龍の子
5話 『妹にはお兄ちゃんと呼ばれたい』
「妹が出来ました♡」
「はぁぁぁぁぁぁぁぁ!????」
何言ってるんだこの人は!?
妹?お、俺に妹だって?今まで一人でこの母親からの重圧を受けてた俺にもようやく身代わりができたと言うのか!?
じゃなくて!
え?このグラマラスなバディのお腹に赤ん坊が居るだって??全く母さんも隅に置けないなぁ!!
「む?エルよ、何を腹など撫でておるのだ?私は別に交尾などして妹が出来たとは言っておらんぞ??」
「こ、こぅびぃっっぶ!!??」
こ、交尾って…。
「そ、それじゃあ妹ってのはどこに居るんだよっ!!」
「ほれ、そこに。」
居た。
家の隅に隠れてた。
で、デカイ。
そう言う意味ではない。
正確には身長は俺の方が5センチ高いくらいだからデカイと言っても巨人的な意味ではない。
今、目の前に居るのは俺より二歳ほど歳下に見える女の子だ。
「なっ?妹って。母さんこの子まさか拉致してきたの!?」
犯罪だ。異世界に来てまさか身内に犯罪者を持つことになるとは。
「ち、違うのだ!この子は森でアングリーボアを狩りしてる最中に傷だらけで倒れてるのを見つけたのだ!傷を癒してやったら私から離れなくなって仕方ないから貰ったのだっ!」
だ、だめだこりゃ。反省の色がまるでみえてない。
しかし、この子。目が虚ろでまるで心が死んでしまってるかのようだ。
どっちみち放っては置けないか。
う〜ん。どう接するべきか。
と、取り敢えず名前を聞き出そう。
「ね、ねぇ君、君の名前はなんて言うんだい?お兄ちゃんに教えてくれるかな?」
「……ミーシャ」
睨みながらも返答をくれた。
「み、ミーシャちゃんか。良い名前だね!お母さんが付けてくれたのかな?」
「…おか…さん?」
「うん?」
「…お母…さん」
ミーシャはゆっくりと母さんの方を指差して静かに口を開いた。
「うおぉぉぉ!ミーシャよ。私を母と認めてくれるのかぁ!!さぁ、今度は母様と呼んでみるのだ!」
「…母様?」
「ぶふぉぉっ!可愛い!可愛いのじゃぁぁ!!」
「ちょ!?ちょっと母さん!あんまり乱暴にしたらダメだって!!」
だ、ダメだこの人…。
なんだかんだあって落ち着いたあと。
「さて、ミーシャちゃんが一先ず回復するまで家で妹として預かる事は決定したわけだが…」
なぜ心を開かない…。
相変わらず今日もどこか遠くを見つめたような浮かない顔をしている。
ここは兄として何かしてやれないものか…。
「妹を振り向かせよう作戦発令なのだ!」
それだっ!
「って母さん!?」
「うむ、中の悪い息子と娘を見ていると居ても立って居られなくてな。どうだ?地上の人たちは仲直りに一緒に街を散策するらしいのだが…。お前ら、二人で行ってみると良いぞっ!てか、行け!」
ぬぅぅぅ。い、いきなりこの無感情少女との散歩だなんてハードル高すぎるぞ!!
「さぁさぁ!さっさと行くのだっ!」
「どわぁっ!?」
「っと、その前にエルに魔法を掛けてやるのだ」
無理やり家から追い出された…。
「仕方ない、行こうかミーシャ」
俺はミーシャの手を握り。
「……ぁ、ぅ」
「転移!!」
転移と言ってもダンジョンが俺らの味方である限り家のあるフロアとダンジョンの入口。つまり町外れの洞窟の外までの送迎をしてくれる便利機能だ。ダンジョンマスターである母を持つと色々と便利ですな。
「さて、ミーシャ。町に行こう!俺が欲しいもの全部かってやんよ!」
「……ぅぅ町、いや。母様のところがいい」
あちゃー。こりゃとんだ引きこもりですわ。
仕方ない、無理やりでも連れてくぞ。
「おいっしょっとぉ!」
いわゆるお姫様抱っこだ。
「…っ!ぃやぁ!!馬鹿!下ろして!!…馬鹿兄ぃ 」
ぶふぉぉっ!今、兄ぃって!ミーシャが兄ぃて!!
