世界を渡る私のストーリー
英雄紛いの偽物22
壊れきった魔王城に階段などなく、外からでも見える玉座の間には1人の少女が身の丈に合わない玉座に座っている。
その姿は魔王と呼ぶにはあまりに小さく、服も頭もボロボロになっている。
それでも剣を大切に抱え、胸に下がっているペンダントを握りながらジッとしている。
ミレーナはツヅリを抱えると両翼を広げて飛び、修復に失敗して宙に浮いたバグのような床に着地した。
元々玉座の間の床だっただけに、同じ目線と高さに立った2人。
カチャリ
微かな金属音を2人は耳にした。
それが何かは、事前に察知していた。
「ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!」
声なのか、喉が潰れてしまったかのような方向と共轟音が辺り一帯を揺らし、遅れて衝撃波が走る。
それは数千の勇者をたった数秒で殺した技。
なんの特殊性もない力のみの斬撃。
本来なら、女神の加護のかかったチート効果のある武器でも防ぐのは不可能。
回避するには、この南の大陸から離れないといけない。
まさに絶対に避けることも出来ない技。
それを、ツヅリは短い詠唱のみで紡いだ術で防ぐ。
「…ったく、ここにきて神竜と魔導博士から教えて貰った絶対防御の構築7層構えが役に立つとはね。それでも、4層も破られるとは思っていなかったけど」
「なんて恐ろしい力だ。あれは神器とかそんな次元ではない…」
上手く回避した2人。
それを、正気を失った少女は何も映さない瞳で確認した。
初めてだったのか、その顔の動揺は隠せなっている。
「…ぁ…………………あぁ、あぁあああああ!!」
少女の口から声らしい声が聞こえたかと思うと、それを掻き消すように魔剣が畝りをあげる。
それは魔剣に相応しい黒い瘴気。
触れればその人物の全てを奪いかねないような、闇の深い瘴気。
魔剣から生じた瘴気を、少女は今度も声にならない声で振るう。
さっきと同じ、全てを終わらせてしまう一振り。
それも同じような方法で受けきる。
しかし、流石のツヅリでも何度も受けることは出来ない。
(想像してなかったわけではないけど、幾億年も鍛えた私の魔法でも、あの魔剣は軽々と超えてしまう…!!まるで人の偉業全てをなかった事にしてしまう…!)
規格外すぎる。
魔法の防御もあと数回で破壊されてしまう。
それが分かっているからこそ、ツヅリはミレーナに頼んだ。
「…あの娘をどうにか止めてきて!私がサポートしてるから早く!」
「ーッあぁ!この私に任せろ!!」
ミレーナはすぐ頷くと、帯刀していた剣を抜く。
そして、一瞬の間だけ防御壁を解除し、ミレーナはその隙をついてその両翼の翼で翔ける。
本気を出して飛行しているので、すぐにでも魔王の間合いに到達できる。
しかし、それを許すほど魔王は弱くない。
魔王がミレーナの攻撃に勘付いた時には、すでに次の一振りを振ろうとしていた。
その瞬間をツヅリは逃さない。
「させない!」
ツヅリは急いで魔法詠唱を行う。
さっきの詠唱よりも早く。
ツヅリが唱えた魔法は『空間跳躍』、その対象はミレーナだ。
ミレーナに向けて魔法は効力を発揮し、ミレーナの姿は消える。
魔王はミレーナが消えた事に気がつくが、それでも魔剣を振るってしまう。
先ほどと同じ轟音、そして遅れて響く大地が砕ける音。
ツヅリが防御壁を重ねていなければ自身も危うかったと思える一撃。
その破壊と脅威の中でも、ツヅリは事の終わりを見届ける。
魔王の少女、その腹部から一本の剣が刃を出していた。それは見慣れた剣で、所有しているのはミレーナただ1人。
口から血を零し、力なく魔剣を瓦礫となった城に落とした魔王はそのまま項垂れて動かなくなる。
ミレーナはそんな魔王の体を軽々と抱え、瓦礫の上にふわりと着地する。
ツヅリも急いでそこに向かう。
着いた時には魔王は血を流したま、微かな呼吸をしているだけだった。
「これで魔王は倒された。これで世界は救われるんだな…」
「そうだけど、その前にちょっと聞きたいことがあるかな」
「おいツヅリ、何を…」
ツヅリは魔王の腹に手を掲げ、掌から出た淡い光をあてる。
それだけで、傷は消える。
魔王は回復した事を証明するように、両の目を開けて2人のことを見る。
「な…なんなの……?」
