とある素人の完全駄作
7話 地獄の野郎だな
『一方通行』
学園都市に7人しかいない超能力者の中でも、突き抜けた頂点と呼ばれる男。『運動量・熱量・電気量など、体表面に触れたあらゆる力の向きを自在に操る』能力はまさに最強に相応しく、彼自らが手を下すまでもなく、ほとんどの相手は己の攻撃を反射されて自滅する。しかし、世界中の軍隊を相手にしても生き残れる程の能力を持ってなお、彼は『最強』の先、『無敵』を求めていたーーー
ある日の午後8時頃、彼はコンビニへ向かった。気に入った銘柄の缶コーヒーを爆買いして連続して飲み、飽きたら違う銘柄に移る。そんな独特な日課のための缶コーヒーを買いに行くところだった。コンビニまであと少し、といったところで曲がり角を曲がる。その直前、
「おあああああああっ!?」
誰かの悲鳴が間近で聞こえる。不審に思った一方通行に、何者かが頭突きをする。瞬間、『反射』が働き、謎の襲撃者が倒れる。最強の名を欲した者たちに襲撃される事が日常茶飯事である一方通行。いつも『反射』によって敵は自滅する。そしてその時、第1位を見るその目には、恐怖や後悔、敵意などが宿っている。それが当たり前。しかしこの時、一方通行の足下で痛みに動けなくなっている少年の目には、恐怖も後悔も敵意も宿っていなかった。
(ンだァ、こいつは? 敵意を感じられねェ)
『敵意が無い』と、『敵意を完璧に隠して感じさせない』は全く違う。そのどちらかを判断しかねた一方通行は警戒しつつ尋ねる。
「ンだァ、オマエ?」
それが、のちに超能力者第3位を追い詰める怪物と、一度超能力者第3位を追い詰めた怪物の出会いだったーーー
「ぇ......?」
顔を上げた前田の視線と、彼を見下ろす怪物の視線がぶつかる。大抵の人間は学園都市最強の姿を見ただけで畏縮する。しかし、前田はそんな『普通』から大きく外れた行動をとる事が『普通』の人間。それは今回も例外ではなくーーー
「何って、昼間に友達が家に来て、元々切らしかけてた飲み物全部出しちゃって夜中にコンビニに買いに向かってたら突風でバランス崩してバナナの皮踏んで転んだ、間抜けな奇能力者だけど?」
無駄に詳細な説明を聞いた第1位の顔色が変わる。
(奇能力者だァ?)
再び尋ねる。
「っつーこたァ、オマエが絶対支配か?」
「そだけど、何? 俺の知ってんの?」
「一応なァ」
「そっか。俺もアンタの事知ってるぜー。『最強さん』だろ?」
「どンな覚え方してンだ、一方通行だ」
「俺は前田智也。っつっても、俺の名前なんぞ名乗っていらないか」
再び考える第1位。
(どォやら、本当に襲いにきた訳じゃねェみてェだな)
そして彼はコンビニへ向かう。と、気配を感じて振り向くと、前田がいた。頭悪そうにボーッとした表情で歩く少年を見て一方通行は、
(絶対支配? こいつが......?)
と、眉根を寄せる。
そして同時に同じ店に入店し、各々がコンビニで買い物、同時に店を出る。打ち合わせでもしたかのように揃ったタイミングのついでだろう。一方通行は前田に声をかける。
「おい、絶対支配ってのは、あらゆるエネルギーを操れるンだよな?」
「?、そうだけど?」
「前にオマエの能力の噂を聞いた時から、その能力者と戦ってみてェと思ってたンだ。オマエ、俺にちょっと攻撃してみろ」
「......はい?」
「教えてくれよ、絶対支配ってェのが、どンなモンなのかよォ」
数秒かけて目の前の男の言葉の意味を咀嚼し、理解した前田。彼が返した言葉は
「マジで言ってんのかアンタ、地獄の野郎だな」
「......あァ?」
怪訝な顔をする一方通行。そんな怪物に向かって、前田は珍しく声を張り上げる。
「だってそうでしょーがよ!! アンタ触れたものの向き全部操れんだろ!? しかも何もしなくてもオートで反射するんだろ!? そんな奴に攻撃しかけろってか!? アンタノーダメージ俺大ダメージが目に見えてんだよ!! いや大ダメージじゃねぇわ死ぬわ!! 俺が!! 無理ゲーどころか敗北固定イベントじゃねぇかよ!! そんなのクソ食らえだよ!! 〇んこ召し上がれ!!」
「......オマエそれ丁寧に言ってるつもりか知ンねェが、余計に汚く聞こえンぞ」
「お黙り! 大っ体オートで反射とか、んなチートスキルーーー」
前田の言葉が途切れ、同時に何かが思考の端に引っ掛かる。
(......待てよ、こいつの能力の本質は『ベクトル変換』であって『反射』ではない。つまり、こいつの『反射』ってのは『弾き返す』事じゃなく、『真逆に向ける』事になる。そう考えるとーーー)
急に黙った前田を不審がる一方通行。
「......?、 おい?」
呼び掛けてみるも、反応はない。ただ、ブツブツを何かを呟き続ける。
「運動を位置に変えて......『反射』があるから熱と電気と音と光には意味がないから使わなくていい......いや音は使えるな、壁の位置を測るのに使える......ならあとは......」
ふと、呟きが途切れる。顔が上がる。その顔を見た一方通行は目を見開く。そこにはもう、さっきまで第1位の発言にツッコミを入れていた騒がしい少年はいなかった。そこにいたのは、自分が存在する空間の中で全てを絶対的に統べる支配者だったーーー
「戦ンのか?」
白い怪物の言葉に、黒い支配者は短く答える。
「うん」
と。
