世界を渡る私のストーリー
彼らはそうして別々の方へと向かう
大魔王ミズキ
異世界に呼ばれた女子高生だった人間。
母親が元勇者ということで、同じ世界に発生した魔王を倒すために呼ばれる。
魔王を倒す冒険の際に仲間の1人に恋をしたが、魔王討伐を終えた後に女神から元の世界に帰るように言われ絶望、狂気に堕ちて勇者の力で女神を殺し世界を狂乱へと導いた。
「…その説明に何の意味があるかは知らないが、我がそうだとして解放云々は別であろう?仮に解放するとして我に何のメリットがあろうか」
終わりから始まる世界…時間の巻き戻しが君の願望だろ。
「…」
あの全てを背負わされた影が行うことは全ての命と世界を消滅させることだ。それは言うなれば、もう一度世界を創造するチャンスがくるかもしれないと、君はそう考えた。
もっとも、全ての命を無くすなんて考えの影に隠れてそんな思惑を実行に移すことが可能かどうかはわからないが。
でも君は影を解放した。
それこそ僅かな希望に縋るために。
「…その眼はそこまで読めるか、我は今心の底からその神眼に敬意と殺意を持ったぞ」
お褒めに預かり光栄。
まぁさっき見ただけで語っただけだし、私としても即興の推理だけどね。
しかし、ここまで見ながら言うが…どうしてこんなあべこべのやり方を選んだ?
こうした理由は分かるが、綴ちゃんをその影の封印に向かわせる際の感情がよく分からないんだが。
「なに、貴様でも我のこの気持ちは分かるだろう。この世の森羅万象の運命が予め決定されている世界に、神ですら観測は愚か予測すら不可能のあの影を解き放てばどんな結末がくるのか」
…なるほど、合点がいった。そう言うことか。
「少し話した程度で理解するな人間、例え神ですら見破るその便利な眼で以ってしても、我の思惑など到底見破れぬよ」
それは結構、こうも素直じゃない人の思惑を見抜くのも疲れるものだからね。
さて、あちらも…過去に向かって言うのも変な言い方だが…終わったようだよ。
「これで最初の戦いは終わった。あとは…」
ーワシの好きなようにしていいんじゃな?
「あぁ、好きにするがいい小虫。綴を追うなり憐れな異世界転生者を弄んだり好きにしろ。我はただお前をこの瞬間までここで引き止めるだけの存在でしかないからな」
ーカカカ、落ちぶれた救い人が言うにしては様になるのぉ。世の理に逆らう者同士なのだからもう少し砕けた感じでも良かろうに。
「我はお前みたいなのは嫌いだからな。神を喰らい続けて数億年、存在が複数の異界を歪める程までに成長した芋虫などは特にな。そもそも、小虫と我を同一視するなよ」
ーそうかそうか、過去に飛ばしたあ奴らの奮闘などここにいる過去に縋り続ける頭の足りない魔王擬きのおかげで無駄になるというのに、そこまで偉そうに言葉を使うか。カカカ、なるほど、コレが絶対的な地位にいると勘違いした馬鹿の傲慢というものかー
「…ふむ、確かに。こんな虫に癇癪を抱く方が悪いな。いやすまない虫ケラ」
ー足止めならその命が尽きるまでやってもイイんじゃぞ?ー
「ンだコラやんのかテメェ」
はいはい、落ち着きなよ2人とも。
とにかく、過去へ行った事は終わり歴史は通常のものになったんだ。
これが今に繋がるのだから、後は彼ら彼女達に任せるんだ。
私たちがこの空間へ留まるのも時間の無駄だ。
「それもそうだな」
ーふむ、お主達の世界もその目も食いたいが、それはいつかの夢にしておくかの…ー
そうそう、ほら早く私を元の世界に戻してもらえないかな?
早く戻って3時のおやつを頬張りたいんだから。
「…貴様、異界を食べる化け物や魔王の前でそれが理由に戻ろうと催促するとは…改めて肝っ玉が据わってると褒めてやる」
ーカカカ!これは愉快な人間だ!危ない空気を難なく絆し、その理由は些細な幸せのためとわな!これには流石に食う食わない以前に勿体無く思うほどじゃな!ー
お褒めに預かり光栄…まぁ私はこうでもしないと語り手という役目は務まらないからね。黙するより語れ、それが私の信条であり、私という人間が持つ唯一の特異性なのだから。
さて、ではここで幕を閉じようか。
「…では、我もサッサと帰って綴達の行く末を見つめるか」
ーワシはその進路を妨害でもするかのぉー
では、ここでこのこのお話はおしまい。
謎と疑問と勝手に語られる物語は、なんとも不愉快で気持ちの悪いものだろ?
でも続くのさ。
終わりが本当に終わりか、そこで進むか止まるかで世界が変わるか、その夢想に悩むのが人なんだから。
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