世界を渡る私のストーリー

鬼怒川 ますず

英雄紛いの偽物14

また目が覚めると勇者がいる。
それを消して、また寝る。

起きたら勇者がいて殺す。

やることは玉座に座りながら、その時がくるまで待つこと。

少しばかり世界を散歩したりした。
魔王らしくそれらしい事を魔獣や幹部に命令した。
だが、それも勇者が来るまで。
同じ肩書きの誰かが、あの人と共に旅をした仲間を連れて私を倒しに来る。

今まで仲間だった彼らが、今では定番の敵でしかない。
そして彼らを見る目も、何度もやってきたせいで格下のように思わなくなった。

それを一瞬で殺しただけで全てが終わる。
全てが終わり、全てが戻る。
今まで命じた事や物事が全て無かったことになる。
それが嫌で、私はそれらしい事をするのを辞めて、玉座でただ勇者が来るのを待つようになった。

いろんな奴が来た。
太ったやつ。
顔が細いやつ。
まだ子供のやつ。
弱そうなやつ。
中には女もいた。
おじさんやおばさん、老人もいた。

彼らは女神オステから貰い受けた『この世で最も強く、規格外の威力を誇る』武器を持って私に立ち向かうが、私の魔剣【エイイチ】に勝てた武器は1つもない。
それが誇らしくて、嬉しくて、楽しくて、喜んで、それを使った瞬間に元に戻るのが虚しくて仕方ない。

一度だけヤツにあと何回で終わるか尋ねた。
でも奴は『女神の力が無くなる日まで』といつとも知れない答えを口に出す。

650回くらいの頃に私は死のうと思い始めた。
ここまで約1200年あまり。
1人の勇者で2年は掛かっている。
それに耐えきれるわけがない。

しかし、私は自分で命を断てない。

ヤツが私に交わした契約に反するからか、体が言う事を聞かない、どうやっても逆らうことが出来ない。

勇者に殺してもらおうと思ったが、魔剣を持つとその気持ちはどこかへいってしまう。
勇者は絶対に殺す。
絶対に殺す。

殺す。
殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す。






「あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーー!!!!!!!!」


ガンガンと玉座に自ら頭部を打つ。
その度に血が飛び散り、最悪な時は肉片が辺りにばら撒かれる。
それでも命を絶てない。
そう契約呪いを受け入れたから。

1000回目は、もう私が最初何か忘れかけていた。
やってくた勇者を殺しても、破壊されて元の姿に戻れない城がある。
その城の玉座にただ座るだけ。
豪雨も風も雪も、全て浴びながら私はただ勇者が来るのを待つ。
来たら殺す。
そして元に戻る。
破壊されていく城や森は元に戻らず。

殺して、またもう一度。
殺して、またもう一度。
殺して、またもう一度。
殺して、またもう一度。
殺して、またもう一度。
殺して、またもう一度……。







バグが広がる。
世界の容量が限界になる。
僅かな変化が目に見える異常にまで成長した。
手遅れだ。
どうやっても世界の修復などできない。

女神ですらも。
勇者でも。

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