「ウォォォォォォ!」
「ぃやぁぁぁァァァァァ!」
ついついお姫様抱っこの状態で町まで来ちまったぜ。
「さぁ、町に着いたぞ!ミーシャ」
ミーシャは町に着いてからはずっと俺の服の裾を掴んでいる。
まぁ、初めはこれでもちょっとずつ慣れていけばいいか。
「この町は良いところだよ。何か欲しい物はあるかい?」
と、ミーシャに聞くとゆっくりと指をさし。
「…あれ」
指をさした先にはサンドイッチ屋さんが。
「朝ごはん食べたばっかなのに…。お腹すいてるの?」
こくり。
と、ミーシャが小さくうなずく。
「すみません!サンドイッチを2つ下さい!」
「はいよ!!おっ?ミアレさんとこの坊っちゃんじゃないか。今日はガールフレンドでも連れて優雅にデートかい?はいよ、サンドイッチ2つ」
「いえ。この子は妹です。ありがとうございます」
店主からサンドイッチを2つ受け取りミーシャに渡す。店主は口をあんぐりと開けて驚いと居たが。まぁ、仕方ないだろう。
「はい、ミーシャ。ここのサンドイッチは美味しいって有名なんだ」
ハムッ!
「…おいしい」
「だろ?」
さて、次はどこに行こうかな。
するとミーシャが慣れてきたのかグイグイと服を引っ張り。
「あそこ」
ん?あそこはアクセサリーショップか!
あれは不味いぞ。あんなとこでおねだりなんてされたら間違いなく持ち金が全てとぶ!
「み、ミーシャ。あそこはやめようか」
「いやだ、あそこがいい…」
うっ、この上目遣いは卑怯だろ…。
「仕方ない。ちょっとだけだぞ!」
「……うんっ!」
なにその笑顔!
妹って、天使だわ。
さてさて、アクセサリーショップにきたはいいけどうちのミーシャちゃんのお眼鏡に叶う幸福なアクセサリーは居るのかね?っとミーシャちゃん??何をじーっと見てるのかな?それは見てるとお金って言う魔物に呪い殺されちゃう悪い物だからあっちの方に行きましょうね!
強引に連れて行った先には…。
「お揃いのミサンガか」
でもミサンガってアクセサリーっていうより縁結びってイメージがあるな。確か、自然に切れたら願いが叶うんだっけ?
…あ、あくまで妹だからな!!取り敢えず3つ買っとくか。
あと1つは母さんにでも渡すか。
「すみません!これ下さい」
「毎度ありー」
いやぁ、いい買い物をしたなぁ。安かったし。
ミーシャも喜んでくれてるみたいで何よりだ。
「さて、ミーシャ。そろそろいい時間だからお家に帰るか?」
ドンッ!
「あ、すいません!」
「ンア?なんだこのクソガキ??
うわぁ、なんかめんどくさそうな人たちにぶつかっちゃったな。
「てめぇ、なんだその目つきは。ガキがアクセサリーショップから出てくるなんざ。さては相当な金持ちだなぁ?謝る気があるんだったら金をよこしなっ!」
「おい、それも良いが隣のメスガキみてみろよ。あれは奴隷市のロリコンジジイに売ったらそれなりの金になるんじゃねぇか?」
「ヘッ、どっちにしろ金が手に入るにこしたことはねぇな。お前ら不幸だったなぁ。恨むんならこんな時間まで出歩いてた自分たちの軽率さを恨むんだな!ゲヘヘヘッ」
む、よくみたらここら辺は人通りが良くないな。
そりゃ、こんな柄の悪いお兄さんたちに出会う訳だ。
次の瞬間。
「ヘヘヘッ!メスガキゲットおぉぉ〜!」
「ミーシャっ!!」
!?