「初めまして私はツヅリ、魔王になったあなたに聞きたいことがあってここまで来たの。あの魔剣についてなんだけど、詳しく教えてくれないかな?」
その姿は魔王と呼ぶにはあまりに小さく、服も頭もボロボロになっている。
それでも剣を大切に抱え、胸に下がっているペンダントを握りながらジッとしている。
ミレーナはツヅリを抱えると両翼を広げて飛び、修復に失敗して宙に浮いたバグのような床に着地した。
元々玉座の間の床だっただけに、同じ目線と高さに立った2人。
カチャリ
微かな金属音を2人は耳にした。
それが何かは、事前に察知していた。
「ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!」
声なのか、喉が潰れてしまったかのような方向と共轟音が辺り一帯を揺らし、遅れて衝撃波が走る。
それは数千の勇者をたった数秒で殺した技。
なんの特殊性もない力のみの斬撃。
本来なら、女神の加護のかかったチート効果のある武器でも防ぐのは不可能。
回避するには、この南の大陸から離れないといけない。
まさに絶対に避けることも出来ない技。
それを、ツヅリは短い詠唱のみで紡いだ術で防ぐ。
「…ったく、ここにきて神竜と魔導博士から教えて貰った絶対防御の構築7層構えが役に立つとはね。それでも、4層も破られるとは思っていなかったけど」
「なんて恐ろしい力だ。あれは神器とかそんな次元ではない…」
上手く回避した2人。
それを、正気を失った少女は何も映さない瞳で確認した。
初めてだったのか、その顔の動揺は隠せなっている。
「…ぁ…………………あぁ、あぁあああああ!!」
少女の口から声らしい声が聞こえたかと思うと、それを掻き消すように魔剣が畝りをあげる。
それは魔剣に相応しい黒い瘴気。
触れればその人物の全てを奪いかねないような、闇の深い瘴気。
魔剣から生じた瘴気を、少女は今度も声にならない声で振るう。
さっきと同じ、全てを終わらせてしまう一振り。
それも同じような方法で受けきる。
しかし、流石のツヅリでも何度も受けることは出来ない。
(想像してなかったわけではないけど、幾億年も鍛えた私の魔法でも、あの魔剣は軽々と超えてしまう…!!まるで人の偉業全てをなかった事にしてしまう…!)
規格外すぎる。
魔法の防御もあと数回で破壊されてしまう。
それが分かっているからこそ、ツヅリはミレーナに頼んだ。
「…あの娘をどうにか止めてきて!私がサポートしてるから早く!」
「ーッあぁ!この私に任せろ!!」
ミレーナはすぐ頷くと、帯刀していた剣を抜く。
そして、一瞬の間だけ防御壁を解除し、ミレーナはその隙をついてその両翼の翼で翔ける。
本気を出して飛行しているので、すぐにでも魔王の間合いに到達できる。
しかし、それを許すほど魔王は弱くない。
魔王がミレーナの攻撃に勘付いた時には、すでに次の一振りを振ろうとしていた。
その瞬間をツヅリは逃さない。
「させない!」
ツヅリは急いで魔法詠唱を行う。
さっきの詠唱よりも早く。
ツヅリが唱えた魔法は『空間跳躍』、その対象はミレーナだ。
ミレーナに向けて魔法は効力を発揮し、ミレーナの姿は消える。
魔王はミレーナが消えた事に気がつくが、それでも魔剣を振るってしまう。
先ほどと同じ轟音、そして遅れて響く大地が砕ける音。
ツヅリが防御壁を重ねていなければ自身も危うかったと思える一撃。
その破壊と脅威の中でも、ツヅリは事の終わりを見届ける。
魔王の少女、その腹部から一本の剣が刃を出していた。それは見慣れた剣で、所有しているのはミレーナただ1人。
口から血を零し、力なく魔剣を瓦礫となった城に落とした魔王はそのまま項垂れて動かなくなる。
ミレーナはそんな魔王の体を軽々と抱え、瓦礫の上にふわりと着地する。
ツヅリも急いでそこに向かう。
着いた時には魔王は血を流したま、微かな呼吸をしているだけだった。
「これで魔王は倒された。これで世界は救われるんだな…」
「そうだけど、その前にちょっと聞きたいことがあるかな」
「おいツヅリ、何を…」
ツヅリは魔王の腹に手を掲げ、掌から出た淡い光をあてる。
それだけで、傷は消える。
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