slave sword fighter and a sword of destiny

パクリ田盗作@カクヨムコン3参戦中

第5話



警備兵に両腕を持って連行される俺。
時たま下階層ボトムで見かける光景だったがまさか俺が当事者になるとは………


トロワとの試合を終えて興奮冷めぬ体で闘技場を出た所で問答無用で警備兵達に囲まれ拘束された。
連行されたのは下階層ボトム警備兵詰め所。
奥に運ばれ両手両足を拘束され問答無用で拷問が始まる。
警備兵の持った棍棒が問答無用で俺の体に振り下ろされる。


「吐け! おまえがやったんだろ!」


吐けと言っても何のことかわからない。身に覚えのないことで責められる。


「何のことだ! 俺はさっきまで試合をしていたんだぞ!!」
「言い訳するなっ! 素直に吐け!!」


俺の意見は聞き入れられず、何の罪かも説明せずただ暴力を振るわれる。


俺は数人がかりで一時間近く暴行を受け続けた。


「おら、さっさと出て行け!!」


その後、無言で拘束を解かれ投げ捨てるように警備詰め所から追い出される。
俺と交代に人相の悪い男が警備兵に拘束されて詰め所の奥へと入っていた。
真犯人が見つかり無罪放免と言ったところか。


体中が痛む。
奴隷というだけで疑われ、運が悪ければ罪をでっち上げられる。
俺は闘技場所属の奴隷剣闘士だったから罪をでっち上げるわけにはいかず無罪放免となったらしい。


俺は憎しみの感情ではらわたが煮えくり返る。


「何だその目は? さっさと消えろ! ぶっ叩かれたいのか!!」


入り口にいた警備兵が睨む俺の姿を見てツバを吐きかける。


理不尽な物言い。
これも俺が奴隷だからだ。
この理不尽を跳ね除けるには上に上がり続けるしか無い。
奴隷というだけで理不尽に扱われる立場から抜け出るには自分の力で栄光を………光を掴むしか無い。


怒りで握りしめた拳。
この痛みを忘れはしない。


雑居部屋に戻れば心配そうにこちらを見つめる者、運がなかったと嘲笑う者、次は我が身かと嘆く者が居た。


俺は無言で鍛錬用の重りを付けた木刀を持つ。
剣闘士なら養成所という場所で教官という戦闘のプロに戦闘訓練をつけてもらえる。
だが奴隷剣闘士は養成所の立ち入りさえ許されていない。
憐れに殺される奴隷剣闘士を見て喜ぶ観客もいる。死ぬ者に訓練はいらないからだ。
だが真似事でも体を鍛えれば、棒きれでも素振りを繰り返していれば何かは違うはずだ。


だが俺以外の奴隷はなにもしない。
どうせ死ぬから、運が良ければ生き残れる………そんな考えが俺以外の奴隷たちに蔓延しており自ら生き残る努力をしようとするものは居ない。


素振りを繰り返す俺を他の奴らは冷ややかな目で見ているが、俺は気にすることはない。


俺にはこの体しかない。ならば体を鍛え上げるのみだ。
これで明日の命と未来が手に入るのならば苦ではない。


今日も闘技場の檻が上がる。
振り返ることは許されない。
歩みを進めると後ろで檻が閉まる音が響いた。
乾いた空気、観客席から注がれる様々な視線。


そして、俺の前に今日の敵が立つ。


「ふふっ………君が最近噂のツイてる奴隷か」


今日の対戦相手は帝国兵剣闘士。いつもの帝国兵と違いマントを羽織っている。


確かマントを羽織っているのは騎士階級の貴族だったと聞いている。
相手をよく観察すれば鎧も今まで戦った帝国兵剣闘士より質がいい。
顔を晒しており、見下すような笑みを浮かべてこちらを見ている。


頭の防具はつけないタイプか、視界が狭くなると言って着用を嫌う剣闘士もいる。
もとより奴隷剣闘士の俺にはそんな豪華な防具なんて無い。


「ここまで勝ち続けた事は純粋に凄いと思うよ。うん、君はツイてる」


対戦相手は余裕を見せつける仕草で話しかけてくる。


「でもザーンネン。君のツキもここまでだよ、この僕が身分の違いというものを教えてあげるよ。奴隷は奴隷らしく泣き叫んで命乞いして憐れに殺されるべきなんだよ! 観客もそれを望んでいる!」


