龍の子
23話 『僕史上、最大の事件かもしれない』
最近、僕の周りでは面白い事ばかり起こる。
例えば、危険度ランク一個体でAランクを誇るモンスター「リベンジャーウルフ」の決して柔らかくはない体毛ごと、いとも容易く真っ二つに切断する腕力を持った少年。僕と一緒とは言え、たった二人で群れの「リベンジャーウルフ」をお互い無傷で殲滅しきったと言うのは少し異常と言えるだろう。
いや、正直僕はこっそりポーションを使った。かく言う少年は接近戦でありながら無傷で殲滅しきったのである。
常軌を逸してる。
例えば、この国の最高峰を誇る『グランブラン山』の一角を一瞬で削り去り、標高を標高ランキングを第5位まで格下げしてしまう少女だったり。
まぁ、その後魔力切れで気を失ってしまったが……。
やんわりと簡潔に言ってしまったが、実はこれは国家転覆並みに危うい行為だ。
しかし、これ程の実力をマジマジと見せ付けられてどこの誰がこの少女を裁けると言うのだろうか?
しかも、傍らには先程紹介した少年がまるで姫を守るナイトの様に少女の面倒を見ている。
ふふ、微笑ましい事だ。
そして、これは今日起こった事だ。
その日、僕は元々依頼を受けていた薬草採取のクエスト報告と『グランブラン山』消失の件も兼ねて、この『ケルビルの街』の冒険者ギルドに顔を出していた。
「こんにちはー、相変わらずここのギルドはおっきいねぇー!」
僕がギルドのドアを開けると同時にざわめきが起こる。
いつもの事だけど。
「お、おい!あれって「ベルロ」じゃないか?」
「嘘だろ?あのAランク『双魔のベルロ』かい!?」
「キャー!ベルロお姉様!!」
……いつもの事だけど。
こう、改めて讃えられるとこそばゆい感じするんだよなぁ。
まぁ、ここはあくまで普通に。
「えと、あの、く、クエスト完了の報告に来ました!」
普通に、普通に。
「はい!確認致しますね。えーっと、『「グランブラン山」山頂付近のみに生えている伝説の薬草を取って来てほしい。報酬は幾らでもだす。』クエストランクは……S!?え、えーっと?ベルロ様は確かAランク冒険者の筈ですが!?ど、どうして伝説級のSランククエスト何かを?」
「え?駄目だったかい?AランクがSランククエストに挑戦するのは禁止事項には触れていないと思うんだけど??」
「いえいえいえ!!滅相も無いです!し、しかし大体の冒険者様はAランクを皮切りにご隠居なされる方が多数ですので…」
「うん、よく聞くね。でも、僕はAランクで冒険者を辞めるつもりは無いから。それならどんどん上に挑戦するのが普通でしょ?」
「は、はぁ……。それで、クエストにあった薬草は採取出来たのでしょうか?」
「そりゃ勿論!こんな話をした後に失敗で終わってたら格好つかないよ!」
この薬草。実はミクモさんが根こそぎ『グランブラン山』を削ってしまったから名実ともに伝説の薬草になってしまったんだよな。
一つ大目に採取しといてよかった。宝物にしよう。
「はい、これ。『レヴェナーの葉』しかし、こんなの採って来いだなんて、何に使うんだろうね?昔はこれを使って死者を蘇らすだなんて噂も耳にした事はあったけど、結局ガセなんじゃなかったっけ?」
ギルドの受付嬢にしょうもない事を聞く。
「こら、いけないでしょ?いくらAランク冒険者でも依頼者側の詮索をしてはいけないって言われてるの忘れたの?」
ギルドカウンターの奥からどこか懐かしい声が聞こえる。
「リノ!!久しぶり!!僕、お陰でAランクまで上がる事が出来たよ!!」
この人は『リノ』僕の冒険者になるきっかけになった人だ。
そして、ここのギルドのマスターでもある。
「あらら、はしゃぎすぎよ?ギルドの人達が目をまん丸にしちゃってるわよ?」
「あ……。ついつい、久しぶり過ぎて。ごめんなさい」
「いいのよ、私もこの前ベルがこの街に来た時はちょうど用事で入れ違いになってたし。それに、ベルにも少し聞きたいことがあるしね。クエストの報酬を受け取ったら少し裏に来てくれるかしら?」
「うん、わかった」
話の内容は恐らく察しがついている。
多分、あの事だろう。
「……あの?ベルロ様??」
「あっ!と、そうだった。報酬だっけ??うーん、報酬は幾らでも出すって言ってるけど、こう言うのって結構困るよね??取り敢えず、僕の目利きで『レヴェナーの葉』を見るなら今は100000ゴールドって所かな?」
