龍の子

凄い羽の虫

3話 『狂人』

うぅ~ん、眩しいな。燃える様な光で視界が悪くて周りがよく見えない…。

『…んなさい』

そういえば俺は神様に転生させて貰ってそれで…

『この子を、…を…させるな!』

何か所々言葉みたいのが聞こえる。まぁ、いっか。とりあえず今は眠い。きっと身体は赤ん坊なのだろうから。今は眠るのがお仕事。なんだか夜中みたいだしね。

おやすみなさい。

そして深い深い眠りに落ちた。

「もう逃げ場はないぞ。悪魔め!アタシがお前らをほろぼしてやる!」

目の前には最近噂の狂人と言われる女の子。後ろには滝が。

「私はもう限界みたい。ごめんなさい。まだ生まれたばかりなのに、母親失格ね。弱い私を許して『エイル』」

そういって最後に自身が持てる全ての魔力を使って光の膜を作った。目の前の最愛の息子エイルに纏うように。

「へぇ〜、最後に子供に魔法でも譲渡したのかと思ったけど。でも、それって呪いの類よね?何をしたのかな?」

「ごめんなさい。生きてエイル」

そして、最愛の息子を滝の上から投げ捨てた。

「うっわぁ…。自分の子供なのに随分と鬼畜な事するんだね。やっぱ悪魔だぁ」

「だまれっ!狂人め!!突然、あらわれて私たちの村や家族を殺した極悪人め!!」

「はぁ?何言ってんの?君たちは魔族なんでしょ?なら悪いのは君達の方じゃんww」

「何がっ…?。私たちが何をしたっていうのよ!!」

突然荒げた声に狂人は耳を塞ぎながら

「ん〜。特に何も?でも王様が『魔族は魔王を蘇らせて人間達を皆殺しにしようとしているんだっ!』て、言ってたよ?そんで実際、魔族って悪者じゃん?てか、放置してたらいつか悪い事しそうだからね。だから…絶対に死んで」

突然、狂人と言われる女の子の周りに現れた光の玉。

「…っ、そんな。あなたは!」

バシュン!

直撃と共に左腕が弾け跳び、そのあまりの高温に肉は瞬時に焼けて血は流れて来ない。

「ギ、アァァァァあああっ!!!」

「うんうん、鳴き声からして悪者っぽいなぁ。ね?今、自分の声が聞こえたかな?あんな汚い鳴き声を出すのが善人なわけないよね!理解出来たかな?」

「うっ、ううう…人間は。人間の王は狂ってる!」

「あれぇ?痛くて涙が出ちゃった?でもまだ死なせないよ。アタシの事を極悪人だなんて言ったんだから。ゆっくりと自分が悪者だって分かるまで痛めつけてあげるんだから」

女はまるでおもちゃで遊ぶ子供のような無邪気な笑顔で笑っていた。

「…もう、これしかない」

女は右腕を前に向けてエイルに放った白い光とはまた違う真っ黒な光を狂人に放った。

「これは!?」

狂人は苦しそうな顔をした後に余裕をみせてにやけだした。

「いった〜いっ!!…な〜んちゃって!こんな攻撃痛くもかゆくもないよん?哀れな君の、最後の抵抗になるだろうからアタシの、お情けで受けてやったけど全く大した事なかったねぇ!」

「可哀想に…いいのよ。…それで大成功だわ」

女は哀れむ様な顔で余裕をみせた。

「む、何ムカつく顔してんだよ!!この悪魔ぁぁっ!!」

きにいらない女の行動に狂人は焦りと怒りを抑えられずに吠える。

「私はね、元より魔法は得意じゃなかったのよ。でも、その代わりかはわからないけど『呪術』に関してはずば抜けて得意なの。自慢じゃないけど呪術ならこの世界の誰にも負けるつもりはないわ」

