テトラポット

てら

逃亡



貝塚 一(カイヅカ ハジメ)(僕)
19歳  O型  7/4生  男


世界は目に見えない小さな事柄が
絡み合って存在する確実で不安定なモノである。
人と人の関わりもそうなのだと、そう思う。

   いじめはなぜ無くならないのだろう。
高校生の時、僕は結果的にいじめられていた。
「結果的に」という言い方に疑問を抱くかもしれないが、本当に初めはささいなイタズラのようなもので知らず知らずの内にそう発展していったのだ。
相手は身体が大きく力の強いリーダー的存在の奴とそいつが引き連れていた子分のような奴らが数人だった。
いじめられたという結果では無く、皆昔は友達でそういう奴らにいじめられたという事実が本当に辛かった。

「またいつか仲良くなれるのでは無いか?」

そう思っていた自分が居て初めはヘラヘラしていたが
いじめがエスカレートして行くと同時にSNSでは
「いじめられて何も言えない奴も悪い」
と、いじめられたことの無い奴がそれっぽく正論の様な事を投稿していて、またそれに反論の言葉が頭に浮かばなかった時、自分の中にあるナニカがバキッとヘシ折れた感覚を今だによく覚えている。

「逃げよう」

...とは咄嗟に思ったものの囲いの中で鞭打たれ続ける家畜のように逃げ方を全く持って知らなかった僕はビルの屋上まで上がって見たものの一歩踏み出す勇気は出ず足はすくみ

「なにも死ぬ事はない。遠い所へ行けば...命を無駄にするのは良くない。」

などと今さっきまでと考えを180度くるりと回して最もらしい理由をつけてそそくさと階段を降りた。

   いじめられる人間が果たして勉強や部活に精が出るのかと言うとそんな事はない。無論「なにくそ!」と奮起して努力して見返そうとする人間は存在するのだろうが幾分僕は意気地なしでナニカが折れてからは全くの無気力が続いていたのだ。

「逃げたい」

その願望とぶつけられる物の痛みが日々繰り返され結果僕は尊敬も蔑みもされない中堅の地方私立の理工学部の機械工学科へ高額の奨学金を心配する両親を振り切って入学し、一人暮らしをすることにしたのだった。

「ここは僕の事を誰も知らない。出来るだけ目立たず円滑な学園生活を送ろう」

と何も気にする必要のない場所でヘンテコに地元から引っ張ってきた臆病さを脚に絡めたまま僕の大学生活は幕をあけたのだった。

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