世界を渡る私のストーリー

鬼怒川 ますず

英雄紛いの偽物11

彼が私を変えた。

 本来なら、盗賊団の襲撃で野郎どもと一緒に斬り殺されていた私。
 それだけの役割だった私。
そこで私の人生が終わるのが決まっていた。

しかし、彼はそんな私を助けてくれた。
運命を変えたばかりか、その後知ることもなかったたくさんのことを教えてくれた。

「ワシはいつ介入しても良かったが、そうしてしまうと女神に気付かれるどころか、この無限の繰り返しを止めてそのまま進めてしまう。それではダメだ、ワシにはこの世界のアレには到底及ばんからな」

「介入って…あなたは一体なんなの?神を欺いた彼も一体何者なの?」

「ワシはただ世の不条理を正す者、我が信奉する神の意思によって世界へと介入することが可能なだけのしがないジジイだ。あの男もワシと同じ神の元でこの世界に介入した者じゃが、ワシ以上に誰かを助けるために動く男じゃよ」

「あの人も…貴方と同じ」

「さよう、そしてさっきの言葉を訂正すると、あの男の役目が終わって、ただ違う世界に赴いただけ。命に別状も無ければ、記憶が無くなるわけでもない。あの男だけがお主を覚えておろうよ」

「彼が…生きているの?でも…」

「一度この世界で命を断たなければ、次の勇者が現れることはない。それはこの世界のルールであり、主役の役目を欺けばあの女も気がつくだろし、何よりもワシらの存在に気づいてしまう。じゃからワシが仕方なく殺したのじゃよ」

「じゃ、じゃあ彼はここじゃないどこかに…!そこに行けば会えるの!!」

「あぁ、この世界のバグがこの世界を壊せば、ワシは必ずその願いを叶えてやろう。我が神に誓って」

ヤツはやはり不気味な笑顔を向ける。
しかし、私はそれどころじゃない。

奴の口から出たその言葉に、私はどう言えば分からずに、ただ無事なのかと思い泣いていた。

彼は生きている。
嘘かと思う。
しかし、ここまでの事を見せて説明したヤツの言葉がそうとは思えず、本当だと私は思う。

よかった。
本当に良かった。

私はペンダントを握って彼の無事を喜ぶ。
生きているのなら、会える。
そのためなら、私はどんな事でもしよう。
彼が変えた私は世界にただ1人の私だ。
決められた運命を何度もやる私ではない。
彼のために、世界を変える。

変えた後に、私は彼と再会してやる。
そうだ、そうするしかない。
そう決めたから。


「…さっきこの世界を壊すって言ったわよね。それを行えば、私は違う世界に行った彼に出会えるの」

「そうじゃ、何か問題があるか?」

「無い、むしろその話し最高よ、人が殺される人生を何度も何度も繰り返させたっていう女神、あの誰よりも勇敢だった勇者を雑魚とか抜かしたあの女を、この世界をメチャクチャにして全部台無しにしてやる。私はやるわ、彼が残した不具合として、この世界をメチャクチャに!!それが終わった後に願いを叶えてもらうわよ」

「カカカカカカカ!その心意気や良し、その姿はまさに女武者よ。契約は成立されたという事でいいんじゃな?」

「もちろん…と、その前に私貴方の名前を聞いてなかったわね」

今更のことに、なぜ忘れていたのか分からなかったそれに私は気付く。
ヤツは「ほぉ…」と顎をさすり、なぜか感心したような顔で私をまじまじと見る。

「…お主はワシの名前が気になるのか?」

「え…何か変なのこれって?」

「あ、いや……ワシはの名は…」

奴の名を聞く前に、私の夢は醒める。

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