陰キャラな妹と陽キャラな幼馴染の仲が悪すぎるんだが
第19話 転校生再来(2)
   でもこれは、橘さんが百合かどうかを調べるという点ではありなのでは?
   ここは大人しくしようか。
   そんな俺の考えを他所に、訝しげな顔をしながら橘さんが。
「えっ、何この子。気持ち悪いんだけど。蒼眼よ、こいつは一体……!」
   なんか知らんうちに俺のあだ名がかっこいいものになってるんだが。
   気持ち悪いって双方同じ様なもんだろって言いたいんだが、黙っておこう。
  
「お前達仲良くしないか? その蒼いカラコンは俺には必要ないし、欲しいなら山田にあげて、そして山田を蒼眼と呼べばいいんだしさ」
「いいの!? ありがとう浩介! 今日ほど感謝したことはないと思う!」
   一応感謝してるつもりなんだろうけど、釈然としないなあ。
   嬉々としている山田を、奈落の底へ突き落とすかのように橘さんが告げる。
「あげないよ」
   シンプル且つ効果抜群。
   それまで嬉々としていた表情とは真反対のしょぼんとした顔をしている。
   やはりここは俺が止めに入るべき……、
「おいお前達! 昼食の時間が終わるぞ? さっさと食べようぜ!」
   明るく、そして先生のような口調でそう言ったのは、ここまでずっと静かだった志賀だった。
   唐突に大声出したのが恥ずかしかったのか、頬を赤らめている。
   志賀にだけ押し付けるのは申し訳ないか。
「そうだそうだ、ご飯食おうぜ! 志賀の言う通り後十分だ。橘さんも食べてないなら、一緒に食べよう」
「クックック……まぁいいけど、我が名は炯眼のワルキューレ! ワルキューレと呼んでくれて構わない!」
「「「「お断りします」」」」
   俺達に全否定され、しゅんとしている橘さ……中二病を見て少し可哀想に思う。
   それより気になっていることが。
「さっきから炯眼炯眼って、全然炯眼じゃなくね? 大きな瞳に可愛らしい顔立ちだし」
「蒼眼は女の子慣れしてるのかな? めっちゃ褒めてくるな。仕方ない、我の決め台詞を聞かせてあげよう」
   頼んでませんが。
   何故世の中こう上手くいかないんだ?
   そんな俺をよそに中二病が、
「ギラつけ炯眼! 滅ぼせ殲滅! ブレイク・ザ・ワールド!」
   うん、セリフが怖すぎ。
  
「次からその言葉やめようか。俺と志賀は意味分かってるからな? 物騒もいい所だぞ」
「でもかっこいいよね?」
   否定出来ない自分が情けない。
   男としてそのセリフをかっこいいと思わないわけないだろ!?
   分かってて言っているのであれば、こいつは天才だな。
   ……中二病ってかっこいいな。
  どうしよう、中二病になりたいという自分が生まれてきた。
「なあ、その蒼いカラコン、明日綺麗なのを俺にくれないか?」
「じゃあ我と共に中二病になるというのか、蒼眼よ!」
「ああ! なってやろうではないか、中二病に! さ、御教授願お」
「浩ちゃん!!」
   俺の言葉を遮るように那月が声を出す。
   どことなくキレている気がするが、何故か俺には分からなかったが、理由はすぐ分かった。
「中二病になんてなっちゃダメだよ!」
   こいつなりに考えての答えなんだろうな。
   確かに中二病にいい印象はないし、クラスでも浮いた存在になる。
   だけどさ、だけどもさ! 俺は一回も中二病体験してないんだから、したいじゃんか!
   続けるかのように那月が、
「叶美ちゃんがなんて言うかな?」
   少し目を細め、風が吹き髪がなびいている。
   ラブコメのヒロイン引き立て役の様な事を言う那月は、目尻に涙が浮かび上がっているように見えた。
   俺は幼馴染にこんな表情をさせていいのか?
   俺が叶美を好きになったから、那月がこういう表情をするようになったのか?
   それとも中二病になりたいという思いから、こうなってしまったのか?
「キーンコーンカーンコーン」
   俺の気持ちを遮るようにチャイムが鳴り響いた。
   五限目、いつもと変わらない授業だが、俺の頭の中は考え事でいっぱいだ。
   那月が開き直っている以上、このまま過ごしていけばいいのか?
