魔法適性ゼロの俺がおくる学園生活

櫂真

決闘再び

  生徒会長に呼ばれてから数日、伯はほんとに何も無く普通の日常を満喫していた。デュエルのおかげで、龍平たち以外にも話せる人も増え、仕事も何も入ってこず、普通の学生のような日を過ごす。授業を受け、放課後は友人達とどこかの店に入り、買い物をしたり、お茶をしたりして楽しく時間を過ごしていた。特筆することではないのだが、こんな普通の日常こそ伯には足りなかったものなのだ。


 「え?デュエルですか?会長?」
 「ああ、そうだ。君の本気の力を少し見てみたくてね。生徒会長として、君の実力を把握したいんだよ。」
 今、伯は士道に呼ばれ、生徒会室に来ていた。なんでも、伯の戦闘能力を見たいらしい。
 「別にいいですけど、僕の力を口外しないこと。人を呼ばないこと。データとして残さないこと。この3つを守ってくれるなら構いませんよ。」
 「そうか、でも1ついいか?」
 「ん?なんですか?」
 「戦うのは僕じゃないんだよ。」
 「え?それはどゆことですか?」
 「僕は戦闘にあまり向いてなくてね、副生徒会長とやって欲しいんてだよ。」
 「な!?それは少し無理ですよ。そしたら僕のことバれるかもですし、不安要素を産むのは…」
 「あ、大丈夫だよ!副生徒会長は君の秘密知ってるから!」
 「へぇ、そうなんですか。じゃぁだいじょ―え?ええ!!?なんで、知ってるんですか!?」
 「いや~伯君は反応が楽しいな~。からかいがあるよ。」
 「な、なんだからかってたんですか。心臓に悪いですよ。」
 「いや、ほんとに副会長は君の秘密知ってるよ。」
 「まじすか…。」
 「まじっすよ。」
 「理由をお願いします。」
 「いや、伯君は不思議じゃなかったのかい?僕が1日であれだけの情報を調べるなんて。」
 「た、確かに変だなぁって思いましたけど。まさか―」
 「正解~。生徒会長と副生徒会長、そして書記の3人で調べたからなんだよ。」
 「やっぱり、そうで…。ん?なんで、書記とか1人増えてるんですか!?」
 「まぁまぁ。僕含め3人とも誰にも口外しないって約束してるし、信頼ほしいなぁ。僕が保証するから。」
 「はぁ、もういいです。知られてしまったのは仕方ないですし、気にしませんよ。それで話戻してもらっていいですか?」
 「あ、そうだね。んで君の実力を見たいから、副生徒会長と戦って欲しいんだよ。」
 「はぁ~、めんどくさいけどいいですよ。どうすれば?」
 「今週末に、生徒会室来てくれ。僕含め3人いるから。」
「了解です。」


