赤無島

蕎麦田 次郎

船内

8月12日14時15分

俺はレストランで冷たいコーヒーを飲んでいた。

かなり高そうなグラスに注がれたコーヒーだ。
俺はまるで金持ちになったかような気分だった。

俺はコーヒーを飲みながら名簿を見ている。

今レストランには従業員以外に俺を含め5人がいた。
恐らくこの5人はツアー参加者だろう。

二人はパスタを食している30代後半の夫婦だ。
名簿を見る限り、北本という名字の夫婦に違いない。二人は楽しそうに会話をしていて仲がいい事がわかる。

他には俺と同じようにコーヒーを飲んでいる男がいた。見た目は30代前半だが少し怖そうに見える。偏見かもしれないが、何か威圧的な感じがした。名簿を見るとこの男こそ宮川雄介だろう。このような男は苦手なので今後関わらないようにしたいと思った。

もう一人はオレンジジュースを飲んでいる若い女性だ。見た目は露出が多く、化粧もバッチリしている。20代前半に見えるが20代後半にも見える。名簿を見たがどの女性かは特定する事は出来なかった。


俺はコーヒーを飲み終わり、移動する事にした。夫婦は仲が良さそうで良かったが、他の二人に話しかけられたくなかった。

俺はレストランを後にして、あのチラシを俺に渡した観光ガイドを探す事にした。

甲板に出てみると外は快晴で気持ちが良かった。
甲板には30代前後のスマートな男が立っているだけで他には誰もいなかった。
ただ、外があまりにも気持ちよかった為、観光ガイドを探すのは後にして風を浴びる事にした。

最高の気持ちが良かったが、やはりあの観光ガイドが俺の名前を知っていた事が気になる。
知り合いでなければなぜ知っているのか?

考えても答えは出ない。

俺はやはり観光ガイドを探す為、船内に入り、レストランを抜けて廊下を歩いていた。

その時、見覚えのある男に声をかけられた。

よう兄ちゃん、元気か?俺は宮川雄介、よろしくな!

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