しょーかん勇者の魔界生活
いいことをすると気持ちがいいっ
翌朝、目が覚めて〈水魔法〉を使い顔を洗った。
俺が村長宅前で水を使っているようすに子供たちが集まってきた。
「うわーすっげー。まほうつかえるの?」
「あたしにも、お水かけてー」
ゴブリンの子供たちは魔法を見てはきゃっきゃと、はしゃいでいる。
「そうだ。お前たち、水を入れる桶のようなものを持ってくれば、水を入れてやるぞ」
そう言うと、きょとんとした顔で見つめてくる。
「えーっ、でもあたしたちお金ないよー」
「そんなもんいらないよ。タダでやるよ」
そう言うと子供たちは、家に帰りバケツのようなものを持ってきた。第一、金なんて俺も持ってないしな。というか通貨のようなものは一応あるんだな。
「おにいちゃん、持ってき たよー」
「おれ、のどかわいたから早くっ」
「あいよー」
子供たちに水をあげていると、親御さんたちが出てきた。
「あら、ケイトさん本当にいいんですか? 水をタダでもらうなんて……」
「いいんですよ。これくらい手間でもないですし」
そう言うと大人たち嬉しがっていた。村人に話を聞くと水は、少し離れた河川まで行って汲んでこなければならないようだ。日本育ちの俺には考えられないが昔の人もきっとそうしていたのだろう。
「「「おにーちゃん、ありがとうございました」」」
子供たちにお礼を言われた。しかし、ちょっとやりすぎたな。なんだかんだとたくさん水を出すことになった。
もしこれを村人全員にやっていたらキリがないな。それに村人のためにならないだろう。これからは軽はずみに人前でスキルなどを使わないほうがよさそうだ。
「ケイトさん、ちょっといいかしら」
後ろから声をかけられ振り返ると、さっきの子供たちのお母さんの一人だ。声をかけられ、俺は自宅へ呼ばれた。……これってアレかな。お金はないけど、お礼は私の体で的な展開!? でもゴブリンだしな。正直そういう目で見れない。
「あー、あったわ。これよこれ」
ゴブリンの奥さんが倉庫から取り出してきたのは首飾りだった。
「これ、うちの旦那が生きてた頃に旅で見つけたものらしいわ。なんだかよくわからないけど、あげるわ」
そう言って渡されたのは呪術で使いそうな怪しげな首飾り。
「えっ、でもこれ大切なものなんじゃ……」
「いい のよ。うちにあっても誰も使ってくれないしね。ケイトさんが使って」
「ありがとうございます。大切にしますね」
そう言って俺は、お守りの首飾り<即死スキル無効>を手に入れた。即死スキルなんて存在するのか。こわっ。だけどいいものが手に入った。たまには無条件でいいことをするもんだなぁ。
え? 地帯が外れたって? 俺は最初からこうなるってわかってたけどねっ!
俺は村長宅に戻り、ブラッドウルフ討伐の準備に向かおうとした。するとジェファーとブライアンが話しかけてきた。
「ケイト殿、村長から聞いたよ。ブラッドウルフの討伐にぜひボクたちも参加させてくれ」
「……たのむ」
ジェファーとブライデンは頭を下げてきた。わざわざ、下手に出て頼んでくるということ は、自分たちの力不足を自覚しているのだろう。
それでもなお、頼んでくるのだ。彼らも村のためにブラッドウルフを討伐したいという気持ちなのだろう。
「わかった。もし、お前たちに危険が迫ってもかばいきれる自信はない。自分の身を自分で守れないようなら途中で置いていかせてもらうぞ」
俺が承諾すると、彼らは嬉しそうに返事をした。
「あぁ、ありがとう」
「……感謝する」
それから俺たちは準備を整えて、いよいよ出発のときになり村人に心配されながら見送られる。
「村の人を悲しませないためにも必ず生きて帰ろう」
二人は俺の言葉にうなずき、南へ向かって薄暗い森の中に歩き出した。
【ジェファー 種族:子鬼族 職業:ゴブリン戦士Lv.4
装備:さび れた剣 ボロボロの盾
スキル: なぎはらい スラッシュ
称号:ゴブリンを率いるもの<集団行動が可能>】
【ブライアン 種族:子鬼族 職業:ゴブリン戦士Lv.4
装備:さびれた剣 ボロボロの盾
スキル: なぎはらい スラッシュ
称号:守護者<盾の熟練度小上昇>】
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