「じゅっ!?100000ゴールドでしゅか!!?」
「あぁ、下手したらもっと高くなるかもしれない」
「ま、まぁ。幾らでも出すって事でサインも頂いて居ますし。支払わなければこちら側も然るべき対処を取らせていただくまでですので良いでしょう。少し待っていて下さい。……はい、こちらが報酬の100000ゴールドです。…宜しければ数えましょうか?」
「いや、リノとの約束もあるし別にいいや。ありがとね!」
急がなきゃ。
「え…、Sランククエストすげーー!」
ついつい素が出てしまうギルドの受付嬢
「失礼しまーす。リノー居るー?」
この部屋に入るのも久しぶりだなぁ。
「ん、来たね?まぁ、ここに座って」
「うん、話ってもしかしなくてもあの事でしょ?」
そう、きっと『グランブラン山消失』の件だろう。
「わかって居るなら話が早いわ。ねぇ、一体あの山で何が起こったの?」
「それは……」
最初は嘘をつこうと思った。
でも、結局事実として起こった事は嘘であろうと真であろうとまるで奇想天外で飛びぬけた嘘のような話であるのに変わりはない。
結局、僕は真実を語った。
ソウイチロウの事。ミクモさんの事。リノは半信半疑だ。
それでも僕の言う事を信じると言ってくれたし。その二人にも力になってくれると約束してくれた。
勿論この事実は他言無用だ。リノも同意してくれた。
「それで、もう一つ話があるのよ」
今まで真剣な顔つきだったリノの顔が一気ににこやかに変わった。
「ミルの事なんだけど……。今年から冒険者学校に通い始めたのよ?」
!!!??
「…なんだってっ!!??」
「そりゃ、驚くわよね……」
「ととと、止めなかったのかい!?」
「それは、止めたわ。それでも、ベルがAランク冒険者になったって聞いたら居てもたってもいられなかったみたい。止めても無駄だったわ」
「だだだ、大丈夫なのかい??病気は?」
「えぇ、ベルが頑張って働いてるお陰よ。少しずつだけど元気になってきてるわ。それでもって、お姉ちゃんにも負けない冒険者になるなんて意気込んでいたわ」
そう、ミル。「ミル・ロヴェッサ」は僕の妹だ。まごうごとなき血の繋がった唯一の大切な妹だ。
「で、でも僕はミルを危険な目に合わせるなんて……」
「いい、「ベル・ロヴェッサ」あなたの妹は今、1人の大人として立派に旅立とうとしているの。勿論、ベルの不安もわからなくは無いわ。私がそうだったもの。あの時ベルを見送った時もそうだった。でも、今度はあなたの番よ。ミルを1人の大人として認めてあげて」
「……でも、まだ子供だ」
「ベル、あなたこの街に帰ってきてからミルにあった?」
「……いや、まだ、だけど…」
「あの子」
つい、リノから目を逸らしてしまう。
「あなたより、おっぱい大きいわよ?」
「…………っっつ!!知るかっ!!そんなもん!!!!」
「まぁまぁ、そんな怒らないで!でも、立派よ?」
「……おっぱいが?」
「違うわ、さっきのは冗談よ!おっぱいは確かに大きいけど……。でも、一度ミルともお話ししてみるといいわ」
「………うん」
ミシミシッ!
「え?建物が揺れてる!?」
「あらら?外で誰か暴れてるのかしら?ベル。ちょっと見てきてくれるかしら?」
「うん、わかった!」
「ちょ、ちょ、ちょっとおぉぉ!!君たち君たちっ!物音がしたから何かと思って見に来たらギルド内で何やってるの!?」
ギルド内の異音に気づきギルドのロビーに駆けつけてみるとそこには、1人の少年とあまり良い噂の聞かない冒険者リヴロが対立していた。
少年の足元には倒れた少女が1人。
状況は大体把握した。
こいつ、僕が居るギルド内で堂々とやってくれる!
おっと、部が悪いと踏んで逃げ出したか。
って、あれあれ?あそこに居るのは先日出会ったソウイチロウとミクモさんじゃないか。
ギルドまで、僕を追いかけに来たのかな?
って、まずい!
リヴロのやつがミクモさんを突き飛ばしやがった!!
こんなの、ソウイチロウが黙ってるはず……
あぁ、やっぱり。
そりゃ秒殺だよ。「リベンジャーウルフ」を両断する膂力を持ってるソウイチロウがあんな二流冒険者を倒すのに時間なんて掛かるはずがない。
って!ミクモさん!?
