世界を渡る私のストーリー

鬼怒川 ますず

ある神話の世界1

世界が始まってから1000年しか経っていない頃。
知性ある生命が生まれ、様々な種族が現れた。
種族ごとに集まった彼らは、それぞれの縄張りを決めて種族間で繁殖する。
子が生まれ、その子からまた子が生まれ、そこからどんどんと広がっていく。
やがて小さな縄張りがどんどん広がり、1つの村へと変わる。
そして食生活も肉から山菜や木の実、穀物などに変わり、住む場所も穴蔵から屋根のある一戸建てに変わる。

技術も知恵も身につき、特にエルフ族は魔法に長け森と共存し、ゴブリンなどの亜人は小さいながらも懸命に知恵を出して生きる。

そうして文化は発展し、争いを乗り越えて彼らは繁栄した。

私はそんな世界を見守る女神であり、彼らの行く末を守る者。
女神・ペルノマリア
そう、私は創造神であるのだ!
えっへん、驚いたか生命どもよ!

などと、見えているはずのない人々に向けて胸を張ってみるが、虚しくなってやめて引き続き見守る。
ボーッと、彼らが忙しなく動くのを見守りながら世界に異常が無いかを確認するのが私の仕事だ。
特に異常は無いが、それでも何か起きては大変なので私は移り変わる彼らの様子を見逃さないように見ていた。

世界はどんどん変わる、そうやって命が

だからこそ、異変が起きたのに気付くのに遅れた。
それは些細な事だった。
ある時、世界の闇の部分で何かが蠢き始めた。
それは小さく、この世界に生まれた魔獣という生物に似たものだった。
私はどんな命だろうと拒むのを嫌うので、その何かを放置していた。
しかし、それは魔獣ではなかった。
闇にいるはずのそれは闇を呑み、光を呑み込むほど強大な暗黒を作り出した。
幸いだったのは知性ある種族が入ることのできない不毛の大地に開いた深い穴の底で生まれたことだったが、それも時間の問題で何かであるソレは私の目にも分かるくらいの異形へと変わっていく。

「まずい、早く潰さないと」

私は神の権限を使ってそれを除去しようとするが、神の鉄槌も裁きも意に介さずに闇に潜み続ける。
それどころか、私の攻撃を呑み込み成長を早めていく。
何度も行ってしまったせいで異形の姿は大きくなり、やがて声を発した。

【…ふむ、これが我が誕生せし世界か。どれどれ…】

ソレは闇を通して生命の生活を覗きだした。
世界を見通す能力を持つ事に驚きだが、それよりも闇を従えてしまっていることに私は驚いた。
急いで下界に降りてあれを何とかしないといけないが、私が行動を起こす前にヤツは突然泣き出す。

おいおいと、男が物事に対して哀しくなり、静かにむせび泣いているようだ。

【うぅ……世界中にいる生き物は…その命の一生を生きられずに死ぬ者が多すぎる。病や飢餓、争いや事故、命の奪い合いで殺される者、これでは生命が生まれた意味など無いと思うほどに…我はとても苦しい…これでは地獄だ…命があるだけで地獄だ】

それは違う。
命があるから喜びや悲しみを感じ、争いがある事は互いに譲れないものがある証拠だ。そこに間違いがあろうと、生命の連鎖に間違いはないはずだ。

だというのに、ヤツは闇の奥底からのっそりと姿を現して世界を見渡す。
形状は人型で、黒い影で出来ているのかシルエットでしか分からないがヤツは世界を睨み、天上にいる私を睨む。

【ー下らない、神もその上の存在も特別な存在の何かも全て気に入らん、そこから誕生した命すらも気に入らん。我は我の世界を創造する…この地を始まりとし、何れ幾層先の世界も手中に入れてみせよう…】

そう言って影は歩き出す。
おそらくヤツは近くのリザードマンの集落を襲う気だ。止めるために私は急いで下界に降り、神の力を振るおうとする。
しかし、ヤツは私の力では倒れない。
それどころか糧にしていた。

影が歩き出し踏んだ箇所から湧くように新種の魔獣が生まれた。

食人虫、死霊術師、鬼神、デーモン、大悪魔、大怪蟲。

この世界で自然に発生したのよりも凶悪な魔獣が何百と姿を現わす。
私は急いでそいつらにも攻撃を加えたが、どうやっても影と同じように欠けた箇所が治っていき、さっきよりも強くなっていく。

【見たか、愚かで下賤な神よ!我が闇から生まれし眷属は命を失う事なく、その痛みも傷も血肉に変えて復活する。まさに生命などよりも高等なものとなったのだ!】

「いいえ、そんなもの生きる実感を感じなければ意味がない!それよりもあなたは一体何なの!?」

私の問いに影は沈黙し、少し考え込む。

【我は何か…ふむ、敢えて名乗るなら我は全てを解放するものだ】

「解放?」

【あぁ、幾千もの世界の悲劇の欠けらが集まった者と名乗れば良いか。我自身自覚はないが、我は全てに憎悪するものだと思えば良い。ではもうここで話は終わりにしようか】

影はそう言うと魔獣達を私に向けてさし向ける。
私は急いで浮遊し、魔獣達から逃げた。
このままでは勝てない、どうにかしなければいけない。
背後で、リザードマンの集落が襲われて全員殺されてしまったが、今の私には何も出来ない。


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