こいつ、思った以上に速いっ!!
「おらぁ!よそ見してんじゃねぇぞぉ!お前も魔族のガキって事は高く売れるんだからなぁ!!」
魔族って、なんでバレたの!?
繰り出されたのはボディブロー。
そのまま俺の腹を目掛けて…。
「いってぇ!!なんて硬さなんだこのガキぃ!!」
なんかどっかでみたことある気がするなこのやり取り。
お返ししてやるか。
「オラァッ!!」
今やられたボディブローを真似てこのゴロツキのお兄さんにお返ししてみたら。まぁ、なんと言うか。
メリメリッ!!
「カハッッ!!」
まるで尖った刃物で突き刺したかのように俺の小さな拳がゴロツキの腹にめり込んだ。
「お、俺のぉぉ。『闘神のチラ見』を持つ俺様に、こんなダメージを与えるなんてぇ!こ、こいつ、ただもんじゃねぇ…」
ドサっ。
うわっ、なんか俺も似たようなの持ってるぞ?
っと、そんなことよりミーシャは?
「くそ!そ、それ以上近づくな化け物!近づいたらこのメスガキを売り物にならねぇくらいズタズタに引き裂いてやる!!」
は?
此の期に及んでまだ、ミーシャを商品扱いするつもりか?この野郎。
「ミーシャ、兄ちゃんがすぐ助けてやるぞ!」
すこし近づいただけでも奴はミーシャの首元にナイフで軽く首を傷つけて本気の意思を見せ付ける。
あー、ダメだ。なんか、イラついてきた。殴るだけじゃすまさねぇ。
この状況、なんとか出来ないのか!?
なんとかあのナイフを持つ手だけでも止められたら…!
何度も何度も頭の中で奴の動きを封じる方法を模索したが…。
足りない、何をしても奴がミーシャの首をかっきるのが速い。
もう一人。協力者がもう一人居れば…。
しかし、今は日暮れ。元々人通りの少なかったこの道には倒したゴロツキを含め四人しか居ない。
もう一人、居れば…。
『ミーシャを殺す奴を殺せるよなぁ?』
その時。ゴロツキ2の後ろに俺と同じくらいの大きさの人型をした影が現れ、呟いた。
「な、なにっ!?」
ゴロツキ2は、突然の出来事に、ミーシャを突き飛ばした。
瞬間、影は目にも留まらぬスピードでゴロツキ2に向けて貫手を繰り出した。
『お前がミーシャを殺す前に、俺が殺す!!』
貫手はそのままゴロ2キの腹を突き破り。
「ぐぼぉっ!!ぐぁぁぁっ!!!」
ズボッ!!
ズチャッ!!
影は貫手を連打する。
いいぞ。これで、殺せる!
次第に口元がにやけてきているのに気づいていた。
「やべでっ、じぬ、、じんじゃうぅっ!!」
いいぞ。愉快だ!
「だずげっ!ゲボォォォォ…!!」
「……やめてっ!!本当に死んじゃう!!…兄ぃぃ!!」
!?
「ミーシャっ!?」
ミーシャの張り上げた声に、目が覚めたように頭がスッキリする。
同時に今目の前で起きてた現実を目視する。
影は消えていた。
ゴロ2キの腹は空洞が出来ており、見えるのは白い突起物が突き刺さった赤黒い何か。
「うぐっ!!」
その後は何も考えられなかった。
いつのまにか、ミーシャの手を引っ張ってダンジョンの入り口近くまで走っていた。
「はぁ、はぁ」
「…んっ」
ミーシャは怯えていた。また、あの影が出てくるんじゃないか?