 週末になり、伯は生徒会室前に来ていた。
 予定時間より早く来てしまったため、耳にイヤホンをして時間を潰す。早く終わらせて、シャリアや姫に会いたいなぁと思っていると、3人の人影が見えてきた。伯はイヤホンを外し、3人の元に向かう。
 「お疲れ様です。」
 「おお、伯君早いね。では、移動しようか。」
 「どこに移動するんですか?」
 「ん?僕の家」
 「え…?」
 「だから、桜田家に行くの~。そっちの方がバレないし、安全でしょ?」
 国家機密並の情報をわずか半日で手に入れた奴らに言われても納得出来ないのが、伯に発言権はなく、速やかに桜田家に移動させられる。
 外には大きな高級車が止まっていて、これに乗るらしい。
 座る順番としては右奥に伯、その隣に士道、伯の前にごつい男性、その隣にメガネをかけた女性の順番だ。
 なんとも言えない異様な雰囲気であったが、士道が口を開く。
 「なんだまぁ、折角だし自己紹介でもするか。伯の事はここにいる全員が知ってるから別にいいか。優汰からしようか。」
 士道がそう言うと、短髪の男子生徒が顔を伯の方へ向ける。
 「初めまして、石田 優汰だ。よろしく。学園では副生徒会長をやっている。」
 それに続いて、眼鏡をかけた女子生徒も自己紹介を行う。
 「福沢 莉音です。生徒会書記をしています。」
 2人とも簡単に自己紹介を終わらせる。
 その後たまた、士道が話を始める。
 「さて自己紹介も終わったことだし、今日のことについて話そうか。今日は、優汰と伯君にデュエルしてもらう。ルールはこの前伯君がやってたやつと変わらない。魔装してもらって、その耐久値がゼロになった方が負け。いいかい?」
 「会長、1つお願いしたい事があるんですけど。」
 「なんだい、伯君?」
 「これのデュエルは僕の実力を見るために行うんですよね?」
 「うん。まぁ、そうだね。」 
 「だったら、僕の魔装はいらないです。あ、決して先輩を馬鹿にしてる訳じゃないですよ。魔装無くても倒せるとかじゃなくて、魔装あると本気だせないんですよ。」
 士道、優汰がはぁ?、と訳がわからないと言った顔をする。
 「いや、確かに先輩たちの言いたいことは分かります。魔装は、自分の体を魔力で包んで身体能力や魔法の技術を向上出来ますが、僕はそうならないんですよ。」
 「はぁ、そうなんだ。優汰いい?」
 「俺は構わない。久しぶりに全力で戦えるのが、楽しみだ。よろしくな、綾野。」
 「さてさて、そろそろ着くよ。ようこそ、我が家へ。」
 伯は外へ目を向けると、そこにはバカでかい門と見事に連なってる塀があった。
 さすがは、理事長の孫。規格外の大きさだ。
 車の外に出るとこれまたでかい家がそびてたつ。
 伯は、はぇ~と口を開けているが、優汰や莉音は慣れてるのかスタスタと中に入っていく。
 迷路の様な家の中を進み、闘技場にたどり着く。家の中に闘技場があるなんて、規格外のオンパレードだ。
 伯と優汰は更衣室に向かい、着替え、デュエルの準備を行う。士道、莉音は別室に行き二人の戦いを観戦、測定する準備を行う。士道と莉音はただ単純に、伯の実力を把握したいだけであり測定したものを漏洩しないことを約束し、伯が認めた。そんなことしなくても、大丈夫だろうと伯は思っているが念のためだ。
 伯がナイフを二本腰にしまうと、優汰が
 「本気でかかって来いよ。この学園でまあまあ、強い自信がある。五本指には入る気がする。まあ、今年の一年の実力を知らないんだがな。だから、お前と戦うのが楽しみで仕方ない。よろしく頼む。」
 「戦うのが楽しみなんて、中々珍しいですね。ただ、戦いなんてやってもいい気がした気なんて生まれて一回もないですけどね。」
 伯は一瞬、悲しそうな顔をする。
 「あ、僕にも名前ありますから、伯って名前で呼んでほしいです。お前じゃなくて。」
   優汰は一瞬、呆けた顔をする。が、ふっと笑みがこぼれる。
 「じゃあ、よろしくな。伯」
 「よろしくお願いします。優汰先輩。」




 二人は闘技場内に入り、向かいあう。闘技場の窓越しに士道が腕を組み壁に背もたれながら、莉音はびしっと、直立し観測用のタブレットを見ながら、観戦するらしい。
 伯はナイフを構え、優汰はファイティングポーズをし機械音がなる。
 「3、2、1、パアーン」
 ここに非公式のデュエルが始まる。



