とある素人の完全駄作

もやし人間

4話 私の番よ!!


突如として吹き荒れた烈風に吹き飛ばされた美琴は、全力で磁力を操作して己の体勢を安定させた。それがもう少し遅れていれば、橋に激突して気絶しオチていただろう。
(ハッ! 黒子、初春さんに佐天さんは!? 皆、無事よね!?)
慌てて視線を動かす。その先には、美琴と同じ常盤台中学の制服を着たツインテールお嬢様と、セーラー服を着た黒髪ショートの少女、そして同じくセーラー服を着た黒髪ロングの少女がいた。どうやら黒子の空間移動テレポートで一度避難したようだ。
(よかった......)
ホッと安堵の息をつく美琴。そんな彼女たちの上空から。
「佐天さんらの周りには超音波と衝撃波でシールド造ってたんだけど、流石さすがは常盤台の大能力者レベル4風紀委員ジャッジメントだけあって、非常時における対応の速さが凄い凄い」
ハッとして声がした方を見上げる少女4人。その先に前田はいた。


背中から翼のように2本の竜巻を生やして。


((((なっ......!?))))
と、驚愕する美琴たち。それを一瞥いちべつした前田は、
「熱操作しイジって気圧変えれば、風くらい出せるさ」
適当な調子で言うと、


ドパッッッッッ!!!!!!!! と。


奇妙な音が響いた時には、美琴の背後を取っていた。
「後ろは振り向かない。そんな暇あったら全力で回避」
前田のフル加速アクセルのスピードを見て、そう考えていた美琴だが、あまりにも圧倒的すぎるスピードは回避さえも許さない。膨大な運動エネルギーが衝撃波という形で至近距離から放たれる。またしても上空に飛ばされる美琴。そして。
「いくらアンタでも、空中じゃ動けねぇよな」
そう言った前田が超高速で突っ込んでくる。そして。


ゴッッッッッッッッッ!!!!!!!! と。爆音が響く。軽く擦っただけでも甚大じんだいなダメージを負うであろう、必殺の一撃。『それ』をーーー


超電磁砲レールガンと呼ばれる『それ』を、美琴が空中で放った瞬間だった。


竜巻でギリギリその一撃を防いだ前田の体がグラリと揺れる。その間に美琴は磁力を操作。体勢を安定させ、無事に着地すると共に叫ぶ。
「今度は、私の番よ!!」
「いいね」
再び急降下する前田。回避さえも許さない、その絶対的なスピード。それを美琴は恐れない。待ち受けるように、挑むように、左足だけで立って右足の革靴ローファーの爪先で地面をトントンと叩く。少年の拳が膨大な運動エネルギーを宿し、その蒼拳ソウケンが破壊を振り撒くーーー


美琴の背後に、空間移動テレポートじみたスピードで回り込んで。


しかし、
しかし。
しかし!


回り込みと攻撃。その僅かなスキ間で美琴が動く。左足を軸に高速回転。体重と慣性を全て乗せた右足が風を斬る。前田にとっては予想もしなかった一撃。しかし美琴にとっては、いつもやってる事だった。ただ、相手が変わっただけ。
(まさか、人間相手に『この技』を使う日が来るとはね......!!)
その必殺技の名は!


『常盤台中学内伝、おばーちゃん式ナナメ45度からの打撃による故障機械再生法』
「ちぇいさーっ!」
というふざけた叫び声と共に、美琴はスカートのまま前田に振り向きざま上段蹴りを叩き込む。結果はーーー


側頭部にズドンッ!!!!
アメコミなら背景にSMASH!! とか書いてありそうな感じで。
前田の脳が、割と結構ガチめに揺れた。
その瞬間、前田の、黒子の、初春の、そして佐天の思考は、プロの合唱団さえも羨む程のシンクロを発揮した。
((((そういく?))))
そして、美琴のハイキックをクリティカルで喰らった前田の意識は、闇に落ちていったーーー

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