世界を渡る私のストーリー
英雄紛いの偽物25
はツヅリから全て聞いた。
彼女は彼を愛していたこと。
彼の死の後を追ったこと。
その直後に異世界に行ったこと。
その異世界で魔法の切符、世界を渡ることが出来る道具を手に入れたこと。
幾千幾億の時を生き続け、全てを掛けて世界を渡ってきたこと。
自身の事情を語る彼女、ツヅリは彼が愛した人。
よく見れば、あの時彼に見せてもらった顔をしている。
髪型や雰囲気は違ってはいるが、それでもあのペンダントに入っていた絵と同じ人物だった。
気が付かないのも無理が無い、私は数千年をここで過ごした。記憶が混濁してしまうのも仕方がないのかもしれない。
「…これが私が彼を探している理由で、今までの旅だった。でもようやくやっと見つけることができた、彼はここにいたのよね?」
「えぇ…あの人はこの世界にいましたが…女神の目をごまかすためにと…」
全てを語ったツヅリにあの人がいない事を再度伝えるのは辛い。
私だってそうだ、全てを終えたら彼に会えるはずだったのに、その彼に会える事はないだろう。
「…でも、私は失敗した。あの人には会えない…私はあの人に会うために、こんな世界をメチャクチャにしたと言うのに…」
「…彼がこの世界にいたのなら、貴女の事を肯定するとは思えない。それは貴女も分かっているはずよ」
「…確かに彼は、私がこんな事したら絶対に止めようとします。でも、あの人が助けてくれた恩を返したいと思ったからやろうと思えた。大切な人だって言っていたあなたもきっと同じように…」
「そう、そうね、さっきも言ったけど、私も彼を殺した人を殺して復讐をやり遂げた。そこにはやろうと思えたって気持ちもあったし、栄一を奪ったあいつを許さないって気持ちもあった。あなたと同じよね」
「なら」
「でも、私はここまで旅をして変われた。いろんな人と会って、いろんな場所で命の尊さを学んだ。そこで一生の友であるミレーナにも出会えた。これほどの経験があれば、あの復讐に一歩前で止まれたかもって今でも考え、後悔もしている」
「……」
「でもあなたと私は、同じ人を好きになった。それなら、世界を破壊するなんて行為を止めるのに理由なんてない、あるとしても、栄一がそれを望んでいないのは私がよく知っている。だから…もうやめて」
「…でも、私はこの世界の不具合だ。あの人が望んでいなくても、死ぬ運命が決まっている私はこの先どうすればいいんだ…!」
そうだ、私は本来なら死んでいる。
何万回も死んでいる。
暗い森の中で、大嫌いな奴らと一緒に死んでいる。
勇者と呼ばれる存在に何万回も。
私自身経験は無いが、この魂の奥底で幾度も味わった死に怯えている。
魔剣もない、力もない小娘。
烏滸がましい。
それこそ神のさじ加減で殺されるいらない命。
それが怖かった。
死んで全てを失うのが怖かった。
彼女は彼を愛していたこと。
彼の死の後を追ったこと。
その直後に異世界に行ったこと。
その異世界で魔法の切符、世界を渡ることが出来る道具を手に入れたこと。
幾千幾億の時を生き続け、全てを掛けて世界を渡ってきたこと。
自身の事情を語る彼女、ツヅリは彼が愛した人。
よく見れば、あの時彼に見せてもらった顔をしている。
髪型や雰囲気は違ってはいるが、それでもあのペンダントに入っていた絵と同じ人物だった。
気が付かないのも無理が無い、私は数千年をここで過ごした。記憶が混濁してしまうのも仕方がないのかもしれない。
「…これが私が彼を探している理由で、今までの旅だった。でもようやくやっと見つけることができた、彼はここにいたのよね?」
「えぇ…あの人はこの世界にいましたが…女神の目をごまかすためにと…」
全てを語ったツヅリにあの人がいない事を再度伝えるのは辛い。
私だってそうだ、全てを終えたら彼に会えるはずだったのに、その彼に会える事はないだろう。
「…でも、私は失敗した。あの人には会えない…私はあの人に会うために、こんな世界をメチャクチャにしたと言うのに…」
「…彼がこの世界にいたのなら、貴女の事を肯定するとは思えない。それは貴女も分かっているはずよ」
「…確かに彼は、私がこんな事したら絶対に止めようとします。でも、あの人が助けてくれた恩を返したいと思ったからやろうと思えた。大切な人だって言っていたあなたもきっと同じように…」
「そう、そうね、さっきも言ったけど、私も彼を殺した人を殺して復讐をやり遂げた。そこにはやろうと思えたって気持ちもあったし、栄一を奪ったあいつを許さないって気持ちもあった。あなたと同じよね」
「なら」
「でも、私はここまで旅をして変われた。いろんな人と会って、いろんな場所で命の尊さを学んだ。そこで一生の友であるミレーナにも出会えた。これほどの経験があれば、あの復讐に一歩前で止まれたかもって今でも考え、後悔もしている」
「……」
「でもあなたと私は、同じ人を好きになった。それなら、世界を破壊するなんて行為を止めるのに理由なんてない、あるとしても、栄一がそれを望んでいないのは私がよく知っている。だから…もうやめて」
「…でも、私はこの世界の不具合だ。あの人が望んでいなくても、死ぬ運命が決まっている私はこの先どうすればいいんだ…!」
そうだ、私は本来なら死んでいる。
何万回も死んでいる。
暗い森の中で、大嫌いな奴らと一緒に死んでいる。
勇者と呼ばれる存在に何万回も。
私自身経験は無いが、この魂の奥底で幾度も味わった死に怯えている。
魔剣もない、力もない小娘。
烏滸がましい。
それこそ神のさじ加減で殺されるいらない命。
それが怖かった。
死んで全てを失うのが怖かった。
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