目の前の兄がまた狂ってしまうのではないかと。
「……ミーシャ」
震えるミーシャに近づき。
優しく抱きしめる。
「ごめん。ごめんっ!俺が周りを見てなかったせいで…。ミーシャに、妹にこんな怖い思いをさせてしまった。俺が未熟なばっかりに…」
どこかで聞いたことがあるような言葉を投げ掛ける。
「…大丈夫。今の兄ぃは怖く…ないよ?」
嘘つくなよ。まだ体が震えてるじゃんか。
「こんどまた、兄ぃがおかしくなったら次はミーシャが護るから。だから、兄ぃ。泣かないで…」
泣く?俺、涙流してるのか?
そっか、そういえばこんなこと前にもあったな。確か俺がまだ小さい頃、兄貴が俺に元気を出して欲しいからって無理して遊園地に連れてってもらった事があったな。
確かその時に俺が行方不明になって、見つかった時に兄貴が泣きながら謝ってきたっけ?
懐かしいな。
「なぁ、俺ちゃんと立派に兄貴やれてるかな?」
やべっ!声に出てた。
「兄ぃ?うん、兄ぃはミーシャの立派な兄貴だよ!」
顔が赤くなってくるのがわかる。
…まぁ、いっか。最終的にミーシャの笑顔が見れたから大勝利だ!
「…じゃあ、早くかえろうよ。兄貴っ!」
え?兄貴??
もしかしてこれからは兄貴って呼ばれるのか??
そんな!!
俺は、妹には「お兄ちゃん」って呼ばれたいぞぉぉぉぉぉぉ!!!!
どうも作者です。
今回は書きたいこと無理やりまとめちゃったって感じになってますね。
次回はちょいちょい影の謎とみんなのステータス辺りの事を書きたいと思っています。
今回の秋葉ちゃんは『影』の無双で特に出番はありません。
冷遇ではありません。メインヒロイン予定なので。
『レイアさん』
秋葉「なんか、最近エイル君からの痛みが来ないなぁ。ちょっと寂しい…かな?」
レイア「え?目覚めた…??放置プレイで『M』に目覚めたちゃったの??ドン引きなんですけどー。マジでちょっと嫁には来てほしくないんですけどー。ぶー!ぶー!」
秋葉「…♡////」
レイア「嘘やろっ!!??」
「はぁぁぁぁぁぁぁぁ!????」
何言ってるんだこの人は!?
妹?お、俺に妹だって?今まで一人でこの母親からの重圧を受けてた俺にもようやく身代わりができたと言うのか!?
じゃなくて!
え?このグラマラスなバディのお腹に赤ん坊が居るだって??全く母さんも隅に置けないなぁ!!
「む?エルよ、何を腹など撫でておるのだ?私は別に交尾などして妹が出来たとは言っておらんぞ??」
「こ、こぅびぃっっぶ!!??」
こ、交尾って…。
「そ、それじゃあ妹ってのはどこに居るんだよっ!!」
「ほれ、そこに。」
居た。
家の隅に隠れてた。
で、デカイ。
そう言う意味ではない。
正確には身長は俺の方が5センチ高いくらいだからデカイと言っても巨人的な意味ではない。
今、目の前に居るのは俺より二歳ほど歳下に見える女の子だ。
「なっ?妹って。母さんこの子まさか拉致してきたの!?」
犯罪だ。異世界に来てまさか身内に犯罪者を持つことになるとは。
「ち、違うのだ!この子は森でアングリーボアを狩りしてる最中に傷だらけで倒れてるのを見つけたのだ!傷を癒してやったら私から離れなくなって仕方ないから貰ったのだっ!」
だ、だめだこりゃ。反省の色がまるでみえてない。
しかし、この子。目が虚ろでまるで心が死んでしまってるかのようだ。
どっちみち放っては置けないか。
う〜ん。どう接するべきか。
と、取り敢えず名前を聞き出そう。
「ね、ねぇ君、君の名前はなんて言うんだい?お兄ちゃんに教えてくれるかな?」
「……ミーシャ」
睨みながらも返答をくれた。
「み、ミーシャちゃんか。良い名前だね!お母さんが付けてくれたのかな?」
「…おか…さん?」
「うん?」
「…お母…さん」
ミーシャはゆっくりと母さんの方を指差して静かに口を開いた。
「うおぉぉぉ!ミーシャよ。私を母と認めてくれるのかぁ!!さぁ、今度は母様と呼んでみるのだ!」
「…母様?」
「ぶふぉぉっ!可愛い!可愛いのじゃぁぁ!!」
「ちょ!?ちょっと母さん!あんまり乱暴にしたらダメだって!!」
だ、ダメだこの人…。
なんだかんだあって落ち着いたあと。
「さて、ミーシャちゃんが一先ず回復するまで家で妹として預かる事は決定したわけだが…」
なぜ心を開かない…。
相変わらず今日もどこか遠くを見つめたような浮かない顔をしている。
ここは兄として何かしてやれないものか…。
「妹を振り向かせよう作戦発令なのだ!」
それだっ!
