世界を渡る私のストーリー

鬼怒川 ますず

英雄紛いの偽物10

私が生きてきた世界はどうやら何度もやり直している世界のようだった。
繰り返すのはこの世界の一定の時間、そして勇者の召喚と魔王の復活。

この世界の創造神である女神オステが何故そのようなことをするのか。
それは女神オステの誕生にあると奴は言った。

オステは創造神になる前はただの人間だったらしく、違う神から特別な力を得て誰も倒せなかったある悪神を見事倒し、その功績から神の位に昇りつめた人物。
功績と偉業、稀な才能で他の神の共感を得たオステは自分の世界を創造するほどの権限を得ることができたらしい。
しかし、オステが人間だった頃の趣味がその創造する力と嫌という程合致してしまった。

「確かタイムアタック…じゃったかな?オステは人間だった頃にそれにハマっておってな、自分が納得のいく筋書きの素早い攻略を求めて日々ゲーム機と睨み合っておったようでの…、まぁお主には難しいが、要はどうすれば時間をかけずに効率よく物事が進められるかを試しておるのじゃ」

「?……よく分からないけど、目的があるってことは終わりがあるってことよね。なら、終わりとかは決まっているの?」

「終わりは魔王の討伐によって得られる世界の平和、もしくは勇者の死よ」

「…なら、彼が死んだことによって女神はさっきの人を勇者として連れてきたの?」

「そういうことよ」

私は口にしたくなかった質問を口にして、その答えをわざわざヤツから聞いてしまう。
本来なら手持ちの武器で殺してしまおうと考えているが、不思議と冷静だった私はそれが無意味だと知り、私は何も言わずにヤツに説明しろと適当な仕草をする。
それを受けとったヤツは、私の気持ちを察したのか説明を続ける。


つまり、この世界は何度も女神の自己満足でタイムアタックを行なっている。
毎回目的に達すると自動で世界はリセットされ、元いた勇者はどこか違う場所へ送られ、そこからまた違う勇者の召喚から世界は始まる。
勇者の召喚に伴って、倒された魔王の復活も行われる。

そうやって繰り返し繰り返し世界はやり直してきていた。
なんの不具合もなく、なんの問題もなく。

「…じゃが、永久に行われる馬鹿な女神の戯れに特殊な不具合が起きた。オステが効率を重視して知的なヤツを召喚して現れた勇者、おぬしの想い他人がこの世界を変えてしまったんじゃよ」

「…彼が、あの人が世界を変えた…?でも、相手は創造神でなんでも元どおりにできるんでしょ?変えられることなんて…」

「変えたのは1人の操り人形よ、何度も死にながら、確定で勇者に殺されて、何度も勇者を襲うように筋書きを書かれてきた傀儡。その死を悼まれた事も、遺体を埋葬してもらえることもなかった哀れでかわいそうな人形を、あの男はただ1人助けてしまったんじゃよ」

「待って、それってまさか…」

その先の言葉はなんとなく分かってしまった。
しかし、それを認めると私は本当のことを知ってしまう。
怖かった。
怖いというよりも、まるでその運命しかなかったかのようで嫌だった。



彼は世界を変える不具合を起こした。
それは、女神オステでも変えられないもの。
勇者を襲った。
でも助けられた。
あの時、私だけ動けなくて、ただ戦闘に参加できなかっただけで、私は助けられた。
私だ。

私が、私は、私だけは、私なのか。

「変わったのは私なの?」

「そう、何度も繰り返す世界において、あの女神が気付かない不具合はお主じゃよ。お主こそがこの世界を変え、本当の終わりを大馬鹿な神に突き付ける権限を持っておるのじゃよ」

私は彼によって変わった。
心も想いも、存在も。
彼は変えた。
世界を変える存在に。

「世界を渡る私のストーリー」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「ファンタジー」の人気作品

コメント

コメントを書く