何する気!!っちょっと!ソウイチロウ!止めた方が良いんじゃないか?
って、僕が喋るよりも早かった。
一瞬でリヴロは見るに堪えない姿になってしまった。
相変わらずミクモさんは何をしたのか分からないな。
「あ、ベルちゃん!これは、えーっとその」
はぁ、取り敢えず死んでは居ないみたいだから応急処置で回復魔法を使える者を探さないと。
と思ったらミクモさんがいつの間にか回復魔法を使える者を探してきてた、ってこの人、さっきリヴロと対立していた少年じゃないか。
この少年に回復を頼むのは少し酷では??
まぁ、了承してくれたのなら助かるのだが……
そういえばリノは結構、回復魔法が使えたな。
「うん!じゃあ、早速お願いしようかな?えーっと?何君かな?」
「エルと言います。よろしくお願いします。「ベルロ」さん」
今、何か…。魔法を掛けられた?いや、特に体に異常は。むしろどこか懐かしいような暖かいような…。
「……あぁ、お願いする。エル君」
え?あれ??
いつのまにかリヴロが目を覚ましている。
どういう事だ??
ソウイチロウにミクモさんは僕の事を不思議そうに見ているけど僕から見たら君達が何故そんなに普通にしてるのかが謎なんだけど、そんな事はどうでもよくて!
この少年!エル君!!一体何をしたの!?
聞けば、回復魔法と時間魔法の複合魔法だそうな。
時間魔法ってだけで度肝を抜かすのに、それに加えて回復魔法の複合だって!?
ありえない!!そんな芸当普通の人間が出来るはずがない!!それこそ魔族くらい魔法に流暢じゃないとありえない!
僕でさえ複合魔法を使えるのは僕くらいなものだと思っていたのに、こんなに容易くやってのけるなんて!!
まさか、……魔族??なのか?男の。
先程、このエル君に名前を呼ばれた時に感じたあの、心が騒めくような感覚。もし、そうだとしたらこれは…。
僕史上、最大の事件かもしれない!!
どうしよう、ドキドキが止まらないっ!
どうも虫です。
ギルドの受付嬢の事なんですけど、この後失神してリヴロのグルの受付にチェンジしたって事にしてもらえませんかねぇ?ねぇ!?
あれ。時間経つの早くね。もうすぐ、1ヶ月経とうとしてるんだけど。
てか、投稿頻度、あがんないんだけど!
例えば、危険度ランク一個体でAランクを誇るモンスター「リベンジャーウルフ」の決して柔らかくはない体毛ごと、いとも容易く真っ二つに切断する腕力を持った少年。僕と一緒とは言え、たった二人で群れの「リベンジャーウルフ」をお互い無傷で殲滅しきったと言うのは少し異常と言えるだろう。
いや、正直僕はこっそりポーションを使った。かく言う少年は接近戦でありながら無傷で殲滅しきったのである。
常軌を逸してる。
例えば、この国の最高峰を誇る『グランブラン山』の一角を一瞬で削り去り、標高を標高ランキングを第5位まで格下げしてしまう少女だったり。
まぁ、その後魔力切れで気を失ってしまったが……。
やんわりと簡潔に言ってしまったが、実はこれは国家転覆並みに危うい行為だ。
しかし、これ程の実力をマジマジと見せ付けられてどこの誰がこの少女を裁けると言うのだろうか?