その瞬間狂人は吐血し体に激痛が走った。

勇者は黒い光が当たった自身の胸のあたりを確認して。

「ぐぎぃっ!!何をしたんだ!!??」

と叫び。

「くっ…!か、鑑定!」









【名前】『新道 秋葉』

【性別】『女』

【種族】『超人』

【年齢】『?歳』

【職業】『転移勇者』

【状態】『呪い』『        』『不老』

【ステータス】

『Level』 : 「20」

『STR』  :  「2000」

『VIT』   :  「4500」−4450

『DEX』 :  「10000」+5000+20000

『AGI』  :  「3000」+20000

『INT』  :  「8000」

【ユニークスキル】

★『オリジナル:千里眼Lv5』「目が良くなる。それはもう物凄く。これがあれば女湯も覗き放題だね!ぐへへ」

☆『ギフト:必中Lv3』「DEXに補正がかかるよ!いいね!」
    
☆『ギフト:自動超回復LvMAX』「勇者は死なん!絶対に!!魂だけになってもなんとか蘇るぞ!」

☆『ギフト:鑑定Lv3』「一週間に10回まであらゆる事象を見通せる。なんだかんだ言っても私も万能じゃないから使い所は気をつけて!」

【ノーマルスキル】

『光魔法Lv8』『風魔法Lv5』『筋力強化Lv3』
『魔力増強Lv5』『瞬足Lv5』『弓術Lv8』

【加護】

『弓神の目』:「これもステータス補正だね。DEXとAGIに固定補正がはいるよ!」

☆New【呪い】

『相生の咒「受」』:「この呪いを受けた二人組は互いの受けたダメージをパートナーの防御力を使って肩代わりすることになる。呪いを受けた片方がダメージを受けて死ぬともう片方も死に至る。BADステータスを上書きできなくする』










は?呪い??しかもなんだこの呪いは『相生の咒』だと!?

「こ、これはつまりアタシがダメージを受けるとあんたの息子はアタシの防御力でダメージを受けることになり、あんたの息子がダメージを受けたらアタシが息子の紙防御でダメージを肩代わりするってこと!?そんな馬鹿な!!それじゃあさっきのダメージは!!?」

血の気が引いてくのを感じた。恐らくこの女の息子が高い高い滝の下にある地面に落下したダメージが早速入ったのだろう。

先程から光の解呪魔法「ディスペル」を放っているのに解ける気配は一向に見えない。

「この呪いははね。もともとは、昔村に来たとあるパラディンが遠く離れたか弱い恋人を護るために、一時的に身代わりになれるような咒は無いかと私のご先祖様に頼んで造らせた物よ。…あら?あなた顔が真っ青になってるわよ?大丈夫よこの咒は期限付きだから。そうね、私の息子の寿命が尽きたら勝手に消える仕組みになっているわ。もちろん、その時は相打ちにはならないから安心してね?もっとも、あの子も魔族の血が流れてるから何百何千年と生きるわ。人間である、あなたには少し酷ね」

秋葉は頭のネジが外れたかのように取り乱し。

「わ、私は超人だっ!!普通の人間よりも長生きをするんだ!!解けっ!今すぐに解いてください!!なんでディスペル出来ないんだよっ!!と、解かないとこ、殺すぞ!!この鬼畜!!」

女は覚悟を決めたかのように…。

「そう、なら余計に安心したわ。随分と長い間私の息子を守ってくれるのね。それならお嫁さんになってあげても良いのよ?」

 「ふ、ふざけんなぁっ!!何者なんだよ!あんたはぁぁ!!ちくしょう!鑑定ぃっ!!」










【名前】『レイア・マグノリア』

【性別】『女』

【種族】『魔族』

【年齢】『505歳』

【職業】『呪術師』

【状態】『瀕死』

【ステータス】

『Level』 : 「88」

『STR』  :  「620」

『VIT』   :  「400」

『DEX』 :  「700」

『AGI』  :  「300」

『INT』  :  「100000」+50000

【ユニークスキル】

★『オリジナル:魔呪変換』「魔力を使って呪いを使えるみたいだね。なんかずるい!」

『ノーマルスキル』

『呪術LvMAX』『闇魔法Lv2』『水魔法Lv1』
『魔力増強LvMAX』『家事Lv3』『料理Lv2』

【加護】

『呪神の寵愛』:「これはもう寵愛っていう名前の呪いだね。魔法の代わりに一生呪術しか使えないよ」







なんだよこの馬鹿な魔力は…

「あなたには家族も殺されて村も滅ぼされたわ。これ以上ないほどに怨んでいるつもりよ。それでも現状あなた以外に息子を、エイルを護れる強い人はあなたしか居ないわ。…私がありえないことをしてるのは分かるわ。それでも、エイルには生きていてほしい。正直あなたには少しだけ同情するわ。エイルの事、頼んだわよ。でないとあの世から呪い殺すわ。……あなたとはもう少し落ち着いてからお話したかったわ」

