を上げて数歩下がる。


「申し訳ない」


ダリアもゆっくり下がってもう一度一礼して去っていった。



昼過ぎ、ゴンドの酒場で掲示板を見るもいい仕事はない。
そういえば朝の女剣士はどうなったんだろうか。


「ん? そんな女は来ていないぞ?」


ウェイトレスに聞いても誰も見ていないという。
あれからそれなりの時間が経っているがどうしたものかと思っていると………
ウェスタンドアを押し開けて酒場に新たな客が入ってくる。


「すみません、人を探しています。ジム・カーンという名前のスリクリーンで殺し屋なんですが………」


スリクリーンとは珍しいな。昆虫と人間の混合種で古代の魔法実験で生まれた種族と言われている。


「「あ」」


やってきた客に顔を向けると今頃ダリアが訪れた。


「道に迷ったんです。貴方の説明は良かったんですが………私、その……方向音痴で………」
「ギルバードが言ってた女剣士ってあんたのことか。スリクリーンはこの帝都にもいるが数は少ない。今は情報はないが時間をくれるなら調べるが………」
「助かります。情報料は………」


ダリアが財布を取り出すがゴンドはそれを手で制す。


「後払いで良い。見つからなかったら情報料もいらん」


ダリアとゴンドのそんな会話の中俺は何か引っかかる。
ジム・カーン………どこかで聞いた記憶がある。


「思い出した! あんたの言ってるジム・カーンかは知らないが同じ名前でスリクリーンが剣闘士として登録している。随分と残酷な試合をするやつだ」
「なら話は早い。そっちに手を回す」


ゴンドは客の一人を手招きして何か言伝を頼む。


一時間後、言伝をうけた客が帰ってきて羊皮紙をゴンドに手渡す。
羊皮紙にはジム・カーンの情報が掲載されていた。町々を転々とする旅稼ぎとして登録しているようだ。


「見つけた………私も剣闘士として登録すれば戦えますね」


羊皮紙には人相やわかる範囲でのジム・カーンの経歴が載っていた。それを見たダリアはジム・カーンとの対戦を所望する。


「いや、マッチメイクは進行が決める。大きな事情と金が無いと希望は通らないぞ」
「あいつは父の仇です! 私はアイツを殺すために旅をしてきました!」


ダリアの父は剣匠卿と呼ばれる高名な剣士だったそうな。無名だったジムは名前を売る為に父に毒を盛り、ダリアの父は満足に戦えず殺された。
剣匠卿の証であるメダリオンを奪われ、名を売るために利用された。


「父の仇と売名のために汚された名誉のために私はジムを討たないといけないのです! お金ならあります、父が家族のために残してくれたものが!!」


ダリアはガチャリと金貨が詰まった革袋をカウンターの上に置く。


「仇討ち、そして懸賞金もこちら持ち………いけるな。だが良いのか? 負ければ全てを失うぞ」


ゴンドが脅しをかける。


「やります、手続きお願いします」


ダリアはゴンドの脅しに屈すること無く決意を込めた眼で見つめる。


「………わかった」
「死ぬなよ、あんたにはまだ母親がいるんだ」
「はい! ありがとうざいます!!」


俺達はダリアの勝利を祈願して杯を揚げた。





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