学園都市に7人しかいない超能力者の中でも、突き抜けた頂点と呼ばれる男。『運動量・熱量・電気量など、体表面に触れたあらゆる力の向きを自在に操る』能力はまさに最強に相応しく、彼自らが手を下すまでもなく、ほとんどの相手は己の攻撃を反射されて自滅する。しかし、世界中の軍隊を相手にしても生き残れる程の能力を持ってなお、彼は『最強』の先、『無敵』を求めていたーーー
ある日の午後8時頃、彼はコンビニへ向かった。気に入った銘柄の缶コーヒーを爆買いして連続して飲み、飽きたら違う銘柄に移る。そんな独特な日課のための缶コーヒーを買いに行くところだった。コンビニまであと少し、といったところで曲がり角を曲がる。その直前、
「おあああああああっ!?」
誰かの悲鳴が間近で聞こえる。不審に思った一方通行に、何者かが頭突きをする。瞬間、『反射』が働き、謎の襲撃者が倒れる。最強の名を欲した者たちに襲撃される事が日常茶飯事である一方通行。いつも『反射』によって敵は自滅する。そしてその時、第1位を見るその目には、恐怖や後悔、敵意などが宿っている。それが当たり前。しかしこの時、一方通行の足下で痛みに動けなくなっている少年の目には、恐怖も後悔も敵意も宿っていなかった。
(ンだァ、こいつは? 敵意を感じられねェ)
『敵意が無い』と、『敵意を完璧に隠して感じさせない』は全く違う。そのどちらかを判断しかねた一方通行は警戒しつつ尋ねる。
「ンだァ、オマエ?」
それが、のちに超能力者第3位を追い詰める怪物と、一度超能力者第3位を追い詰めた怪物の出会いだったーーー
「ぇ......?」
顔を上げた前田の視線と、彼を見下ろす怪物の視線がぶつかる。大抵の人間は学園都市最強の姿を見ただけで畏縮する。しかし、前田はそんな『普通』から大きく外れた行動をとる事が『普通』の人間。それは今回も例外ではなくーーー
「何って、昼間に友達が家に来て、元々切らしかけてた飲み物全部出しちゃって夜中にコンビニに買いに向かってたら突風でバランス崩してバナナの皮踏んで転んだ、間抜けな奇能力者だけど?」
無駄に詳細な説明を聞いた第1位の顔色が変わる。
(奇能力者だァ?)
再び尋ねる。
「っつーこたァ、オマエが絶対支配か?」
「そだけど、何? 俺の知ってんの?」
「一応なァ」
「そっか。俺もアンタの事知ってるぜー。『最強さん』だろ?」
「どンな覚え方してンだ、一方通行だ」
「俺は前田智也。っつっても、俺の名前なんぞ名乗っていらないか」
再び考える第1位。
(どォやら、本当に襲いにきた訳じゃねェみてェだな)
そして彼はコンビニへ向かう。と、気配を感じて振り向くと、前田がいた。頭悪そうにボーッとした表情で歩く少年を見て一方通行は、
(絶対支配? こいつが......?)
と、眉根を寄せる。
そして同時に同じ店に入店し、各々がコンビニで買い物、同時に店を出る。打ち合わせでもしたかのように揃ったタイミングのついでだろう。一方通行は前田に声をかける。
「おい、絶対支配ってのは、あらゆるエネルギーを操れるンだよな?」
「?、そうだけど?」
「前にオマエの能力の噂を聞いた時から、その能力者と戦ってみてェと思ってたンだ。オマエ、俺にちょっと攻撃してみろ」
「......はい?」
「教えてくれよ、絶対支配ってェのが、どンなモンなのかよォ」
数秒かけて目の前の男の言葉の意味を咀嚼し、理解した前田。彼が返した言葉は
「マジで言ってんのかアンタ、地獄の野郎だな」
「......あァ?」
怪訝な顔をする一方通行。そんな怪物に向かって、前田は珍しく声を張り上げる。
「だってそうでしょーがよ!! アンタ触れたものの向き全部操れんだろ!? しかも何もしなくてもオートで反射するんだろ!? そんな奴に攻撃しかけろってか!? アンタノーダメージ俺大ダメージが目に見えてんだよ!! いや大ダメージじゃねぇわ死ぬわ!! 俺が!! 無理ゲーどころか敗北固定イベントじゃねぇかよ!! そんなのクソ食らえだよ!! 〇んこ召し上がれ!!」
「......オマエそれ丁寧に言ってるつもりか知ンねェが、余計に汚く聞こえンぞ」
「お黙り! 大っ体オートで反射とか、んなチートスキルーーー」
前田の言葉が途切れ、同時に何かが思考の端に引っ掛かる。
(......待てよ、こいつの能力の本質は『ベクトル変換』であって『反射』ではない。つまり、こいつの『反射』ってのは『弾き返す』事じゃなく、『真逆に向ける』事になる。そう考えるとーーー)
急に黙った前田を不審がる一方通行。
「......?、 おい?」
呼び掛けてみるも、反応はない。ただ、ブツブツを何かを呟き続ける。
「運動を位置に変えて......『反射』があるから熱と電気と音と光には意味がないから使わなくていい......いや音は使えるな、壁の位置を測るのに使える......ならあとは......」
ふと、呟きが途切れる。顔が上がる。その顔を見た一方通行は目を見開く。そこにはもう、さっきまで第1位の発言にツッコミを入れていた騒がしい少年はいなかった。そこにいたのは、自分が存在する空間の中で全てを絶対的に統べる支配者だったーーー
「戦ンのか?」
白い怪物の言葉に、黒い支配者は短く答える。
「うん」
と。
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