レイアは懐にしまっていた護身用のナイフを隻腕となった右腕で取り出し、そのまま喉に突き立てて…。

ぐにゅりっ

勢いよく血が噴水している。そして、倒れた。恐らくもう死んでしまっただろう。

「な、なに勝手に死んでるんだよ!!アタシを助けてくれよっ!!死なないでっ!!ふざけんな!!せめて呪いを解いてから死んでくれって!!」

秋葉は恐怖に歪んだ顔で涙を流していると。

「ぐっ!?っ痛いっ!!痛いよぉっっ!!」

秋葉の体に無数の啄まれたような穴が出来ている。秋葉は瞬時に発動した自動回復に助けられたがまたしても穴が出来ている。

「あぁあうぅぅぅぅっ!!」

その時目の前で自殺したレイアの言葉を思い出した。『エイルを頼んだわよ。』レイアの身勝手な言葉に聞く耳を持たないつもりだったがたった今痛みと共に理解した。

あの子を、エイル君を助けないとアタシが死ぬっ!!

「千里眼っ!!」

居た!滝壺から陸に上がっている。恐らくエイルの周りに居る『エヴィルクロウ』が掴みあげたのだろう。エヴィルクロウは群を呼び、エイルを啄んでいた。

こいつらが原因かっ!!

「その子から離れろーーー!!」

秋葉の光弾がエヴィルクロウ達に向かうが、取り乱してるため対して有効にはならない。もちろんエヴィルクロウ達も大人しく攻撃をくらいっぱなしになるはずもなく反撃をする。

『グギギャァァ』

エヴィルクロウは得意な暗黒魔法を秋葉に向かって一斉に放つ。秋葉も光弾を使って迎え撃つ。

しかし、エヴィルクロウの猛攻を捌ききれずに一発、二発と次々に命中する。

痛みは無い。

暗黒魔法とは当たった対象の視力を奪う魔法である。

「真っ暗で何もみえないよぉ!!どこ?!どこにいったの??エイル君は!?保護しないと!!このアホ鳥どもがぁぁぁ!!焼き鳥にしてやる!!」

秋葉は狂い暗黒魔法をレジストするのも忘れて光弾を乱れ打ちしてる。

周りの木や地面を抉るもエヴィルクロウを捉えた手応えもない。


そして秋葉は疲れ果てた。暗黙魔法の効果も消え冷静さを取り戻した頃には。

「朝…?」

いつの間にか日が昇っていた。

「なんだか頭にかかっていた靄が消えた感じがする。」

今なら自分の置かれてる立場、やらなくちゃいけない事。何をしたのかがはっきり分かる。

エイル君を保護しなければ…。対象を思いながら再び千里眼を発動させた。

見えない。効果が届かない所に居るのかそれとも…。

いや、アタシが死んでないって事はあの子もまだ生きてる。はず…。

「護らないとアタシが死ぬ…か」

エイル君はまだ赤ん坊だ。今は、どんな状況下に置かれてるかわからないけど、このままじゃろくな目に会わないのは目に見えてる。そして、もしもの場合はアタシも…。

「最悪だよ。あいつめ…。ただ、アタシは王の命令で勇者として最善を尽くそうとしただけなのに…王は…うぅ」

秋葉は目の前に転がっていたレイアの亡骸を抱えて村の方に向かった。

「君には、…レイアにはしてやられたよ。まさか、こんな形で新しい足枷をつけられるなんて。それにちゃっかしアタシに掛けられていた王国の『隷属の印』も解除してくれちゃってるしさ」

