slave sword fighter and a sword of destiny
第11話
「おはようございます」
翌日、深酒をして昼過ぎまで寝ていた俺は部屋から出るとドランの娘ミナが嫌味を込めて挨拶をしてくる。
勤勉な彼女からすると泡銭で飲み明かして二日酔いで苦しむ俺はよっぽどイメージが悪いらしい。
まあ剣闘士なんて人の生死関わる仕事をしている以上普通の人達にはまっとうなことをやっているとは思われないだろう。
奴隷上がりだし、慣れている。
今日は一日鍛錬に費やし、夕方に仕上げのランニングをした帰り。
宿屋と商店街の間地面をキョロキョロ見ながらウロウロするミナがいた。
ミナは今にも泣きそうな顔で必死に何かを探している。
「何かあったのか?」
「あっ………」
俺が声をかけるとミナは驚く。俺が近づいたことすら気づいていないほど探し物に集中していたようだ。
こちらを向いたミナの表情はいつもと違い覇気も元気も何もない顔だった。
「なんでも………ありません」
泣きそうな顔でそう答えるとまた俯いて歩き出す。
明らかに何かを探している。
「なにか探しているのか?」
「………なんでもないですから」
どう見てもなんでもないとは思えない。
「何か探しているなら手伝うぞ」
「………いいです、私の問題ですから」
手伝いを申し出るが冷たく拒否される。
だがここまで来ると簡単には引き下がれない。このまま帰っても気になって仕方ない。
改めてミナを見るとプライベートでも仕事中でも身につけていたペンダントが見当たらない。
もしかしたらそのペンダントを探しているのだろうか。
俺はミナが探す範囲の地面をキョロキョロと探す。
「………何を探しているのか知らないのに何をしてるんですか」
「いつも身につけてるペンダントだろ」
「………」
ミナはまた探し始める。どうやらペンダントで正解のようだ。
夕方から暗くなり夜になる。
物を探すにはどんどん不利になる。
ミナは警備兵や知り合いにペンダントが落ちてなかったか聞いているが誰も見ていないらしい。
誰かに拾われて質屋に持って行かれたかと思い、質屋も見て回るが無い。
そして更に夜も深くなり………ミナは蹲って泣いていた。
「まだ諦めるには早い、探そう」
「………天罰が当たったんです」
ミナは泣きながらそう呟く。
「私が………私がギルバードさんに冷たく当たるから、神様が怒って私のいちばん大事なお母さんのペンダントを取り上げたんです」
ミナは幼い頃に亡くした母の話を泣きじゃくりながら話してくれる。
「お母さんはどんな人にも優しくしなさいっていつも言っていたのに………でも………でも………私………」
いつもと違う弱くて崩れ落ちそうなほど小さな存在のミナ。
「そんなことはない、諦めるな」
俺はミナの頭を撫でる。俺に冷たくしたぐらいで神様が大事なものを取り上げるなら、今頃世界中の人が大事なものをなくしている。
また探す、夜も遅いのでミナが見える位置に俺もいるようにする。
しかしどこにあるんだ………ミナは失くしたことにすぐ気づいて探し回っていた。
星明りと周囲の人が気を利かせて明かりを灯してくれるが見える範囲が狭い。
くそっ、どこにあるんだ………
ポゥ………
暗い道に四苦八苦していると明かりが増える。またどこかの誰かが気を利かせて明かりを灯してくれたかと思っていると。
「ギルバードさん、剣が………」
「ん?」
ミナが俺の背中に担ぐ剣を見つめている。背中の剣を見ると剣が自ら発光している。
光は剣のグリップの先端に集まると一本の先になるようにとある建物の隙間を照らした。
「あった!!」
光の終着点にはミナがいつも身につけていたペンダントが落ちていた。
俺はペンダントを拾うとミナのもとに走って手渡した。
「お母さん……おかあさん……よかったぁ……」
ミナはペンダントを受け取ると泣き崩れる。何度も何度もお母さんと呟きながらペンダントを大事に握った。
ペンダントが見つかったことで安心したのか疲れ果てたミナをおぶって宿に戻る。
