世界を渡る私のストーリー

鬼怒川 ますず

英雄紛いの偽物12

また目が覚めると玉座の前には大きな剣を振りかざす勇者がいた。

「おい魔王!聞いた話より美人だが本物だろうな!!」

「…美人はありがと、であんた名前は?」

「俺は勇者マサカズ!女神オステの命によりこの世界に平和をもたらすために現れた最強の男よ!魔王の悪逆、今この時を持って幕を閉じる時よ!」

そう言って勇者はその巨躯に似合わない素早さで私との距離を詰め、体験を一気に振り落とす。

ガキン

金属と金属がぶつかり合う音が響く。
それと同時に勇者の体が飛び、さっきまでいた場所へと戻っていく。

「…さすがに一筋縄じゃいかねぇな」

私が咄嗟に出した魔剣で大剣をはじき返した。
それだけなのに、なぜか楽しそうな顔になる勇者が理解できない。
まるで戦えるみたいな顔が気に入らない。

なので今度は私から攻撃を繰り出すことにする。
魔剣を振る。
ただそれだけで、世界を消しとばす威力の破壊を招く。
だが勇者はそれに察したのか大剣を床に刺し、その後ろに身を隠して防いだ。
大剣の背後に広がる破壊痕は、勇者とその後ろに続く物体だけを残してあとは消えた。
それには流石の勇者も顔を真っ青にしてしまう。

「へぇ…前の奴より面白いじゃん」

「な、なんだよこの威力…!こんなのが相手なんざ女神から聞いてねぇぞ!」

2番目にして楽しく相手が出来るかもしれないと思った勇者は、私の魔剣を前に恐怖に圧された表情に変わっていた。

私はそれがつまらなくて、今度は魔剣に秘められた威力を上げて放つことにした。
それは刺すように構える。
構えてすぐに私は剣を前に出す。

それだけで、見たこともない威力を纏った魔閃が一直線に伸びて勇者の持っていた大剣を貫通し、その背後で隠れていた勇者の体を貫いた。

「ごがぁぁぁーーーー!」

大剣から手を離して痛みに悶える勇者。
それと同時に大剣はボロボロになって崩れ、地面に残骸を落として壊れていく。
カツカツと音を立てて、私は痛みにのたうち回る勇者の元へと歩く。
勇者はそんな私を見て逃げ出そうと背を向ける。

だが私は逃さない。
その足に向けて魔剣からさっきよりも弱くした魔閃を放ち、両足の太ももを貫く。
肉が焦げる匂いが鼻に着き、さっきよりも弱くなった悲鳴が耳に木霊する。

「さーてーと、ではまず2人目ってことだし、どう殺しちゃおうかな?」

「…な、ふ、2人目?俺以外にもいるのか!? 」

「いるよ、たくさんいる。でも、もうすぐそれも終わる。貴方はそれを見ることができないだけ、残念だったね」

「や、やめ…!」

逃げるような勇者に、私はただ消しとばしただけではつまらないと思い、普通に殺すことを決める。

魔剣を勇者の頭に投げた。

ザシュ

狙った目標に向けて、魔剣は刺さり、それだけで勇者を殺す。
これで2度目。

世界はさっきと同じように変わる。
私はまたも玉座に戻り、眠りにつく。

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