冷静になるまでは気がつかなかった。レイアはアタシに咒を掛けてからは可哀想な物を見るような目で見ていた事を。素で取り乱していた自分を考えるとすこし恥ずかしくなる。

そして秋葉は周りを見渡して一言呟いた。

「それでもこの罪のない魔族の村を滅ぼしたのはアタシなのか…」

きっと王国はアタシを使い捨ての道具にするつもりだろう。そんな事になったらアタシの処刑は免れない。そしてアタシが死ぬのと同時に罪のないエイル君も死ぬ事になる。

「アタシはこの罪を背負って、なお生き続けなければいけないのか。それは本当に酷だよレイア」

そして、レイアの亡骸を地面に埋めて立ち上がった秋葉は何かを決意した表情で。

「…さて、さっさとエイル君を探しに行きますか!さっきからなんかチクチクするし!」

と明るく振る舞った。

そして、行方不明になったエイルを見つけて保護するための旅が始まった。








魔族の村がある北の大地からすこし南の方にある森でこの森は霧の森とも言われていてなんらかの魔力が働いていて一度迷うと出てこれなくなる…なんて噂のある森だ。そんなところに特別に生えている山菜を採りに行っていた時のことだった。
魔物の荒々しい鳴き声が聞こえて来たので何事かと思い声の近くに行くと

『グギャギャギャアぁー!』

「むむ?あれはエヴィルクロウか。啄んでいるのは籠?いや、あれは魔族の赤ん坊なのだ!?」

これはいかん!助けないと!!

「ファイアジャベリン!!」

炎で出来た槍をエヴィルクロウに命中させその体を燃やし尽くす。

しかしその炎は赤ん坊の体にも燃えうつり…。

「うわわわっ!やばいやばいのだ!え〜と『アクアウェーブ』!!」

水の波が赤ん坊を包み込み回転させながら鎮火させてく。

「ふぅ、怪我は無いかい?って寝てるのか」

てか、そもそも赤ん坊が喋るはずもないのだ。

それにしてもこの子どうしよう。まさか私の家に連れてく訳にも行かないし。かと行って放置なんて論外。あとは人間の街にこっそり置いておくとか?

いやいや、それこそ論外だ。悪い人間が拾って奴隷市なんかに売られてたら寝覚めが悪いぞ!

いや、しかしこの子魔族だし。珍しいからきっと高く売れると思うのだ…。

ゴクリっ……。

さ、最近酔っ払ってお店のみんなに大盤振る舞いしてしまったんだよなぁ…。

脳内で変な葛藤をしてるうちに赤ん坊は目を覚ましていた。

そして。

「ひゃあ!お、おはようマイべいびーちゃん!!ママは売ろうなんて全く考えてないよぉ?ほーらたかいたかーい!!」

値段もね!

いやいや、嘘嘘!!

そんなにじっと見つめないでくれよぉぉぉ!

うぅっ、よく見ると赤ん坊って可愛いのだ…。

……よし決めた!お持ち帰りなのだっ!!

「じゃ、じゃあお家に帰りましょうねぇー。それっ、転移っ!!」

女性は赤ん坊を抱えて魔の森から消息を絶った。







どうも作者です。

またしても主人公視点が書けなかった。
とりあえず自己満足の作品なので個人的良エンドが書けるまでは続ける予定です。

そして『今回の秋葉』のコーナーです。

このコーナーは主人公がダメージを受けるたびに秋葉ちゃんにダメージが届くさまを見届けるコーナーです!





秋葉「いったぁ!いた!いてててて!!やっぱりまだエヴィルクロウの所に居るんだねエイル君!あの鳥どもさっさと駆逐してやる!早く助けに行かないと!!ってあっつぁぅぅい!!!こ、今度は何ぃ?エヴィルクロウが炎魔法なんてそんな馬鹿なっ!?」

バッしゃぁん!

秋葉「あわわわわっ!み、水っ!?し、しかも叩きつけてくるしっ!!さ、さすがにエヴィルクロウじゃないよね!?エイル君一体どんな目にあってるの!?」


『レイアさん』

レイア「王国に命令されてたからってべ、別にあなたの事許した訳じゃないんだからね!」

秋葉「…アタシにダメージ与えるために滝から息子を放り投げる鬼畜親のくせに」





一応のご報告です。

1話の矛盾点を修正しました。

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