slave sword fighter and a sword of destiny

パクリ田盗作@カクヨムコン3参戦中

第10話



奴隷剣闘士から剣闘士になり、闘技場へ行く=試合なんて構図はなくなった。
奴隷剣闘士時代のように何の説明もなくいきなり試合本番というのはなくなり、使い捨てとは違い控室で訓練練習組み手、果ては練習試合までできるようになった。


あのランクアップ試合から数日、俺は剣を投げ込んだ人物が居ないか調べていた。 伝らしい伝がないのでスニッフや養成所の教官、時折訓練で一緒になる他の剣闘士に聞き込む。聞き込みの結果、わかったことは………


誰も投げ込んだ所どころか剣を持ち込んだ人物すら目撃されていない。


これほど目立つ大きさの剣なのに観客も警備もあの試合で試合会場に投げ込まれるまで誰も見ていないのだ。


この剣は一体………



剣のことは気になるが俺は剣闘士、奴隷剣闘士と違って試合の出場の有無はある程度自分の意志で決められる。
俺にはこれ以外できることはないので早速試合を受けることにした。




今回の試合も帝国兵が相手だ。
ただ、奴隷剣闘士時代と違って赤服と呼ばれる上級兵だ。
下級兵と違って一定期間正式な軍の訓練を受けたベテランだ。


ただ………モンスターとやりあった俺からすると些かランクが下がった感がする。
だが相手が誰であろうと俺は一戦一戦に集中し、限界まで戦いを学び吸収し、そして自分のものに変えるだけ。


俺が昇りつめる先には先のモンスターよりも強い相手もいるのだから。


「次の戦いは赤服ゼッペン選手対不屈の剣闘士ギルバード選手!!」


いつの間にか俺のリングネームのような物がついてしまった。
まあ関係ない、俺は戦うだけだ。命をチップに自由を勝ち取る日まで。


「試合開始です!!」


マミの宣言と同時に対戦相手のゼッペンは獲物の槍を構えてこちらに突撃してくる。
ゼッペンの武装は槍、防具はフルフェイスヘルムにブレストプレート、下半身は厚手の革ズボンだ。


「ふんっ!」
「はっ!」


ゼッペンが気合を込めて槍を突く、俺はそれを大剣で打ち払う。


「うわっ!?」


俺の打払いの威力が強かったのかゼッペンは槍を手放し、バランスを崩す。
その隙きを俺は見逃さない。


逆袈裟気味に大剣を振り上げる。
ガキィィンとゼッペンのブレストプレートの胸部が破壊される音が闘技場に響き、吹き飛び仰向けに倒れる。


「ウウッ………」


ゼッペンは胸を抑えて起き上がろうとして、力尽きて倒れる。


「そこまで! 勝者不屈の剣闘士ギルバード選手!!」


マミの勝利者宣言を確認してから大剣を担ぎ闘技場を後にする。


「おいおい………赤服が赤子のようにあしらわれてるぞ」
「一撃で鎧が壊れるものか?」


観客達がざわめくが俺には関係ない。これからも油断せず精進していくだけだ。




ギィ………
ウェスタンドアを押し開けて初めて入る中階層アベレジの酒場。
何件かある酒場のうちドラゴンズアイの店主ドランの友人が開いている店を選んだ。
昼間っからそこそこの客が居て、三人の女中が元気よく店内を動き回っている。
なんとなく明るくていい雰囲気だ。


だが今日のメインはこの酒場で酒を呑むことではない。


「…………」


酒場の一角に設けられた掲示板には羊皮紙が所狭しと貼り付けられている。
そこに書かれていることは


【人を探しています】【短期アルバイト、簡単、肉体労働】【一日ボディーガード、腕に自信のある男性一名】


つまり、この酒場は様々な仕事を斡旋しているわけだ。
それぞれの仕事は直接クライアントと交渉。酒場はその仲介的な所を補っている。

「見ない顔だな、仕事探しか?」


羊皮紙を見て回っていると眼帯をした赤褐色の筋骨隆々の大男が声をかけてくる。


「ああ、中階層アベレジに来たばかりなんだ。今日はどんな仕事があるか参考までにな」
「俺はここのマスターのゴンドだ。仕事する時は気軽に声をかけてくれ」


そう言って酒場のマスターであるゴンドは持ち場に戻る。
剣闘士をやっているとは言え毎回試合があるわけではない。奴隷剣闘士と違い商品価値のある剣闘士は時には出し惜しみされる。
その間食いっぱぐれないようにとこうやって仕事を斡旋してくれる酒場を探していた。
しかし本当に色んな仕事があるな………家に迷い込んだ猫の飼い主探しなんて仕事もある。
とりあえず今張り出されている仕事をある程度見て回った後、仕事のセオリーや怪しい依頼の危険性などマスターに聞いて回った。



