slave sword fighter and a sword of destiny

パクリ田盗作@カクヨムコン3参戦中

第13話



今日も試合がないので宿の手伝い。
荷物持ちの男手として俺がミナの買いだしに付きそう。
購入するのは野菜や肉、調味料の様々な雑貨等。
買える時に買えるだけ買うのがミナの方針らしく、荷物の量が半端ない。
肉や野菜を購入する時は鋭い目で鮮度や痛みをチェックする。
俺が適当にこれで良いだろと野菜を選んだら滾々と説教されて八百屋の親父が笑っていた。


食材を見てふと気づく。そう言えばミナが料理をしている所は見たこと無いなと。


「ミナも料理するのだろ? たまにはミナが作った料理も食ってみたい」
「………お父さんほど美味しく作れないよっ!!」


俺がミナの料理が食べたいと伝えるとミナは急に怒鳴る。


「色々練習したんだけど………うまくいかないんです」


掃除に洗濯なんでもテキパキこなすのに以外だ。


「お父さんの料理は大好きだし、お父さんの腕には負けるけど作れるし………私、お母さんの味を出したいの………」


ペンダントを見つけた時にミナは母親のことを話してくれた。
ミナが幼い時にミナの母は流行り病で亡くなったそうだ。

「お父さんもお母さんの料理が再現できなくて………泣きながらメニューからお母さんの料理を消したんです」


ミナの母親はミナが大きくなった時に自分の料理を教えるってドランに嬉しそうに語っていたらしい。


「すまん、辛い話させて」
「わかっています。ギルバードさんは悪気があって料理の話をしたんじゃないんですから、悪くないです」


「………」
「………」


そこからお互い無言になって宿屋に向かって歩く。


「なんとか………なんとか私がしたいんですけど………難しい」


そう呟くミナの背中を俺は見つめていた。


「ただいまぁ」
「おかえりぃ」


宿に戻ると俺はミナの指示の下買い込んだ荷物を整理収納していく。
それをニヤニヤしながら見つめているドラン。


「ギルバードが剣闘士引退したら、うちのミナと結婚して宿屋を継いでもらったら俺は安心できるなあ」
「ぶほっ!?」


一仕事終えて水を飲んでいる時にドランがそんなことを言うものだから俺は咽る。


「おおおおおおお父さんっ!? なななに言ってるのっ! そんなわけ無いでしょ!!」


そんなに否定されるとちょっとショックだ。


「ギッギルバードさんは………ギルバードさんのいい人が………」


そう言いながらミナは真っ赤の顔でこちらを何度もチラ見する。


「とにかく、休憩終わり! お仕事ですよ!!」


ミナにせっつかれて俺とドランは宿屋の仕事に戻った。



今日は闘技場の試合がある日だ。


「行ってらっしゃいませ。………頑張って!」


ミナに見送られて宿を出る。小さな声だったが声援をくれたことが嬉しく思う。


今日の対戦相手は女性だ。
ダントーイン帝国の闘技場は男女関係なく平等に試合が組まれる。


「くくくっ、図体がでかいからって勝てると思うなよ」


対戦相手の女性がいきなり挑発的な口を叩く。
鎧をつけず厚手の布の服にマントとレイピアのみ………典型的なスピードと手数で勝負する軽装戦士系の貴族のようだ。


「私はかならずお前に勝つ。勝てたら命は助けてやる代わりに四つん這いになってわんわん鳴きながら闘技場を一周しろ」


女性はレイピアの切っ先をこちらに向けながら挑発を続ける。


「なら、俺が勝ったら下着姿で闘技場一周してもらおうか」
「私に勝てたらなぁ」


女は自信満々に俺が提示した条件を承諾する。


わああああああああ!!!


観客はこんなバカげた賭けにも興味を持ち、盛り上がる。


「ギルバード絶対に勝て!!」
「死んでも勝て!!」
「負けても脱がせろ!!」


観客の男性陣が欲望丸出しで声援をくれる。近くにいた女性の観客が俺に激を送っていた男達を冷ややかな目で見つめている。
あ、カップルで来てる観客の女性が拗ねて、男性が必死にご機嫌を取っている。


おっと、今は試合に集中しないと………


「それでは試合開始です!!」


ガキィィィン!!


試合はあっという間に決着がついた。
試合開始と同時に女剣士が様子見の突きをしてきたので剣で弾いたら………握りが甘かったのか弾き飛んでいった。


「いったあああい!! 腕が痺れたあああ」
「ええ~~………」


どうやらこの女剣士は口だけだった模様。膝をついてべそをかいている姿を見て呆れてしまう。


今までどういう相手に勝ってきたのやら………


「約束は守れよ。反故したら命の保証はないぞ」
「え………」


観客からは脱げコールが連呼される。ここで女が先程の賭けを反故すれば暴動が起きるか、剣闘士出入り口で待ち伏せされて袋叩きかより酷い目に遭うだろう。


女剣士は下着姿で闘技場を一周する。


「ひゅーいいねえ!!」
「おらーもっと見せろー!」
「隠してんじゃねーよ!」


観客の野次や酔っ払った男達の汚い言葉が飛ぶ。


「くそぉぉぉ………今まで負けたことなかったのにぃ~」


悔しがりながら女剣士は残りの距離を歩いている。
この闘技場はかなり広い。一周するにも結構な時間がかかる。


「いったい今までどんな戦いをしていたんだ………」
「あー、なんかね、手を回してよっわーい奴隷とばかりやってたのよ。素人の奴隷しか相手したこと無いから………ね」


俺の呟きが聞こえたのか、マミが今回の対戦相手の戦歴を教えてくれる。
なるほど、貴族の遊戯そういうことか。


「で、調子に乗ったか奴隷で物足りなくなって元奴隷の俺か」
「ち な み に、ギルバードをお勧めしたのは、わ た し」


ニヤーッと悪戯な笑みを浮かべてマミが俺の顔を覗き込む。


「なるほど、仕組まれたか。まあ、このままだと火傷どころではすまないことになるからこれで懲りてくれると良いな」


涙を浮かべ羞恥で真っ赤な顔で回り続けている女剣士を見る。


「奴隷に負けるなんて………ぐすっ………二度とこんなとこ来ないっ!!」


女剣士は約束の一周を終えると服を抱えて走って闘技場から消えていった。
ふと、先程喧嘩していたカップルの観客が居た席に視線を向ける。
頬に真っ赤な紅葉をつけて呆然としている男性と、足早に出口に向かう女性の後姿が見えた。

          

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