   でも、中二病はやめて欲しいという願望があるんだよな。
   ……くっそ。
「分からねー事だらけだよっ!!」
「高梨うるせーぞ! 職員室呼び出したろうかあ!?」
「うっ……すみません……」
   クラスがクスクス笑う中、俺に笑顔は多分浮かんでないだろう。
   俺は悩んだ末、結論として叶美に相談するのが吉と考えた。
   授業終われ、授業終われ、授業終われ、
「授業終われー!」
「やっぱ今すぐ説教食らわしたらあああ!!」
「ひいいいい!」
   ──解放されたのは午後五時。
   その間に那月と山田は帰ったのだろう、教室に戻っても誰もいなかった。
「久しぶりに一人で帰るか」
「ちょっと待った!」
   誰一人見当たらない教室内に響いた、俺以外の声。
   だが、俺はこの声に聞き覚えがある。
   そう……、
「絶対ワルキューレだろ! どこだ!? どこにいるんだ? 分かったぞ、教卓の中だろ。ふっ……まだだが、そのうち蒼眼となる俺を誤魔化せるはずがなかろう! 観念して出てくるんだ……って居ないな」
「我に背を向けるとはいい度胸だ!」
   誰も居ないはずの背後から声が聞こえ、俺がバッと勢いよく振り返ると、
「ギラつけ炯眼! 滅ぼせ殲滅! ブレイク・ザ・ワールド!」
「ぐわあああ! や、やられたあ……」
   嬉々として俺に手をかざし、中二病技を放つ。
   子供と遊ぶような感じで乗ってあげるわけではなく、俺は至って真剣に技を食らった。
   ……中二病化したのかな。
   いや、じゃなくて!
「俺は今から叶美に電話するんだよ。邪魔しないでよ?」
「我をなんだと思ってるんだ! そんな人の迷惑をするはずないじゃないか! ……なんか、この喋り方在り来りじゃない? よし、敬語にしよう」
   こいつは唐突に何を言ってやがるんだ。
   まあいい、電話の邪魔しないなら都合がいいしな。
「電話番号は……これか。まあ、六人しかいないからすぐ見つけれるんだけど。ハハッ……なんか虚しいな」
「それはフラグというやつですか!? 分かりましたー! 我がスマホの電話番号知りたいんですね? さ、どうぞどうぞ」
「邪魔しないんじゃないんかよ」
   その言葉にハッとしたのか顔を伏せるワルキューレを目尻に、俺は電話を掛けた。
   一回の着信で出たところを見ると、暇だったんだろうな。
「もしもし? いきなりゴメンな。ちょっと訳ありなんだが、今いいか?」
『別にいいよ。要件何?』
「俺さ、中二病になろうと思っ……」
『ほんとに!? やった、期待してる!』
   俺の言葉を遮り、電話でも伝わる喜び声で答えてくれた。
   なら、俺は中二病になっていいのか!
   俺の喜びに満ちた顔を見て察したのか、隣にいたワルキューレも喜びに満ちた表情で、
「了承を得たのですか!? では、契約を結びましょう!」
「はあ!? 思考回路どうなってんだよ! 俺は付き合わないって言わなかったか?」
   いや、言ってないな。
   だけどここは雰囲気に乗せて誤魔化しつつ行こう。
「俺は言ったはずだぞ! 好きな人がいるって! だからお前とは──」
「一人で何言ってるんですか? 我はメールを交換しようって言っているんですよ?」
   紛らわしい!
   少しの殺意を覚えながら思う。
   電話番号って言ってたじゃないか、と。
   だが、今から俺の師匠になる方だ、悪く言ってはならないだろう!
「師匠! 俺はついていきますよ、どこまでも! 中二病である限り!」
「おっ、そうですか! では共に、中二病道歩もうではないですか!」
   敬語を使われると、どっちが師匠か分からないな。
   俺達の間に笑みがこぼれ始めた頃、俺はふと思う。
「何で教室に残ってるんだ? みんな帰っただろ? 転校したばかりだから、学校を見て周りたいとか?」
「違いますよ。伝言を頼まれたので、蒼眼を待ってたんです」
   俺を?