後日俺は酒場で仕事を一つ請け負った。
仕事内容は財布を取り戻すこと。依頼主の家に泥棒が入り、いくつか貴重品が盗まれた。
盗まれた貴重品の中に死んだ母の遺品である財布が混じっており、取り戻してほしいという物だった。



「旦那調べてきやしたぜ、ヒヒヒッ」


闘技場で出会った予想屋のスニッフに受けた仕事の話を零すと、アテがあると言って調べてくれた。
引き笑いに卑しいすきっ歯の笑みで揉み手をしながらスニッフが調べてきた情報を教えてくれる。


「相手はちょいと質の悪い四人組の盗賊ですね。財布を盗まれたって人物が、盗まれた現場に居合わせなくて良かったでげすよ。居合わせれば確実に殺されてたです、ヒヒヒッ」


依頼人の財布を盗んだ盗賊団は余罪があるらしく、強盗殺人などで賞金が掛けられている。


「ここいらのそういった顔役も排除を検討しているみたいですから、旦那が暴れても感謝されども文句は言われないですぜ、ヒヒヒッ」


そう言ってスニッフは無言で手を出す。俺は硬貨を数枚手渡す。


「ん~~、ゼニの匂いはいつ嗅いでも飽きやせんねえ~~」


スニッフは手渡された硬貨をその特徴的な鉤鼻で嗅ぐ仕草をする。


「奴らのヤサは下階層ボトムにある廃屋の一つでさ。盗品も多分そこに溜め込んでやすぜ」


スニッフから盗賊団のアジトを聞けば、件の下階層ボトムの廃屋へと向かう。
遠くから伺えば今にも倒壊しそうな廃屋なのに武装した男性が二名見張りをしている。


俺は大剣を担ぎながら廃屋へと向かう。見張りがこちらに気づき進行方向を塞ぐように立つ。


「こんにちわ、死ね!」
「はっ?」


進行方向を塞いだ男に挨拶と同時に腹部へ前蹴りを御見舞する。
俺の不意打ちを受けた男は吹き飛び、廃屋のドアにぶつかり、老朽化がひどかったのかドアは破れ足だけがドアの外にだらんと出ている。


「なっなん………」
「遅いっ!」


鞘に入れたままの大剣をフルスイング。もう一人の見張りはくの字に折れて、剣越しに相手の腕かどこかの骨が折れた感触が伝わった。


「くそっ! 敵襲だ!!」


壊れたドアを破壊して剣を抜いた男が敵襲だと叫びながら顔を外に出す。


「もう少し警戒しろ」
「ゲペッ!?」


ドアから飛び出してきた男目掛けて大剣を唐竹割りに振り下ろす。
ドアから出た頭部が綺麗に割れて倒れ、一白間を置いて思い出したように血が地面に染み広がっていく。


「しねええ!!」
「おっと」


頭部を割られた男を踏み越えて剣を脇腹に添えるように固定して突っ込んでくる。
俺は一歩横にずれて突撃を回避しながら足払いを試みる。


「うわわっ!?」


勢い良く飛び出した男は俺の足払いを受けて顔面から転倒する。
起き上がろうとするが、俺は男の頚椎部分を狙って足で踏み潰す。
ゴキリと太い木の枝が折れた音と感触が足に伝わり、踏み潰された男は動かなくなる。


俺に蹴られてドアを突き破った男に止めを刺して廃屋に足を踏み入れる。
廃屋内では盗品と思われる調度品、先程まで飲み食いしていたのか飲みかけのワインや食べさしのパンや肉が散乱している。


「コイツが依頼品の財布か?」


無造作に山積みされている調度品の中から依頼主に聞いた財布を見つけ出すと警備隊に報告する。


依頼人からの報酬と盗賊に掛けられた懸賞金を得ることができた。
その金でゴンドの店で派手に飲み食いする。酔った勢いもあって店に居た他の客にも酒を奢って大宴会となった。

          

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