「って母さん!?」
「うむ、中の悪い息子と娘を見ていると居ても立って居られなくてな。どうだ?地上の人たちは仲直りに一緒に街を散策するらしいのだが…。お前ら、二人で行ってみると良いぞっ!てか、行け!」
ぬぅぅぅ。い、いきなりこの無感情少女との散歩だなんてハードル高すぎるぞ!!
「さぁさぁ!さっさと行くのだっ!」
「どわぁっ!?」
「っと、その前にエルに魔法を掛けてやるのだ」
無理やり家から追い出された…。
「仕方ない、行こうかミーシャ」
俺はミーシャの手を握り。
「……ぁ、ぅ」
「転移!!」
転移と言ってもダンジョンが俺らの味方である限り家のあるフロアとダンジョンの入口。つまり町外れの洞窟の外までの送迎をしてくれる便利機能だ。ダンジョンマスターである母を持つと色々と便利ですな。
「さて、ミーシャ。町に行こう!俺が欲しいもの全部かってやんよ!」
「……ぅぅ町、いや。母様のところがいい」
あちゃー。こりゃとんだ引きこもりですわ。
仕方ない、無理やりでも連れてくぞ。
「おいっしょっとぉ!」
いわゆるお姫様抱っこだ。
「…っ!ぃやぁ!!馬鹿!下ろして!!…馬鹿兄ぃ 」
ぶふぉぉっ!今、兄ぃって!ミーシャが兄ぃて!!
「ウォォォォォォ!」
「ぃやぁぁぁァァァァァ!」
ついついお姫様抱っこの状態で町まで来ちまったぜ。
「さぁ、町に着いたぞ!ミーシャ」
ミーシャは町に着いてからはずっと俺の服の裾を掴んでいる。
まぁ、初めはこれでもちょっとずつ慣れていけばいいか。
「この町は良いところだよ。何か欲しい物はあるかい?」
と、ミーシャに聞くとゆっくりと指をさし。
「…あれ」
指をさした先にはサンドイッチ屋さんが。
「朝ごはん食べたばっかなのに…。お腹すいてるの?」
こくり。
と、ミーシャが小さくうなずく。
「すみません!サンドイッチを2つ下さい!」
「はいよ!!おっ?ミアレさんとこの坊っちゃんじゃないか。今日はガールフレンドでも連れて優雅にデートかい?はいよ、サンドイッチ2つ」
「いえ。この子は妹です。ありがとうございます」
店主からサンドイッチを2つ受け取りミーシャに渡す。店主は口をあんぐりと開けて驚いと居たが。まぁ、仕方ないだろう。
「はい、ミーシャ。ここのサンドイッチは美味しいって有名なんだ」
ハムッ!
「…おいしい」
「だろ?」
さて、次はどこに行こうかな。
するとミーシャが慣れてきたのかグイグイと服を引っ張り。
「あそこ」
ん?あそこはアクセサリーショップか!
あれは不味いぞ。あんなとこでおねだりなんてされたら間違いなく持ち金が全てとぶ!
「み、ミーシャ。あそこはやめようか」
「いやだ、あそこがいい…」
うっ、この上目遣いは卑怯だろ…。
「仕方ない。ちょっとだけだぞ!」
「……うんっ!」
なにその笑顔!