そう言って観客側にパフォーマンスする。観客達はマントを付けた帝国兵の口上に同意する。中には否定的な意見を述べる者もいるが歓声にかき消される。


こういう発現には慣れている。
俺達は【こういうのを】バネにできる。


「この奴隷のツキも今日までだ! このダントーイン帝国、ラング騎士団のジュンベルト様の手で地面に平伏すことになるっ! 今日がこの奴隷の命日だ!!」


目立ちたがりであろうこいつに観客席からまばらだが拍手と歓声が送られる。
パフォーマンスで観客の心を掴む剣闘士もいると聞いたが………こいつのパフォーマンスは微妙のようだ。


「こんなやつぶっ殺しちゃえばぁ?」


マミが俺の側でボソリと呟く。
基本中立であるはずの司会進行役が言っていい言葉なのだろうか?
立場は中立だが、本音は違うようだ。


「さあ、試合開始ですっ!」


マミの開始の合図とともに剣を握り込み駆け出す。


「はっ!」


ジュンベルトは迎え撃つように剣を繰り出す。
闘技場に剣がぶつかり合う音が響く。その音を聞いて観客のボルテージが上がり歓声が響く。


ジュンベルトの剣戟はとても読みやすい。
フリツに教えて貰った剣術の基礎に沿った順番で攻撃を繰り出していく。
切り込み方も受け方も教科書に沿った動きのみを行う。
実戦経験の乏しい俺でも次の動きが読めてしまう。
それに俺が今持っている剣は軽い。必要以上の速度で剣戟を繰り返す。
訓練で重い負荷をつけて素振りを繰り返した成果が出ている。


「ぐっ!?」


時折俺の攻撃を受けそびれて軽症を負うジュンベルト。
傷を負う度に焦りが増し、更にミスを犯して傷を負う。

俺はまだ無傷で余裕もある。
ジュンベルトは起死回生を狙う一撃を行うが、基本に沿った動きしかできないのか次に同攻撃するか相手に知らせるような仕草をしてしまう。


一騎打ちは二人のスピード感の違いが勝敗の差になる。


俺は二手三手先を読んで攻撃を繰り返す。
ジュンベルトは今この瞬間の攻撃を必死に読んで防ぐのが精一杯のようだ。


「ぎゃああああ!!」
「おおっと! ジュンベルト選手剣を弾かれた上に腕から出血だーー!」


ジュンベルトの剣を弾くと同時に篭手で守られていな部分を傷つける。
深く切り裂いたのか派手に血が飛び、血を吸った砂が赤く染まる。


「ギルバード選手どうする? さあどうする! とどめか? とどめか?」


マミの解説に観客が急に盛り上がり闘技場に歓声が響き渡る。
闘技場の勝敗はどちらかが戦意がある限り試合は続行される。
奴隷は負ければ必ずといっていいほどほぼ殺され、有名な選手になるほど協議進行会などが保護し死を免れる。


判決を下すのは観客だ。
戦意のない者、盛り上がりに欠ける者、そして観客に嫌われる者は生き残る確率は低い。


「殺せ!」
「とどめを刺せ!」
「大口叩くんじゃねえ!!」


観客の罵声が俺を後押しする。
こんな感覚は初めてだ。


「たすっ………助けてっ! こんなに強いとは………歯が立たないっ………」


出血する腕を抑えながら怯え恐怖で歯をガチガチと鳴らしながら命乞いするジュンベルト。
さっきまで余裕で見下していた目だったコイツは、いまや憐れな命乞いをする弱者だ。
観客達は口々に殺せと叫ぶ。死刑執行人役を俺にヤラせるつもりだ。


「むふふふ」


期待に満ちた目でマミが俺を見つめる。
俺は無言で剣を掲げあげ………


「ふんっ!!」
「ひぎっ!?」


俺は命乞いするジュンベルトの顔すぐ横に剣を突き立てる。


「命は取らない。俺の勝ちでいいな」
「…………」


ジュンベルトから返事はない。
よく見れば気を失っている。それどころか………


「オイ見ろよ! アイツ気を失いながらションベンチビッてるぞ!」


目ざとい観客の一人がジュンベルトが気を失って失禁しているのを指摘する。
会場内にどっと笑いが木霊した。

          

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