朝起きたら女の子になってた。
再び沙雪ちゃんの人格が出たところ。
「ええっと、さゆきかみしろ…え、紗香の妹?」
「違う!お兄ちゃんだ!」
「そ、そうなんだ」
「ごめんね、莉奈。うちの妹、虚言癖あって変な事言っちゃうかもしれないけど見逃してね」
「あぁ〜 そう言う年頃だもんね」
(ひ、酷い…)
「とりあえず教室行こう」
紗香のその一言でこの場は一旦終えて教室に移動する事になった。移動した先の教室のクラスは1年3組でこれから通う教室だ。
「莉奈は、先に入ってて。私は沙雪に言う事あるから」
「分かった、また後でね」
「うん」
紗香のお友達が教室に入ったところで紗香は俺に耳打ちしてきた。
「学校にいる間は、私の妹役やって。それで出来るだけ愛想良くがいいかな」
なんて言う無茶振りだ…
「俺には出来ん!」
「あ、一人称も俺じゃなくて私にしてね」
追撃が来たぞ。どうすればいいんだ…俺じゃなくて私…妹…愛想良く…あぁ〜頭がぐるぐるする……
そして、
俺の頭は許容量を超えてパンクした。
*****
「沙雪〜、大丈夫?」
沙雪がどこかうっとりとした表情になっている。紗香は心配になって声をかけてみるが…
「あ、紗香お姉ちゃん…ごめんなさい…」
「ッ!?」
いきなり沙雪は紗香に謝ってきた為、不意打ちを受けた。
(ど、どう言う状況?何の事だろう… 嫌な予感が……)
「な、何の事に謝ってるの?」
勘違いであって欲しいと思う紗香の考えは次の言葉で確定的になってしまった。
「だって、紗香お姉ちゃん、私の事ビンタしたでしょ。だから、怒ってるんでしょ…」
(ビンタ?もしかしてあの時の沙雪!)
あの時の沙雪とは、制服を売っている店で沙耶が無理矢理、制服を沙雪に着せた事によって現れた人格の沙雪ちゃんである。
そこで紗香は高速で嘘の出来事を頭の中で創り出した。
「怒ってないよ、沙雪の頬っぺたに蚊が止まってたから叩いただけだよ」
「そうだったんだ、ありがと。紗香お姉ちゃん♪」
「ど、どういたしまして」
(不味い…このまま戻らなかったら…… また、ビンタしたらいいのかな?いや、それは可哀想だし…あぁ〜もう、どうしたらいいの……)
「紗香お姉ちゃん?」
(いや、この状況を利用したらいいんじゃ?)
「ねぇ」
(それでいこう、この状況は案外良いかもしれないからね)
「沙雪、教室入ろ…うか?」
「……」
沙雪が泣きそうな顔になっている事に気付いた紗香は言葉が途切れそうになりながらも提案した。
「やっぱり、怒ってるんだ。だから、無視したんでしょ… ねぇ、私のどこが至らないの?ちゃんと直すから、お願いだから嫌わないで……」
紗香は予想外の返しに呆気に取られてしまったが、自分が何をすれば良いか直ぐに気づいて行動に移した。
それは、沙雪を抱きしめる事。
「ごめんね、ちょっと、考え事してたの。私が沙雪を嫌うわけないでしょ?」
「本当…?」
「そうそう、むしろ大好き。食べちゃいたいくらい」
「ありがと」
(そこ、礼を言うところなの?)
「もう大丈夫だよ。だから、教室入ろう?」
「そ、そうだね」
(あれ?こっちの沙雪ならショッピングモールで記憶が無い筈だよね?学校にいて不思議そうにしてないのは、どうしてなんだろ?)
そうやって悩む紗香だったが、その疑問は直ぐに消えていった。
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