妹って、天使だわ。
さてさて、アクセサリーショップにきたはいいけどうちのミーシャちゃんのお眼鏡に叶う幸福なアクセサリーは居るのかね?っとミーシャちゃん??何をじーっと見てるのかな?それは見てるとお金って言う魔物に呪い殺されちゃう悪い物だからあっちの方に行きましょうね!
強引に連れて行った先には…。
「お揃いのミサンガか」
でもミサンガってアクセサリーっていうより縁結びってイメージがあるな。確か、自然に切れたら願いが叶うんだっけ?
…あ、あくまで妹だからな!!取り敢えず3つ買っとくか。
あと1つは母さんにでも渡すか。
「すみません!これ下さい」
「毎度ありー」
いやぁ、いい買い物をしたなぁ。安かったし。
ミーシャも喜んでくれてるみたいで何よりだ。
「さて、ミーシャ。そろそろいい時間だからお家に帰るか?」
ドンッ!
「あ、すいません!」
「ンア?なんだこのクソガキ??
うわぁ、なんかめんどくさそうな人たちにぶつかっちゃったな。
「てめぇ、なんだその目つきは。ガキがアクセサリーショップから出てくるなんざ。さては相当な金持ちだなぁ?謝る気があるんだったら金をよこしなっ!」
「おい、それも良いが隣のメスガキみてみろよ。あれは奴隷市のロリコンジジイに売ったらそれなりの金になるんじゃねぇか?」
「ヘッ、どっちにしろ金が手に入るにこしたことはねぇな。お前ら不幸だったなぁ。恨むんならこんな時間まで出歩いてた自分たちの軽率さを恨むんだな!ゲヘヘヘッ」
む、よくみたらここら辺は人通りが良くないな。
そりゃ、こんな柄の悪いお兄さんたちに出会う訳だ。
次の瞬間。
「ヘヘヘッ!メスガキゲットおぉぉ〜!」
「ミーシャっ!!」
!?
こいつ、思った以上に速いっ!!
「おらぁ!よそ見してんじゃねぇぞぉ!お前も魔族のガキって事は高く売れるんだからなぁ!!」
魔族って、なんでバレたの!?
繰り出されたのはボディブロー。
そのまま俺の腹を目掛けて…。
「いってぇ!!なんて硬さなんだこのガキぃ!!」
なんかどっかでみたことある気がするなこのやり取り。
お返ししてやるか。
「オラァッ!!」
今やられたボディブローを真似てこのゴロツキのお兄さんにお返ししてみたら。まぁ、なんと言うか。
メリメリッ!!
「カハッッ!!」
まるで尖った刃物で突き刺したかのように俺の小さな拳がゴロツキの腹にめり込んだ。
「お、俺のぉぉ。『闘神のチラ見』を持つ俺様に、こんなダメージを与えるなんてぇ!こ、こいつ、ただもんじゃねぇ…」
ドサっ。
うわっ、なんか俺も似たようなの持ってるぞ?
っと、そんなことよりミーシャは?
「くそ!そ、それ以上近づくな化け物!近づいたらこのメスガキを売り物にならねぇくらいズタズタに引き裂いてやる!!」
は?
此の期に及んでまだ、ミーシャを商品扱いするつもりか?この野郎。
「ミーシャ、兄ちゃんがすぐ助けてやるぞ!」
すこし近づいただけでも奴はミーシャの首元にナイフで軽く首を傷つけて本気の意思を見せ付ける。
あー、ダメだ。なんか、イラついてきた。殴るだけじゃすまさねぇ。
この状況、なんとか出来ないのか!?
なんとかあのナイフを持つ手だけでも止められたら…!
