神様の日記

Togemoti

地獄

 予鈴の音が下校の時間を高らかに告げた。
 そんな音を俺は聴きながら校門の前で諒と喋っていた。
 「なあ希、この後ゲーセンに行かないか?」
 諒は俺に魅力的な誘いをしてきたが、残念ながら俺には用事がある。
 「すまん今日は用があるから無理。」
 「珍しいなお前がゲーセンの誘いを断るなんて、よっぽどの用なのか?」
 「よっぽどっていうほどでもないんだが塾の見学でもしてこようかなって、ほら俺、進学希望だから。」
 「もう二年の後半だからなぁ。わかった、お前の分は俺が楽しんでくるから。」
 こいつ将来のことちゃんと考えているのか少し友人として心配になったが、まぁ俺が知ることではないと疑問をかき消した。
 「じゃあ諒、また明日。」
 俺は挨拶をして塾がある方に足を向ける。
 「おう!そうだ、この頃結構物騒だから用心しろよ。」
 「注意するよ。」
 諒の忠告に対して軽く返すと俺は歩き始める。


*****


 駅の方向に塾があるので結果的に家から遠くなってしまった。
 まあ、それでも塾にたどり着いた。
 面倒と思いながらも俺はビル状の塾へと足を踏み出す。


 塾に入り俺は塾の先生に塾の中を案内してもらった。
 正直に言うと普通だった、イメージ通りというかつまらないというか、まぁ面白さを求めたところでどうしようもないと一人で苦笑する。
 案内の人に「説明の準備をするので部屋の外で少し待っていてください。」と言われたので近くに設置されていたベンチに腰掛けていた。
 周りを見ると、人が多いことに気がつく。
 やはりこの時期は受験生で人が多いのだろう。
 自分も進路を決めなければと少し焦った。

*****

 しばらく待っているのだが呼び出しがないことに違和感を覚えた。
 しびれを切らした俺は教室の方に行こうとして立ち上がる。
 
  「見つけた!」

 俺の目の前に朝に見た銀髪の少女が走って俺の前に走ってきた。
 俺は腰を抜かしたようにベンチへと座り込む。
 そんな俺を少女はじっと俺を見つめる。
 「ねえ、」
 少女が何か喋ろうとした瞬間、

 「あああああ!!!」

 玄関の方から悲鳴が聴こえてきた。
 一瞬で俺は我に返った。
 何事かと。
 「嘘、もうきたの!」
 少女はその悲鳴から逃げる様に反対の方向へと走り出す。
 「おい!何が起きて、、、、、、!」
  俺は少女を追いかけようとする。
  ドン!
  血だらけの男が俺にもたれかかってきた。
 よく見ると塾の案内をしてくれた人だ。
 「大丈夫ですか!早く救急車を。」
 くそ本当に何が起きてるんだ。
 血を吐きながら案内の人は俺の肩を掴む。
 「は、はやく逃げろ。紅い刀を振り回している女が片っ端から人を切って進んでキテイル、、。」
 そう言い残すと急に案内の人の体が重くのしかかる。
 直感で 死んだ と理解した。
 「そ、そんな。」
 周りを見渡すと人が沢山、倒れていた。
 ついには火が起き始める。
 地獄絵図が広がっていた。
 俺は死体をベンチに座らせると全速力で走り出した。
 頭がどうにかなりそうだった。
 そんな状況でも、体が逃げろとここにいると死ぬとそう告げていた。
 全速力で階段を降りるしかし、4階で階段は壊れていた。
 俺は切らした息を整えるために少し立ち止まる。
 どこに逃げるか、ここは4階だ。
 窓から飛び降りるわけにはいかない。
 階段は何故か壊されていて4階から先に降りれない。
 立ち止まって考えていると死神は現れた。
 「あら、まだ切り漏らしがあったみたいねえ。」
 黒いロングの髪と喪服のような服、人間を食料にしか見ていないような黒く深い瞳そんな風貌に俺は恐怖する。
 逃げなければいけないそれでも体はすくんで動かない。
 「怖くて動けない?いい表情ねぇ、じゃあそのまま殺してあげる!」
 死んだと思った。
 走馬灯が頭の中を駆け巡る。
 紅い刀が俺に向かって振り下ろされる。

 「後ろに飛んで!」

 その声は突然叫ばれる。
 体から枷が外れたように俺は後ろに飛んだ。
 その瞬間、俺の胸から腹の表面が斜めに大きく切られる。
 ザシュ。
 あまりの痛さに声もでなかった。
 血が吹き出ていることがわかった。
 また声が聞こえてくる。

 「・・・!」

 何を言っているか聞こえなかった。
 急に俺の体が消え始める。

 女は今度こそ殺さんとばかりに刀を振りかざした。
 刀が俺の体を切る前に俺の体は消える。
 

 そのまま俺の意識も消えた。

 
 
 

 
 
 

 
 

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