ミナは俺の背中で眠り、安らかな吐息を吐いている。首には母親の形見であるペンダントが飾られていた。
「感謝する」
おぶっていたミナをドランにわたすとドランが呟く。
ドランは俺達がペンダントを探している時もちらちらこちらの様子を見ていた。
宿が暇だったら一緒に手伝っていただろうが、夕食や一杯飲みに来た客に対応していて手伝うことができなかった。
「俺が勝手にやったことだ」
そう言って俺は二階の自室へと戻った。
ミナのペンダントのことから少したった。
と言ってもそんなにミナの態度が大きく変わることはなく。
「もー昼間からのんびりしないっ! ゴンドさんのとこでお仕事探しに行きなさい!!」
と俺のお尻をパシンと叩いて強い口調で部屋から追い出す。
だが細かい所でさり気なく距離は近くなった気がする。
「暇ならうちの仕事手伝え」
「俺………客………だよな?」
二階から降りてくると宿の主人ドランが仕事を割り振ってくる。
酒場でもめぼしい仕事がない時は宿泊料金の割引を餌に宿屋の仕事を手伝うことになった。
割り振られた仕事はミナのアシスタントだ。
「はい、そこ。そこを引っ張ってください、シーツが皺にならないように三角に折って………」
宿の仕事は思ったより重労働だ。
客として泊まっている時は気が付かなかった隅々まで気を使う。
働く側になって初めてわかる仕事の大変さ。
ミナはもちろん手慣れていてよく動く。
こんな小さな体にかなりの体力が蓄積されているのだなと感心する。
仕事を終えて冷たい水で喉を潤す。
「はい、お疲れ様でした。どうです、宿の仕事は?」
「大変だな。ミナはこれを毎日やっているんだろ」
「でしょー? 鍛え方が違いますからー」
ミナはふふーんと笑顔で胸をはる。
改めて見ると笑顔のミナは可愛かった。
「なによぉ、私の顔に何かついてる?」
「いや、なんでもない」
剣闘士として戦うのもいいが、こういった日常も悪くない。
また暇になったら宿の手伝いでもするか。
翌日、深酒をして昼過ぎまで寝ていた俺は部屋から出るとドランの娘ミナが嫌味を込めて挨拶をしてくる。
勤勉な彼女からすると泡銭で飲み明かして二日酔いで苦しむ俺はよっぽどイメージが悪いらしい。
まあ剣闘士なんて人の生死関わる仕事をしている以上普通の人達にはまっとうなことをやっているとは思われないだろう。
奴隷上がりだし、慣れている。
今日は一日鍛錬に費やし、夕方に仕上げのランニングをした帰り。
宿屋と商店街の間地面をキョロキョロ見ながらウロウロするミナがいた。
ミナは今にも泣きそうな顔で必死に何かを探している。
「何かあったのか?」
「あっ………」
俺が声をかけるとミナは驚く。俺が近づいたことすら気づいていないほど探し物に集中していたようだ。
こちらを向いたミナの表情はいつもと違い覇気も元気も何もない顔だった。
「なんでも………ありません」
泣きそうな顔でそう答えるとまた俯いて歩き出す。
明らかに何かを探している。
「なにか探しているのか?」
「………なんでもないですから」
どう見てもなんでもないとは思えない。
「何か探しているなら手伝うぞ」
「………いいです、私の問題ですから」
手伝いを申し出るが冷たく拒否される。
だがここまで来ると簡単には引き下がれない。このまま帰っても気になって仕方ない。
改めてミナを見るとプライベートでも仕事中でも身につけていたペンダントが見当たらない。
もしかしたらそのペンダントを探しているのだろうか。
俺はミナが探す範囲の地面をキョロキョロと探す。
「………何を探しているのか知らないのに何をしてるんですか」
「いつも身につけてるペンダントだろ」
「………」
ミナはまた探し始める。どうやらペンダントで正解のようだ。
夕方から暗くなり夜になる。
物を探すにはどんどん不利になる。
ミナは警備兵や知り合いにペンダントが落ちてなかったか聞いているが誰も見ていないらしい。
誰かに拾われて質屋に持って行かれたかと思い、質屋も見て回るが無い。
