世界を渡る私のストーリー

鬼怒川 ますず

無力な万能を持つ支配者25

俺は自室にあの女を呼んだ。
側近のあいつを。

しばらくして使いの者が彼女を連れて来た。
彼女はいつも通りに仕事の要件だと思っているのだろう。
真面目な顔が、俺にはおかしくて仕方ない。
笑いそうになるのも我慢して、俺はあいつに話しかける。

「わざわざすまない、ちょっと話があってな」
「…何でしょうか」
「お前は俺が好きか?」
「…え?」

何の脈絡もなく言った。
それには俺もゾッとしてしまうほどスッキリとした言い方。
ただ彼女の真意を問いただけなのに、こうもバカみたいに言えるとは思ってもみなかった。
20年近く女性を抱かなかったからなのか、死ぬ直前に大切な彼女の傷つくところを見てしまったからのか、俺にはその言葉が誰かを傷つけてしまうかもと慎重になってしまう。

「正直に言ってくれ、俺はお前が好きだ。俺のことを支えてくれたお前のことが、10年前から好きだ。皇帝としてではなく、一人の男としてお前に問う、俺のことが好きか?」

しかし、対して彼女はいつも通りーーではなく、まるでその言葉をずっと待ってたかのように微笑んで答えた。

「えぇーーあなたの事はずっと好きでした。出会った頃……いいえ、この世界に生きる前から」

と、彼女はそう言って俺に近づき両手で俺の手を持つ。
握る力など無いのに、俺にはずっしりとくる。

「…ミハル、お前だったのか?」
「そうよ、この世界で転生したから容姿は変わったけど、私はミハルよ」
「…何で今まで黙ってたんだ、お前だって気づいていたら」

気づいてたら、もう一度やり直せる。
そんな言葉が一瞬でてしまいそうになるが、目の前にいるミハルは生前の俺を殺した人物だ。
仮に俺がその立場なら、絶対に言えない。
言いたくても、言った後の復讐が怖くて言えない。
恐怖体験談みたいなものでしかない、それなのに俺は怒るわけはない。
怒れるはずがない。
そんな資格など、俺にはない。

「私はずっと貴方の側で支えてあげたかったの、あの時も自分の仕事とかストレスですれ違ってたからさ…私はやり直したかった。貴方が貴方じゃなくても、今度こそはって…」

そういう彼女は、あの時と同じ目をしていた。
付き合って当初のあの輝いていた目を。0
彼女もこの世界に転生、俺とは違って産まれたところから始まったのだろう、そのことだけでも驚く。
色々な苦労があったはずだ。
俺が生みの親を殺したりしたのに、それなのに彼女は従順に着いて来てくれた。
俺にはそれが嬉しくて、とても悔しかった。
また裏切るのか、と。

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