勇者に惚れた元魔王が嫁になるそうです

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ニュースイートメモリー

「よし、次は大広場に行こうか」
「大広場には何があるのじゃ? 」
「今、大広場でソフトクリームを売ってる業者が来てるんだよ」
「そふとくりーむ? それはなんじゃ? 」
「とっても美味しいものだよ」

 大広場に着くまでルヴィアに質問攻めにあったがのらりくらりと躱して大広場に着く。大広場ではすでに多くの人が並んでいた。

「ここに並ぶのじゃな」
「そうだよ、この調子だと30分位かな」

 最後尾と書かれた看板を持った猫人族の女性の隣に並ぶ。予想よりも早くソフトクリームを買えたので広場にあったベンチに座った。

「これがソフトクリームなのか? 」
「そうだよ、とっても美味しいから食べてみてよ」
「ふむ、それじゃぁいただこうか」

 ルヴィアはソフトクリームの上からパクッと小さな口を精一杯開けて頬張った。

「ん、ん〜〜〜〜〜確かに美味いの! のうアレク! 」
「でしょ〜ここのソフトクリームは他の街よりも美味しいんだよ」
「なんじゃと!? 他の街にもあるのか!? 」
「うん、ここは今食べてるバニラソフトが一番美味しくてね、王国だとチョコソフトが美味しいよ」
「チョコソフトのチョコはチョコレートのチョコなのか?」
「そうそう、チョコレートを練り合わせてチョコの味がするソフトクリームができるんだよ。この街の次は王国にしようか? 」

 ルヴィアに次の街は王国に行きたいかなと思ったから聞いてみたが返ってきた言葉に息を詰まらせた。

「王都もいいが次に行きたい所は決まっておる、アレク、おぬしが生まれた村が見てみたいのじゃ」
「俺の生まれた村? なんでだ? 」
「おぬしが生まれた村なのじゃぞ、見ておいて損は無いのじゃ。それにおぬしの両親にも会ってみたいしな」
「.....父さん達はもういないよ」
「そ、それはすまんかった。やはり魔物の侵攻で亡くなったのか? 」

 魔王は世界中に魔物を送り村や街を侵攻していた、俺の生まれた村も襲われたがそこまでの被害は出ていない。

「違うよ俺の両親は騎士団に殺されたんだ。俺を勇者に育てる為に親の存在は邪魔だったそうだ」
「そんな、では家族はもうおらんのか? 」
「そうだね、じいちゃん達も死んじゃったから誰もいないね」

 勇者は絶対に勝たねばならず、敗北は許されない。勇者が敗北してしまえば人類の敗北となってしまうからだ。それに勇者が恋愛をしている場合ではなっかたから家族になった人はいない。

「アレクよ、我と家族になれ。魔王の家族は沢山おるしの、何も問題はないのじゃ」
「それはプロポーズかな? 」
「我はプロポーズでも構わんぞ、アレクの事なら知っておるしの」

 ルヴィアを照れさす為に返した言葉がカウンターで返された。顔が赤くなったのは俺の方だった。

「そ、それは魅力的な提案だね。だけどルヴィアはまだ結婚できないんじゃないの? 」
「この国に結婚適正年齢とかないじゃろ、それにこの体でも子を産む事もできるのじゃ」
「その情報は知りたくなかったな! 」
「それで、どうするのじゃ? 我の様な良い女は他にはおらんぞ」
「それ自分で言うかなぁ!? 」

 なんか、数分の間で精神ポイントがガリガリ削れた。

「我はアレク、お前に家族になって欲しいと思う。さっきの話を聞いてなくても隣にはおぬしにいて欲しいのじゃ」

 俺の負けだよ、こんな美少女に真っ直ぐに隣にいてくれと頼まれて断れるやつがいるなら見てみたいものだ。

「わかったよ、けど結婚はまだ待ってくれるか? 結婚するなら準備をしたいからね 」
「ほんとうか? なら我はこれからおぬしの彼女・・・になるのだな」
「どっちかっていうと婚約者かな」
「婚約者か、なるほどいい響きだな! アレクは我のどんな所が好きなのじゃ?」
「急だね、まずはすごく強い所。それにとっても優しくて可愛い所。美味しい物を食べた時のルヴィアはとっても可愛いよ。それにあの時の戦いでお互いのことは大体分かってるでしょ、三日三晩も戦い続けたら癖まで分かるよ。そして一番好きな理由は隣にいて欲しいって言われた時、俺も隣にいてくれたらいいなって思ったからだよ」

 ルヴィアの好きな理由を並べていく。ルヴィアへの想いはこんなものじゃ足りない。

「も、もうよい! これ以上は恥ずかしいぞ! 」
「もういいの? まだまだあるのに」
「我がいいと言ったらいいのだ! 」
「しょうがないな〜それじゃあ次に行きたい所はない? 俺は連れて行きたい所があるんだけど」
「それならおぬしの連れて行きたい所に連れて行ってくれ、我の旦那様・・・よ」

 そう言ったルヴィアの顔はこの世界の何よりも眩しく輝いていた。

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