何度も何度も頭の中で奴の動きを封じる方法を模索したが…。
足りない、何をしても奴がミーシャの首をかっきるのが速い。
もう一人。協力者がもう一人居れば…。
しかし、今は日暮れ。元々人通りの少なかったこの道には倒したゴロツキを含め四人しか居ない。
もう一人、居れば…。
『ミーシャを殺す奴を殺せるよなぁ?』
その時。ゴロツキ2の後ろに俺と同じくらいの大きさの人型をした影が現れ、呟いた。
「な、なにっ!?」
ゴロツキ2は、突然の出来事に、ミーシャを突き飛ばした。
瞬間、影は目にも留まらぬスピードでゴロツキ2に向けて貫手を繰り出した。
『お前がミーシャを殺す前に、俺が殺す!!』
貫手はそのままゴロ2キの腹を突き破り。
「ぐぼぉっ!!ぐぁぁぁっ!!!」
ズボッ!!
ズチャッ!!
影は貫手を連打する。
いいぞ。これで、殺せる!
次第に口元がにやけてきているのに気づいていた。
「やべでっ、じぬ、、じんじゃうぅっ!!」
いいぞ。愉快だ!
「だずげっ!ゲボォォォォ…!!」
「……やめてっ!!本当に死んじゃう!!…兄ぃぃ!!」
!?
「ミーシャっ!?」
ミーシャの張り上げた声に、目が覚めたように頭がスッキリする。
同時に今目の前で起きてた現実を目視する。
影は消えていた。
ゴロ2キの腹は空洞が出来ており、見えるのは白い突起物が突き刺さった赤黒い何か。
「うぐっ!!」
その後は何も考えられなかった。
いつのまにか、ミーシャの手を引っ張ってダンジョンの入り口近くまで走っていた。
「はぁ、はぁ」
「…んっ」
ミーシャは怯えていた。また、あの影が出てくるんじゃないか?
目の前の兄がまた狂ってしまうのではないかと。
「……ミーシャ」
震えるミーシャに近づき。
優しく抱きしめる。
「ごめん。ごめんっ!俺が周りを見てなかったせいで…。ミーシャに、妹にこんな怖い思いをさせてしまった。俺が未熟なばっかりに…」
どこかで聞いたことがあるような言葉を投げ掛ける。
「…大丈夫。今の兄ぃは怖く…ないよ?」
嘘つくなよ。まだ体が震えてるじゃんか。
「こんどまた、兄ぃがおかしくなったら次はミーシャが護るから。だから、兄ぃ。泣かないで…」
泣く?俺、涙流してるのか?
そっか、そういえばこんなこと前にもあったな。確か俺がまだ小さい頃、兄貴が俺に元気を出して欲しいからって無理して遊園地に連れてってもらった事があったな。
確かその時に俺が行方不明になって、見つかった時に兄貴が泣きながら謝ってきたっけ?
懐かしいな。
「なぁ、俺ちゃんと立派に兄貴やれてるかな?」
やべっ!声に出てた。
「兄ぃ?うん、兄ぃはミーシャの立派な兄貴だよ!」
顔が赤くなってくるのがわかる。
…まぁ、いっか。最終的にミーシャの笑顔が見れたから大勝利だ!
「…じゃあ、早くかえろうよ。兄貴っ!」
え?兄貴??
もしかしてこれからは兄貴って呼ばれるのか??
そんな!!
俺は、妹には「お兄ちゃん」って呼ばれたいぞぉぉぉぉぉぉ!!!!
どうも作者です。
今回は書きたいこと無理やりまとめちゃったって感じになってますね。
次回はちょいちょい影の謎とみんなのステータス辺りの事を書きたいと思っています。
今回の秋葉ちゃんは『影』の無双で特に出番はありません。
冷遇ではありません。メインヒロイン予定なので。
『レイアさん』
秋葉「なんか、最近エイル君からの痛みが来ないなぁ。ちょっと寂しい…かな?」
レイア「え?目覚めた…??放置プレイで『M』に目覚めたちゃったの??ドン引きなんですけどー。マジでちょっと嫁には来てほしくないんですけどー。ぶー!ぶー!」
秋葉「…♡////」
レイア「嘘やろっ!!??」
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