しょーかん勇者の魔界生活
プロローグ
「あちぃー」
辺り一面には砂漠が広がり、空には、霞んだ太陽が光を放ち、サンサンと照らしてくる。
「喉乾いたし、食い物もないとか辛すぎる」
気が滅入る思いだが必死に体を動かし、歩き続けた。
すると、足元の砂が何かに引きずられ、動いていることに気がついた。
すると、次の瞬間、地中から巨大なミミズのような生物が現れた。その先端には大きな口のようなものがついており、人間など簡単に丸呑みにされてしまうだろう。普通の人間ならばこの状況で逃げ出すはずだが、俺は違う。
「く、食い物だっ! 食い物が現れた」
極限まで空腹に耐えていたこの体も限界に近く、本来恐るべき魔物も食用に見えてしまう。
『いいえ、違います。これはサンドワームです』
そこで、どこからともなくツッコミを入れるのは、勇者サポートスキルのグラムだ。
「なんでもいいっ、サンドワーム! どうやら俺を喰いに来たようだが、相手が悪かったな。喰われるのはお前のほ……」
「キシャャャッ」
俺の言葉を最後まで待たずに大きな口を広げ、ものスゴイ速さで食らいてくる。
「おっと…。あぶねーなっ、んにゃろーっ!」
俺は、寸前でかわすと腰にさしている魔剣グラムを抜き、サンドワームに斬りかかる。
「うぉぉぉぉっ」
この一撃でサンドワームの口のある先端は大きな音を立てて、地面に落ちた。しかし、その胴体部分はそれでも動き、ケイトに襲いかかる。
「うぉっ、いってーじゃねーか。大人しく、昼飯になれっ!」
動き回る胴体部分をさらに切り刻み、サンドワームは絶命した。それから、サンドワームの死骸に手を触れた。
〈収納〉
『サンドワームの肉を手に入れました』
「おっし、じゃあお料理しますか。〈火魔法〉」
戦闘が終わり、やっとこさ食事にすることができる。ちなみに、偉そうに料理をすると言ったがただ焼くだけだ。
胴体部分のサンドワームの肉を火魔法で加熱し、火が通ったところで、かぶりつく。
「いっただきまーすっ! お、けっこううまいっ!」
醜い外見とは裏腹に、砂の中を移動しているだけあって、しっかりとした筋繊維でとても食べごたえがある。
「それにしても、魔物を狩って食料を手に入れるなんて生活、日本じゃ考えられなかったよな」
こっちに来て、しばらく経つがときどきこうして思い出すことがある。そう。あのときから俺の人生は変わった。
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