しかも、傍らには先程紹介した少年がまるで姫を守るナイトの様に少女の面倒を見ている。
ふふ、微笑ましい事だ。
そして、これは今日起こった事だ。
その日、僕は元々依頼を受けていた薬草採取のクエスト報告と『グランブラン山』消失の件も兼ねて、この『ケルビルの街』の冒険者ギルドに顔を出していた。
「こんにちはー、相変わらずここのギルドはおっきいねぇー!」
僕がギルドのドアを開けると同時にざわめきが起こる。
いつもの事だけど。
「お、おい!あれって「ベルロ」じゃないか?」
「嘘だろ?あのAランク『双魔のベルロ』かい!?」
「キャー!ベルロお姉様!!」
……いつもの事だけど。
こう、改めて讃えられるとこそばゆい感じするんだよなぁ。
まぁ、ここはあくまで普通に。
「えと、あの、く、クエスト完了の報告に来ました!」
普通に、普通に。
「はい!確認致しますね。えーっと、『「グランブラン山」山頂付近のみに生えている伝説の薬草を取って来てほしい。報酬は幾らでもだす。』クエストランクは……S!?え、えーっと?ベルロ様は確かAランク冒険者の筈ですが!?ど、どうして伝説級のSランククエスト何かを?」
「え?駄目だったかい?AランクがSランククエストに挑戦するのは禁止事項には触れていないと思うんだけど??」
「いえいえいえ!!滅相も無いです!し、しかし大体の冒険者様はAランクを皮切りにご隠居なされる方が多数ですので…」
「うん、よく聞くね。でも、僕はAランクで冒険者を辞めるつもりは無いから。それならどんどん上に挑戦するのが普通でしょ?」
「は、はぁ……。それで、クエストにあった薬草は採取出来たのでしょうか?」
「そりゃ勿論!こんな話をした後に失敗で終わってたら格好つかないよ!」
この薬草。実はミクモさんが根こそぎ『グランブラン山』を削ってしまったから名実ともに伝説の薬草になってしまったんだよな。
一つ大目に採取しといてよかった。宝物にしよう。
「はい、これ。『レヴェナーの葉』しかし、こんなの採って来いだなんて、何に使うんだろうね?昔はこれを使って死者を蘇らすだなんて噂も耳にした事はあったけど、結局ガセなんじゃなかったっけ?」
ギルドの受付嬢にしょうもない事を聞く。
「こら、いけないでしょ?いくらAランク冒険者でも依頼者側の詮索をしてはいけないって言われてるの忘れたの?」
ギルドカウンターの奥からどこか懐かしい声が聞こえる。
「リノ!!久しぶり!!僕、お陰でAランクまで上がる事が出来たよ!!」
この人は『リノ』僕の冒険者になるきっかけになった人だ。
そして、ここのギルドのマスターでもある。
「あらら、はしゃぎすぎよ?ギルドの人達が目をまん丸にしちゃってるわよ?」
「あ……。ついつい、久しぶり過ぎて。ごめんなさい」
「いいのよ、私もこの前ベルがこの街に来た時はちょうど用事で入れ違いになってたし。それに、ベルにも少し聞きたいことがあるしね。クエストの報酬を受け取ったら少し裏に来てくれるかしら?」
「うん、わかった」
話の内容は恐らく察しがついている。
多分、あの事だろう。
「……あの?ベルロ様??」
「あっ!と、そうだった。報酬だっけ??うーん、報酬は幾らでも出すって言ってるけど、こう言うのって結構困るよね??取り敢えず、僕の目利きで『レヴェナーの葉』を見るなら今は100000ゴールドって所かな?」
「じゅっ!?100000ゴールドでしゅか!!?」
「あぁ、下手したらもっと高くなるかもしれない」
「ま、まぁ。幾らでも出すって事でサインも頂いて居ますし。支払わなければこちら側も然るべき対処を取らせていただくまでですので良いでしょう。少し待っていて下さい。……はい、こちらが報酬の100000ゴールドです。…宜しければ数えましょうか?」
「いや、リノとの約束もあるし別にいいや。ありがとね!」
急がなきゃ。
「え…、Sランククエストすげーー!」
ついつい素が出てしまうギルドの受付嬢
「失礼しまーす。リノー居るー?」
この部屋に入るのも久しぶりだなぁ。
「ん、来たね?まぁ、ここに座って」
「うん、話ってもしかしなくてもあの事でしょ?」
そう、きっと『グランブラン山消失』の件だろう。
「わかって居るなら話が早いわ。ねぇ、一体あの山で何が起こったの?」
「それは……」
最初は嘘をつこうと思った。
でも、結局事実として起こった事は嘘であろうと真であろうとまるで奇想天外で飛びぬけた嘘のような話であるのに変わりはない。
結局、僕は真実を語った。
ソウイチロウの事。ミクモさんの事。リノは半信半疑だ。
それでも僕の言う事を信じると言ってくれたし。その二人にも力になってくれると約束してくれた。
勿論この事実は他言無用だ。リノも同意してくれた。
「それで、もう一つ話があるのよ」
今まで真剣な顔つきだったリノの顔が一気ににこやかに変わった。
「ミルの事なんだけど……。今年から冒険者学校に通い始めたのよ?」
!!!??
