朝起きたら女の子になってた。

スライム3世

いつもと少し変わった朝



ピーピーピーピーピー

「……んんぅ」

ピーピーピーピーピー パシィ!

「……目覚ましつけてたな」

パソコンを付けずにカーテンを開けて窓を開ける。空は雲もなく快晴の日だ。しかし、何か気掛かりな事がある。

「ん〜あれ? 体が重い。それに……」

視点がいつもよりも高い?

「なんと!」

俺は自分の部屋を出て洗面台まで一気に走る。

「戻ってる……」

小さかった体は元の大きさに戻り、可愛かった顔はブサイク……とは言わない顔に戻ってる。そして、衝動的にズボンを脱ぐと……パンツの上からもっこりと息子が挨拶をしている。

「おぉぉぉぉ」

俺は階段を再び登って紗香の部屋に突撃する。

「紗香、元に戻ったぞ」

しかし、紗香は起きていて着替えの途中であった。

「お、お兄ちゃん。入ってこないで! ……恥ずかしいよ。勝負下着じゃないんだから。って、いつまでここにいるつもりなの」

違う。紗香の反応が明らかに違う。それでは、まるで俺が元から女の子になっていなかったかの様に。そして、気がついた。寝巻きが男用の服であったことに。昨日っていうか今日、寝た時に着ていたのはねずみ色のパジャマワンピースであったはず。

「……」
「お兄ちゃん?」

嫌だ。

「嫌だ……」
「え?」

約半年間、女の子になった姿で暮らしていた記憶は俺にはあるのに、紗香にはない。俺は堪らなくなり、紗香の部屋を飛び出してリビングに向かう。

「母さん!」

そう呼ぶと、一瞬驚いた表情をした母さんが台所で料理を作りながら言ってくる。

「ど、どうしたの、樹?」
「……」

違う、沙雪じゃない。こんなのは嫌だ。

どうして?

 どうして、男に戻れたのに全然嬉しくないんだ。それよりも、凄くイライラ・・・・してくる……。


*****


「ングゥ……重い……」

何かが上に乗っている様な圧迫感を感じて目が覚めた。寝起きが最悪過ぎる。それに悪夢を見ていた様な気がする。

「やべ、気持ち悪い」

重い体を無理に起こして、2階にもあるトイレに向かう。

「うぐっ……」

お腹が痛い。いや、お腹より少し下の部分が痛すぎる。腹痛の比ではない。腹痛はチクチクより少し痛い感じだが、今の状況はそのチクチクではない。ドンドンと痛い。うん、例えが下手過ぎた。忘れよう。

って、そんなことを考えている間にも痛みが増してくる。

「ぎゃぁぁぁぁぁ」

遂には、呻き声を出してしまう。

そして、便器の水面にポタポタと音が奏でられる。しかし、何かおかしい。ポタポタと音が奏でられる度に、便器の水が濁っていくのだ。いや、黄色なら可笑しくはない。だが、赤はないだろう……。

「沙雪? どうしたの?」

さっきの呻き声が聞こえたのか紗香がトイレにやって来た。まぁ、姉貴はこの時間帯、爆睡してるから来ないけど。

「お腹の下辺りが痛い……」
「そうなんだ。ちょっと待ってて」

トイレのドアの向こう側にいた気配が遠のいていく。

(流石に、血が出てると言ったら驚くだろう)

それで、この状況は何となく分かった。おそらく俺が昔、紗香にぶっ飛ばすとか言ってた症状の事だろう。実際に味わってみると分かる。

ーーこんなのぶっ飛ばせる訳ないだろ……。

その後、トイレの鍵を1円玉で開けて紗香がオムツを持って侵入してきた。その時の紗香の顔は、笑いを堪えるのに必死だったと言えよう。


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