朝起きたら女の子になってた。
旅行 part24
二度寝をしてから2時間ほどが経ち、7時になった。その時間帯になると、姉貴と紗香は起きはじめたが、俺だけはぐっすりと眠っていた。
「……起きて〜」
「……ぐぅ〜〜くぅ〜〜……」
「……起きないの?」
「……すぅ〜〜……」
(んぁ?)
「沙雪が起きないなら、いたずらしちゃうからね」
布団の中に紗香は侵入して、俺のお腹に襲いかかる。
「必殺!六十八手!」
紗香の手が俺のお腹に連続攻撃を与える。
「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁ」
ーー沙雪さんは3463の大ダメージを受けた。
ーー沙雪さんの残りのHPが2500になった。
「起きた?」
「あぁ、起きた」
紗香が布団の中から脱出してから、俺は体を起こして欠伸をした。そして、切り出す。
「腹減った……朝ごはん食べに行こ」
「起きて早々だね」
紗香は俺の頬っぺたをさり気なく、ぷにる。
「ぷにるのを止めてくれ」
「じゃあ、優しく摘む」
「同じ意味なんだが」
「なら、ぷにる」
「同じじゃねぇか」
俺と紗香が戯れていると母さんは、徐に上着を羽織って玄関に向かう。
「それじゃあ、食べに行きましょうか」
その言葉を合図に、母さんを先頭に朝食バイキングへと赴くのである。
*****
バイキング会場に着いて、席に案内されてから料理を確保しに向かう。
「さて、今日は何にしようかな」
俺は美味しそうな料理が並んでいるのを見ながら、食べたい物を少しずつ皿に入れていく。
「あ、あの、そこのおねえちゃん」
近くからそんな可愛らしい声が聞こえてきた。だが、俺は人違いだと思い反応しない。
「おねえちゃん?」
可愛らしい声を発する子が俺の腰をペタペタと叩いてきた。そこでようやく、俺は反応した。
「何だ?それに呼ぶなら『お兄たま』と呼べ」
俺がその可愛らしい声がした方を見ると、見たことのある小さい女の子がいた。
(俺が温泉の脱衣所で測定した小学2年生ぐらいの娘だ……)
若干、俺が居心地悪そうにしている中、女の子は可愛らしく首を傾げて聞いてくる。
「『おにいたま』? おねえちゃんは女の子だから、呼ぶとしても『おねえたま』じゃないの?」
「ど、どっちでも良いよ……それより、何の様だ?」
純粋な可愛い目で見られて、反論できない沙雪さんである。
「あ、そうだった。わたしね、アイスが取りたいの。だけど、重くて取れなかったの」
女の子が指を差した先には、デザートコーナーの方だった。
「う〜ん……」
「『おにいたま』おねがい、取って?」
「よし、良いだろう」
沙雪さんは小さくて可愛い女の子には、優しいのである。決して、『おにいたま』と呼ばれたからではない。
「ありがとう!」
アイスを取りに行くにしても、皿を持っている状態なので、一度席に皿を置いてから、デザートコーナーに行く。母さん達は、まだ席にいなかったので良かった。
(ロ○コン疑惑を持たれるのは、嫌だしな……)
「『おにいたま』早く早く〜」
「押さないでくれ〜」
女の子に押されてデザートコーナーに着いた。
俺は早速、アイスがある場所まで行き、女の子に訪ねる。
「どの味が欲しいんだ?」
種類を見たところ、バニラ、イチゴ、チョコチップの三種類の味がある。
「全部欲しい!」
「全部か……」
俺はディッシャーを右手で持ち、アイスを入れる皿を左手で持つ。
(いざ、入刀!)
最初は、バニラアイスを掬う。
しかし、ガリガリと表面部分が削れるだけで取れない。
(ぬぅ……)
今度は、皿を手短なところに置いて、両手でバニラアイスを掬ってみる。
「ふぎぃ」
変な声が出たが今度は上手くいった様で、無事バニラアイスを取ることに成功。それを皿にいれる。
続けてイチゴアイスも同じ様にして掬うのに成功した。
イチゴアイスは、バニラアイスの上に乗っけた。
そして、最後にチョコアイス。
(よし、最後じゃ)
ディッシャーをチョコアイスの表面に突き立て、力一杯押し込む。だが、予想外の事が起きた。チョコアイスは思いの外、柔らかくてズボッと入ったのだ。
(あぶねー、もうちょいで手をつけちゃうところだったぜ)
気を取り直して、チョコアイスをディッシャーで掬い、イチゴアイスの上に乗っけた。
「出来たぞ、アイス三段盛り」
「わぁ、ありがとう、『おにいたま』」
俺は、ディッシャーを元にあった場所に戻して、アイス三段盛りが入っている皿を女の子に渡した。
「じゃあね、『おにいたま』〜〜」
「またね〜〜」
俺は、笑顔で女の子に軽く手を振りながら見送る。
(あぁ、可愛いかったぜ。紗香にも『おにいたま」って……あ、それは無いな)
そんな事を考えながらも、俺は自分の席の方に戻って行くのだった。
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