「…なんだってっ!!??」
「そりゃ、驚くわよね……」
「ととと、止めなかったのかい!?」
「それは、止めたわ。それでも、ベルがAランク冒険者になったって聞いたら居てもたってもいられなかったみたい。止めても無駄だったわ」
「だだだ、大丈夫なのかい??病気は?」
「えぇ、ベルが頑張って働いてるお陰よ。少しずつだけど元気になってきてるわ。それでもって、お姉ちゃんにも負けない冒険者になるなんて意気込んでいたわ」
そう、ミル。「ミル・ロヴェッサ」は僕の妹だ。まごうごとなき血の繋がった唯一の大切な妹だ。
「で、でも僕はミルを危険な目に合わせるなんて……」
「いい、「ベル・ロヴェッサ」あなたの妹は今、1人の大人として立派に旅立とうとしているの。勿論、ベルの不安もわからなくは無いわ。私がそうだったもの。あの時ベルを見送った時もそうだった。でも、今度はあなたの番よ。ミルを1人の大人として認めてあげて」
「……でも、まだ子供だ」
「ベル、あなたこの街に帰ってきてからミルにあった?」
「……いや、まだ、だけど…」
「あの子」
つい、リノから目を逸らしてしまう。
「あなたより、おっぱい大きいわよ?」
「…………っっつ!!知るかっ!!そんなもん!!!!」
「まぁまぁ、そんな怒らないで!でも、立派よ?」
「……おっぱいが?」
「違うわ、さっきのは冗談よ!おっぱいは確かに大きいけど……。でも、一度ミルともお話ししてみるといいわ」
「………うん」
ミシミシッ!
「え?建物が揺れてる!?」
「あらら?外で誰か暴れてるのかしら?ベル。ちょっと見てきてくれるかしら?」
「うん、わかった!」
「ちょ、ちょ、ちょっとおぉぉ!!君たち君たちっ!物音がしたから何かと思って見に来たらギルド内で何やってるの!?」
ギルド内の異音に気づきギルドのロビーに駆けつけてみるとそこには、1人の少年とあまり良い噂の聞かない冒険者リヴロが対立していた。
少年の足元には倒れた少女が1人。
状況は大体把握した。
こいつ、僕が居るギルド内で堂々とやってくれる!
おっと、部が悪いと踏んで逃げ出したか。
って、あれあれ?あそこに居るのは先日出会ったソウイチロウとミクモさんじゃないか。
ギルドまで、僕を追いかけに来たのかな?
って、まずい!
リヴロのやつがミクモさんを突き飛ばしやがった!!
こんなの、ソウイチロウが黙ってるはず……
あぁ、やっぱり。
そりゃ秒殺だよ。「リベンジャーウルフ」を両断する膂力を持ってるソウイチロウがあんな二流冒険者を倒すのに時間なんて掛かるはずがない。
って!ミクモさん!?
何する気!!っちょっと!ソウイチロウ!止めた方が良いんじゃないか?
って、僕が喋るよりも早かった。
一瞬でリヴロは見るに堪えない姿になってしまった。
相変わらずミクモさんは何をしたのか分からないな。
「あ、ベルちゃん!これは、えーっとその」
はぁ、取り敢えず死んでは居ないみたいだから応急処置で回復魔法を使える者を探さないと。
と思ったらミクモさんがいつの間にか回復魔法を使える者を探してきてた、ってこの人、さっきリヴロと対立していた少年じゃないか。
この少年に回復を頼むのは少し酷では??
まぁ、了承してくれたのなら助かるのだが……
そういえばリノは結構、回復魔法が使えたな。
「うん!じゃあ、早速お願いしようかな?えーっと?何君かな?」
「エルと言います。よろしくお願いします。「ベルロ」さん」
今、何か…。魔法を掛けられた?いや、特に体に異常は。むしろどこか懐かしいような暖かいような…。
「……あぁ、お願いする。エル君」
え?あれ??
いつのまにかリヴロが目を覚ましている。
どういう事だ??
ソウイチロウにミクモさんは僕の事を不思議そうに見ているけど僕から見たら君達が何故そんなに普通にしてるのかが謎なんだけど、そんな事はどうでもよくて!
この少年!エル君!!一体何をしたの!?
聞けば、回復魔法と時間魔法の複合魔法だそうな。
時間魔法ってだけで度肝を抜かすのに、それに加えて回復魔法の複合だって!?
ありえない!!そんな芸当普通の人間が出来るはずがない!!それこそ魔族くらい魔法に流暢じゃないとありえない!
僕でさえ複合魔法を使えるのは僕くらいなものだと思っていたのに、こんなに容易くやってのけるなんて!!
まさか、……魔族??なのか?男の。
先程、このエル君に名前を呼ばれた時に感じたあの、心が騒めくような感覚。もし、そうだとしたらこれは…。
僕史上、最大の事件かもしれない!!
どうしよう、ドキドキが止まらないっ!
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