そして更に夜も深くなり………ミナは蹲って泣いていた。
「まだ諦めるには早い、探そう」
「………天罰が当たったんです」
ミナは泣きながらそう呟く。
「私が………私がギルバードさんに冷たく当たるから、神様が怒って私のいちばん大事なお母さんのペンダントを取り上げたんです」
ミナは幼い頃に亡くした母の話を泣きじゃくりながら話してくれる。
「お母さんはどんな人にも優しくしなさいっていつも言っていたのに………でも………でも………私………」
いつもと違う弱くて崩れ落ちそうなほど小さな存在のミナ。
「そんなことはない、諦めるな」
俺はミナの頭を撫でる。俺に冷たくしたぐらいで神様が大事なものを取り上げるなら、今頃世界中の人が大事なものをなくしている。
また探す、夜も遅いのでミナが見える位置に俺もいるようにする。
しかしどこにあるんだ………ミナは失くしたことにすぐ気づいて探し回っていた。
星明りと周囲の人が気を利かせて明かりを灯してくれるが見える範囲が狭い。
くそっ、どこにあるんだ………
ポゥ………
暗い道に四苦八苦していると明かりが増える。またどこかの誰かが気を利かせて明かりを灯してくれたかと思っていると。
「ギルバードさん、剣が………」
「ん?」
ミナが俺の背中に担ぐ剣を見つめている。背中の剣を見ると剣が自ら発光している。
光は剣のグリップの先端に集まると一本の先になるようにとある建物の隙間を照らした。
「あった!!」
光の終着点にはミナがいつも身につけていたペンダントが落ちていた。
俺はペンダントを拾うとミナのもとに走って手渡した。
「お母さん……おかあさん……よかったぁ……」
ミナはペンダントを受け取ると泣き崩れる。何度も何度もお母さんと呟きながらペンダントを大事に握った。
ペンダントが見つかったことで安心したのか疲れ果てたミナをおぶって宿に戻る。
ミナは俺の背中で眠り、安らかな吐息を吐いている。首には母親の形見であるペンダントが飾られていた。
「感謝する」
おぶっていたミナをドランにわたすとドランが呟く。
ドランは俺達がペンダントを探している時もちらちらこちらの様子を見ていた。
宿が暇だったら一緒に手伝っていただろうが、夕食や一杯飲みに来た客に対応していて手伝うことができなかった。
「俺が勝手にやったことだ」
そう言って俺は二階の自室へと戻った。
ミナのペンダントのことから少したった。
と言ってもそんなにミナの態度が大きく変わることはなく。
「もー昼間からのんびりしないっ! ゴンドさんのとこでお仕事探しに行きなさい!!」
と俺のお尻をパシンと叩いて強い口調で部屋から追い出す。
だが細かい所でさり気なく距離は近くなった気がする。
「暇ならうちの仕事手伝え」
「俺………客………だよな?」
二階から降りてくると宿の主人ドランが仕事を割り振ってくる。
酒場でもめぼしい仕事がない時は宿泊料金の割引を餌に宿屋の仕事を手伝うことになった。
割り振られた仕事はミナのアシスタントだ。
「はい、そこ。そこを引っ張ってください、シーツが皺にならないように三角に折って………」
宿の仕事は思ったより重労働だ。
客として泊まっている時は気が付かなかった隅々まで気を使う。
働く側になって初めてわかる仕事の大変さ。
ミナはもちろん手慣れていてよく動く。
こんな小さな体にかなりの体力が蓄積されているのだなと感心する。
仕事を終えて冷たい水で喉を潤す。
「はい、お疲れ様でした。どうです、宿の仕事は?」
「大変だな。ミナはこれを毎日やっているんだろ」
「でしょー? 鍛え方が違いますからー」
ミナはふふーんと笑顔で胸をはる。
改めて見ると笑顔のミナは可愛かった。
「なによぉ、私の顔に何かついてる?」
「いや、なんでもない」
剣闘士として戦うのもいいが、こういった日常も悪くない。
また暇になったら宿の手伝いでもするか。
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