   誰からの頼みなんだろうか。
   至って真剣な表情でワルキューレは言う。
「単刀直入に言いますと、明日期末テストです。先生がショートホームルームに言ってたんですが、は居なかったので」
「この……学校クズだろおおおおおお!!」
   最近俺、大声出したばっかりだなあ。
   ここは大人しくしようか。
   そんな俺の考えを他所に、訝しげな顔をしながら橘さんが。
「えっ、何この子。気持ち悪いんだけど。蒼眼よ、こいつは一体……!」
   なんか知らんうちに俺のあだ名がかっこいいものになってるんだが。
   気持ち悪いって双方同じ様なもんだろって言いたいんだが、黙っておこう。
  
「お前達仲良くしないか? その蒼いカラコンは俺には必要ないし、欲しいなら山田にあげて、そして山田を蒼眼と呼べばいいんだしさ」
「いいの!? ありがとう浩介! 今日ほど感謝したことはないと思う!」
   一応感謝してるつもりなんだろうけど、釈然としないなあ。
   嬉々としている山田を、奈落の底へ突き落とすかのように橘さんが告げる。
「あげないよ」
   シンプル且つ効果抜群。
   それまで嬉々としていた表情とは真反対のしょぼんとした顔をしている。
   やはりここは俺が止めに入るべき……、
「おいお前達! 昼食の時間が終わるぞ? さっさと食べようぜ!」
   明るく、そして先生のような口調でそう言ったのは、ここまでずっと静かだった志賀だった。
   唐突に大声出したのが恥ずかしかったのか、頬を赤らめている。
   志賀にだけ押し付けるのは申し訳ないか。
「そうだそうだ、ご飯食おうぜ! 志賀の言う通り後十分だ。橘さんも食べてないなら、一緒に食べよう」
「クックック……まぁいいけど、我が名は炯眼のワルキューレ! ワルキューレと呼んでくれて構わない!」
「「「「お断りします」」」」
   俺達に全否定され、しゅんとしている橘さ……中二病を見て少し可哀想に思う。
   それより気になっていることが。
「さっきから炯眼炯眼って、全然炯眼じゃなくね? 大きな瞳に可愛らしい顔立ちだし」
「蒼眼は女の子慣れしてるのかな? めっちゃ褒めてくるな。仕方ない、我の決め台詞を聞かせてあげよう」
   頼んでませんが。
   何故世の中こう上手くいかないんだ?
   そんな俺をよそに中二病が、
「ギラつけ炯眼! 滅ぼせ殲滅! ブレイク・ザ・ワールド!」
   うん、セリフが怖すぎ。
  
「次からその言葉やめようか。俺と志賀は意味分かってるからな? 物騒もいい所だぞ」
「でもかっこいいよね?」
   否定出来ない自分が情けない。
   男としてそのセリフをかっこいいと思わないわけないだろ!?
   分かってて言っているのであれば、こいつは天才だな。
   ……中二病ってかっこいいな。
  どうしよう、中二病になりたいという自分が生まれてきた。
「なあ、その蒼いカラコン、明日綺麗なのを俺にくれないか?」
「じゃあ我と共に中二病になるというのか、蒼眼よ!」
「ああ! なってやろうではないか、中二病に! さ、御教授願お」
「浩ちゃん!!」
   俺の言葉を遮るように那月が声を出す。
   どことなくキレている気がするが、何故か俺には分からなかったが、理由はすぐ分かった。
「中二病になんてなっちゃダメだよ!」
   こいつなりに考えての答えなんだろうな。
   確かに中二病にいい印象はないし、クラスでも浮いた存在になる。
   だけどさ、だけどもさ! 俺は一回も中二病体験してないんだから、したいじゃんか!
   続けるかのように那月が、
「叶美ちゃんがなんて言うかな?」
   少し目を細め、風が吹き髪がなびいている。
   ラブコメのヒロイン引き立て役の様な事を言う那月は、目尻に涙が浮かび上がっているように見えた。
   俺は幼馴染にこんな表情をさせていいのか?
   俺が叶美を好きになったから、那月がこういう表情をするようになったのか?
   それとも中二病になりたいという思いから、こうなってしまったのか?
「キーンコーンカーンコーン」
   俺の気持ちを遮るようにチャイムが鳴り響いた。
   五限目、いつもと変わらない授業だが、俺の頭の中は考え事でいっぱいだ。
   那月が開き直っている以上、このまま過ごしていけばいいのか?
