世界を渡る私のストーリー

鬼怒川 ますず

ある神話の世界3

『聞こえますか?過去の私』

「な、何ですかこの声は…!?」

「ぬぅ!我輩にはペルノマリアの声に聞こえるがお主が言ったのではないのか?」

「ち、違いますよ!」

デザルマハザルが懐疑の目で私を見るが、私も驚いているから違うはずだ。

『あーはいはい、お話を聞いてくださいね。私がこうして声を出せるのも少し訳ありなんですから』

声はこちらの様子に構わないように一方的に話し出す。

『私はこの世界の未来にいるペルノマリアです。初めまして過去の青二才の私』

「み、未来の私…?なんで」

「騙されるなペルノマリア。よく考えよ、この状況で未来のお主がいるとしたら、それはこの状況を脱したということになる。しかし現状ではそんな奇跡を起こすほどの材料もないのだぞ」

言われてみて気づく。
今の私は死ぬ覚悟をしている。
もしここまで責められてしまった時にこの世界を道連れにして、あの巨悪を滅ぼす。
もし未来があるのなら、この状況をどう脱したのか。

『ったく、デザルマハザルってここまで物分かりがわかんない人だったかなー?未来の私がいるってことは、今からそこの青二才に救いの手を出すってことなんだっての』

「その話を信じろと?それに未来からという話からしてあり得ぬな、神が未来や過去などを自由に行き来するには理りを変えねばならん。それこそ悪が行う行為故に神聖な神が行えば天上の者共に制裁を食らうだろう。それも分からずに我輩達を騙そうとするか」

『そこなんだよな、訳ありってのは』

未来の私は乱雑に、何故か今の私よりもやさぐれた様子で話します。

『違う世界の大魔王ってやつが急に私にお願いして来てさ、何でも過去のこの世界に人を3人送りたいとかで頼まれてさ』

「ぬぅ、それでは貴様はその大魔王の力を使って今の我輩達に語りかけているのか」

『そういうこと、本当なら大魔王の時点でお断りなんですが、あいつはあれで元勇者ってこともあってねぇ…』

「で、でも人を連れてくるということは異世界召喚でしょうか!?そうだとしたら戦力になれないと思います。あまりこちらの力も乏しくて、あの闇に対抗できる武器も魔法もないですよ」

『あははだよねー、だからこそだと思うよ。過去の私も同じこと言っていたし、同じように思っていた。でも安心して、少し史実と変わるだろうけど、これから起こる事は未来の戦いを優位にするだけの実力を持っていると思うから』

それはどういう事だろうか。
私が未来の私の声に問う前に、突然背後に何かが開く音がした。
私とデザルマハザルは振り返って怪音のする場所に目を向ける。
そこには黒い穴が開いており、その穴から3人の女性が出て来た。

1人は黒い髪の少女で、その後から背が高く白い鎧を着込み、背中に立派な翼を持つ髪が長い綺麗な女性。
そしてその後から大事そうに禍々しい剣を抱く最初に出て来た少女よりも少し小さい茶髪の少女。
一見して標準以上に綺麗な顔をしている彼らは自分たちを眺めている私たちに気づいて聞いてきくる。

「あれ?なんかお取り込み中だったのかな?」
「というよりも、この世界は何だ?暗くて仕方がない」
「お、黄金の竜がいることに驚かないんですね」
「似たようなの見てたからね、お邪魔してすいません。さてと、彼はこの世界のどこにいるのかな?」

彼らは私たちの姿に少しも驚きもせず、方向転換して何処かへ行こうとする。

『おーい!今回のあんた達の仕事は人探しじゃなくてあれと戦ってもらうんだよ!』

呆気にとられる私に代わって未来の私が止めてくれた。
人探しという言葉に気づいたのか、先頭にいた黒髪の女が私たちの方を向く。

「…あまり神様同士のいざこざに巻き込まれたくないんですけど、人探しを知っているのならあなたは私を知っているようですね。あなたは誰ですか?」

「いや私ではなくて、未来の私が言ったのですが」

『とにかく話を聞いてくださいな、今後のことにもつながると思いますので』

私が喋り終わった後に未来の私の声を聞いた少女達は少し考えましたが、やがて私たちに向き合います。

「それで、話って何?」

黒髪の少女に言われたので私と未来の私は事情を説明し、デザルマハザルも詳細を教えます。
黒髪の少女はあまり驚かずに話を聞いていますが、傍にいる女性と茶髪の少女は難しそうに顔をしかめます。

「この世界の闇か…我々だけで何ができるかも分からんが」
「この魔剣で倒せないものはいないと思いますが、相性がどうか…」

2人はそう言って持っている武器を見る。
よほど心配な様子で、私もドキドキしてるんですけどね。

「そういえば魔王からは他に聞いていないの?」

『えーと、確かあいつからの言付けだと「ツヅリの想い人の行方を教えるから、先に影を封印なり消すなりしろ」だったかな?』

「要するに引き受けろか、急に世界を渡ってきて行方を教えるなんて面倒なことをするのねあの人」

『それは同意しかねるかな…っと、もう時間が無いからとりあえず頑張りなさいよ』

え、もう帰るの!?
私とデザルマハザルは急いで声に問います。

「待って!あの闇を退けさせるにはどうすればいいの!?」

「そうだ!今更こんな小娘どもが増えたところで我輩達にどんな勝機があるというのだ!!」

『神様なんだから自分で考えてね、少なくともあの時の私たちはそれで勝てたんだから、人間に少しは期待しなさいな。それじゃ」

ブツリと線が断たれたように声が聞こえなくなり、辺りには遠くで作業を行う人々の声が小さく聞こえるのみだった。

デザルマハザルと私は顔を合わせてどうしようかとお互いの顔で会話する。

「なんか前の世界と同様におかしなことに巻き込まれたな」
「まぁこれが終われば彼の行方を教えてくれるんだから、報酬としては良いと思うけどね」
「でも戦いとかってあまり慣れてないんですが…私は本当に役に立てますかね」
「リアンはその剣を振るえば大地を消すほどなんだから、充分に活躍できると思うが」

すぐ近くで3人の少女が談笑しているが、私たちはそれどころではない。
これでどうするか、デザルマハザルと私はこの時はまだ何も出来ないでいた。

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