 ブザーが鳴り響いても、お互い攻めずにゆっくり円を書くように動いている。
 「どうした伯?攻めてこないのか?」
 「何、言ってるんですか。カウンターめっちゃ狙ってますよね。」
 優汰は素手で構えているが、とても気を張っておりむやみに攻撃しよう物ならカウンターからの速攻で打撃を食らってしまうのは目に見えていた。何とかして、隙を探しているが見つからない。
 「来ないのならこっちから行くぞ!」
 優汰は左足のバネを使い、体勢はそのまま、まるで平行移動しているかのように伯の間合いに入り、右拳を顔面に向かって振るう。
 とっさの動きに伯は両手を左側に持っていき、ガードする。しかし、それでも防ぎ切れず、吹っ飛び壁に背中から勢いよくぶつかる。
 そのまま、優汰は伯を追い、もう一度拳を振るう。
 が、伯も2度は食らわない。優汰が腕を振り上げて開いた空間に前転し、回避。ナイフを持ってる手を大きく振り回し、体の前へ戦闘準備に入る。
 「おいおい、伯。俺はまだ魔法使ってないぞ。これからだぜ。」
 「まじすか。これが素でできるって。なんか、やってますよね。」
 「親父の道場でな。それに家の親族は何かしら武道だったり、格闘だったり何かしらやってるだよ。昔からしごかれたからなっ!」
 再び、優汰が攻めに行く。最速で放たれる殴り、蹴り、体を上手に使い無駄なく攻めていく。
 勝人の時とは違い、剣ではなく拳。だからこそ、速さが違う。
 伯は1度大きく下がり、ナイフをしまう。
 「なんだよ、伯。降参か?」
 「そんな訳ないですよ。先輩素手なのに、僕がナイフ使うなんて、ずるくないですか?僕も素手で行きます。」
 「そんなんでいいのか。お前の得意の魔法を吸収出来ないんじゃないか?」
 優汰の言葉を無視し伯もファイティングポーズをとる。
 伯は魔装しておらず、フィジカルでは圧倒的に劣る。
 だが、出している気迫はより大きくなり、闘志もまだまだ、熱く燃えている。
 そんな伯を見て、優汰はさらに攻撃を加える。
 伯は優汰の攻撃に慣れてきたのか、繰り出させる、拳、蹴りをすべていなし、交わしてく。
 (ふっ、予想通りだな。やはり、この前のデュエルの様に交わしにきたか。)
 優汰は勝人と伯の試合を見て、伯は攻撃を交わし、いなし、カウンターを狙うタイプでないかと思っていた。
 だから、まだ1度も使ってない。
一撃で狙う掌底。
 優汰は殴り、蹴りこそすれど、1番得意で、確実に仕留める掌底を出さずにいた。それも身体強化の魔法を使い、一撃で仕留めるつもりだ。
 また、伯が礼儀正しく、きちんとデュエルするなら、こちらに合わせてナイフをしまう事を予想していた。いつもつけている魔装、両手、両足につけているアーマーを外してまで素手で戦かった甲斐があったものだ。
 (士道や莉音には悪いけど、久しぶりの好敵手。全力で潰しに行くぜ。)
 掌底を右の腹部に当てるため、上下に攻め、体の真ん中に意識が行かないようにしてきた。
 そして、優汰はまた右拳を振りかぶり顔を狙うように目線も当てる。
 伯が顔を守るように、両手を左側へ。
 (貰った!)
 
 身体強化フィジカルエンフォースを使い、渾身の掌底が決まる
…はずだった。
出された右手は伯の左手で下に弾かれ、優汰は顔から前に崩れる。
 そして、顔の前には伯の右手が見えた。
 (あ、ヤバっ)
 伯の掌底が優汰の顔に決まる。
 魔装で守られてるとは、かなりのダメージだ。
 そのまま、後頭部から大きく床に打ち付けられる。
 魔装の耐久値こそ残っているが、優汰は気絶している。
 伯のたった一撃で勝負は決まった。


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 お久しぶりです。櫂真です。
今回、2回目のバトルシーンなんですが、人と殴りあったりしない、超平和に過ごして来た人間なので、めっちゃ時間かかりました…
バトルシーンムズいです…。
来週、大学の期末試験なのですが勉強する気湧かないので、こっちがはかどる…
色々頑張ります…
さて、ここら辺で。
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