朝起きたら女の子になってた。

スライム3世

旅行 part2



(エア)取材を終えた俺は、搭乗時間になったので飛行機に乗り込んだ。席は乗ってから前の方の中央の4席を家族で占領した。

左の席から順に、母さん、紗香、俺、姉貴の順番だ。

しばらく座っていると離陸のアナウンスが流れて、飛行機が動き出す。離陸をする時に俺は来るであろう現象を身構えていたが来なかった。

(そうだった、今の俺は息子の象さんがいないからタマヒュンはしないんだったな…)

こんな所でも女になった事を自覚させてくる。

離陸して少し経つと、シートベルトの着用のランプが消えて席を立つ人もぞくぞくと増えてきた。その中でも姉貴はテーブルを出して真っ先に突っ伏した。

「着いたら言ってくれ」

そう言い残して早々に寝息を立て始めた。

(早えよ! でも、寝てる時の姉貴は新鮮だな。お淑やかだった姉貴を思い出す。あの時に俺が強かったら姉貴は昔のままでいられたのか?)

心の中で問いかけると姉貴から寝言が聞こえてきた。

「私を……そんな……慈愛の目で……見ないでくれ……」
(何が慈愛だよ!)


*****



飛行機が離陸してから1時間ほど経過した。

母さんはブラックコーヒーを飲みながらイヤフォンをしている。おそらく音楽を聴いているのだろう。姉貴はずっと寝ている。変わったと言えば寝る体勢だけ。紗香は……、お絵かきしていた。かわいい事をしていらっしゃる。

「何描いてんだ?」
「青森に行くからホタテ描いてるの」

そう、紗香の言っていた通り、俺達は青森へ旅行に行く。青森と言えばりんごとかホタテだな。そこで紗香の描いているホタテを見る。

「このホタテ小ちゃくねえか?」

俺が指をさしたのは3匹描いてあるホタテの中で一番小さいやつ。

「これは、子供だからいいの」
「じゃあ、この寄り添ってる2匹のホタテは何だ?」
「私とさゆホタ」
「俺がさゆホタなら紗香はさやホタか?」
「違うよ、私はさやタテ」
「ネーミングセンス無さ過ぎじゃねぇか」
「良いの、大事なのは名前じゃなくて形だから」
「そんなもんか」
「そんなもん」

てか、紗香が絵が上手いの知らなかったわ。ホタテを美少女化したの描いて欲しいな。まぁ、そんな提案したら白い目で見られるから言わないが。

「そういえば、紗香はこの旅行の事、いつ知ったんだ?」
「3日前ぐらいだよ」

この格差よ!出発数時間前に伝えられた俺はどうなってんだ。

*****


それから数分後に飛行機は着陸体勢になり無事、着陸した。

姉貴は着陸の反動を受けても寝続けていたので俺が揺すって起こした。

飛行機から降りて空港の広間に出ると気温がグンと下がった。

「寒っ…、おい、沙雪は私の暖房になれ」

姉貴はそう言って俺を抱き上げて暖を取る様に密着してきた。そうすると、紗香よりも大きい姉貴の豊かなお胸様が俺のお腹に当たって主張をしてくる。

「ちょっと、まて、恥ずいわ」
「別におかしくないだろ。沙雪は小さいし周りの人達からは私の子供だとおもってくれるだろ」
「変な刷り込みすんな!」

だが、この姉貴のお胸様ベッドは質が良くて中々…

「ムッツリめ」
「!?」

*****


空港から出て宿泊するホテルまでは観光バスに乗って行く事になった。バスガイドに案内をされながら行く……のは良いのだが、他の客もいるのに関わらず俺が座っている方まで来て、話しかけてくるんだが?

それに加えて、バスガイドに姉貴が俺の名前をばらして「沙雪ちゃん」と読んでくる始末…。小さい子が俺しかいないからと言って俺の方に来ないでくれませんかね?

「ねぇねぇ沙雪ちゃん、ここは何県でしょうか?」
「青森」
「ぶっぶー、青森でした~」

(くそうぜぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ)

「青森に旅行に来た沙雪ちゃんは何をするご予定ですか?」
「ホテル行って休む」
「そんなぁ、つまんないよ~」
「何でそんな事言われないと、いけないんだ?」
「お姉さんは、お仕事しているのよ?お客様には楽しくご旅行を満喫して貰わないといけないの?分かるかな?」
「それを客に押し付けるんですね…。そろそろ他の人のところに行ってくださいよ。具体的に言うと前にいる人紗香とか」
「嫌です!沙雪ちゃんと一緒にいたいの」

その言葉を聞いていたのか紗香はこちらに顔を出してきた。

「さっき、バスガイドさんはお姉さんって自分の事言ってましたけど、おばさんの間違いでは?」
「あら、最近の子はジョークがお上手ですね、お客様?」

何やら不穏な空気が…

「ジョークも何も本当の事を言ってますよ」
「またまたご冗談を」
「いえいえ、本当の事なんです」
「冗談は顔だけにして下さいね?」
「冗談なんて言いませんよ」
「またまた…」

カット!


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