   でも、中二病はやめて欲しいという願望があるんだよな。
   ……くっそ。
「分からねー事だらけだよっ!!」
「高梨うるせーぞ! 職員室呼び出したろうかあ!?」
「うっ……すみません……」
   クラスがクスクス笑う中、俺に笑顔は多分浮かんでないだろう。
   俺は悩んだ末、結論として叶美に相談するのが吉と考えた。
   授業終われ、授業終われ、授業終われ、
「授業終われー!」
「やっぱ今すぐ説教食らわしたらあああ!!」
「ひいいいい!」
   ──解放されたのは午後五時。
   その間に那月と山田は帰ったのだろう、教室に戻っても誰もいなかった。
「久しぶりに一人で帰るか」
「ちょっと待った!」
   誰一人見当たらない教室内に響いた、俺以外の声。
   だが、俺はこの声に聞き覚えがある。
   そう……、
「絶対ワルキューレだろ! どこだ!? どこにいるんだ? 分かったぞ、教卓の中だろ。ふっ……まだだが、そのうち蒼眼となる俺を誤魔化せるはずがなかろう! 観念して出てくるんだ……って居ないな」
「我に背を向けるとはいい度胸だ!」
   誰も居ないはずの背後から声が聞こえ、俺がバッと勢いよく振り返ると、
「ギラつけ炯眼! 滅ぼせ殲滅! ブレイク・ザ・ワールド!」
「ぐわあああ! や、やられたあ……」
   嬉々として俺に手をかざし、中二病技を放つ。
   子供と遊ぶような感じで乗ってあげるわけではなく、俺は至って真剣に技を食らった。
   ……中二病化したのかな。
   いや、じゃなくて!
「俺は今から叶美に電話するんだよ。邪魔しないでよ?」
「我をなんだと思ってるんだ! そんな人の迷惑をするはずないじゃないか! ……なんか、この喋り方在り来りじゃない? よし、敬語にしよう」
   こいつは唐突に何を言ってやがるんだ。
   まあいい、電話の邪魔しないなら都合がいいしな。
「電話番号は……これか。まあ、六人しかいないからすぐ見つけれるんだけど。ハハッ……なんか虚しいな」
「それはフラグというやつですか!? 分かりましたー! 我がスマホの電話番号知りたいんですね? さ、どうぞどうぞ」
「邪魔しないんじゃないんかよ」
   その言葉にハッとしたのか顔を伏せるワルキューレを目尻に、俺は電話を掛けた。
   一回の着信で出たところを見ると、暇だったんだろうな。
「もしもし? いきなりゴメンな。ちょっと訳ありなんだが、今いいか?」
『別にいいよ。要件何?』
「俺さ、中二病になろうと思っ……」
『ほんとに!? やった、期待してる!』
   俺の言葉を遮り、電話でも伝わる喜び声で答えてくれた。
   なら、俺は中二病になっていいのか!
   俺の喜びに満ちた顔を見て察したのか、隣にいたワルキューレも喜びに満ちた表情で、
「了承を得たのですか!? では、契約を結びましょう!」
「はあ!? 思考回路どうなってんだよ! 俺は付き合わないって言わなかったか?」
   いや、言ってないな。
   だけどここは雰囲気に乗せて誤魔化しつつ行こう。
「俺は言ったはずだぞ! 好きな人がいるって! だからお前とは──」
「一人で何言ってるんですか? 我はメールを交換しようって言っているんですよ?」
   紛らわしい!
   少しの殺意を覚えながら思う。
   電話番号って言ってたじゃないか、と。
   だが、今から俺の師匠になる方だ、悪く言ってはならないだろう!
「師匠! 俺はついていきますよ、どこまでも! 中二病である限り!」
「おっ、そうですか! では共に、中二病道歩もうではないですか!」
   敬語を使われると、どっちが師匠か分からないな。
   俺達の間に笑みがこぼれ始めた頃、俺はふと思う。
「何で教室に残ってるんだ? みんな帰っただろ? 転校したばかりだから、学校を見て周りたいとか?」
「違いますよ。伝言を頼まれたので、蒼眼を待ってたんです」
   俺を?
   誰からの頼みなんだろうか。
   至って真剣な表情でワルキューレは言う。
「単刀直入に言いますと、明日期末テストです。先生がショートホームルームに言ってたんですが、は居なかったので」
「この……学校クズだろおおおおおお!!」
   最近俺、大声出したばっかりだなあ。
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