世界を渡る私のストーリー

鬼怒川 ますず

無力な私が愛した支配者6

彼は大いに侵略を開始した。
他国を乗っ取る、それは数千年も続いた戦争を終わらせるための唯一の近道であり、この世界なら当たり前の事だ。
彼はどんどん遠方に進んでいく。
兵士も人もその後に続き、側近の私は国に留まって内政管理を行う。
侵略した土地とそこに住まう住人、区別するべく新しく設けた制度、他国の技術を使ったインフラ整備。
革新的なことを私は中心にやっていき、私は人々から慕われるようになった。

人間に負けた種族をこき使う事には抵抗があったため、私としては普段通りに接することを心がけた。
他の人々は違う、長年続いた戦争の遺恨が大きすぎて種族に対する差別が幾たびも起き、衝突ごとに事件も何件か起こしていた。
その内政を整えるのも私だが、内乱や反乱などの現実問題も抑えなければならない。
私は彼に言われた通り、反乱や内乱が起きないように一身になって努めた。
でも、止まらなかった。

反感は大きく膨れ上がり、多くの人が武器をとって破壊を始める。
それを食い止めるのには兵士が必要だったが、多くが前線に行っており、治安維持に使える人員は限られている。
その限られた数で、膨れ上がる反乱や異種族の叛旗を抑えられるわけがなかった。
そんな内乱や反乱を止められるのはいつも彼1人だけだった。
なんども手紙を送って、何度も戻ってもらった。
私は手紙を書く度に彼に迷惑をかけると自責の念に囚われ続けた。

「お前らは、俺がいなければ何にもできないんだな」

反乱を起こした者たちの死体を蹴飛ばしながらなんの気も無しに言ったその言葉は、特に私の心に突き刺さる。
あぁ、なんて無力なんだろう。
人間では限界があるのか、それとも私の能力不足か。
私は彼に、あの彼に褒められたかったのかもしれない。
あの時と同じ笑顔で。
でも叛旗はそんな私の心を踏みにじるかのように間を空けながら掲げられ、各地方で起きた。
彼はその度に万能を使って治めて、また違うところに赴いて治めて、治めて、殺して、治めて、殺して、治めて、殺して。
そんな事で彼と私は19年も時が経ってしまった。

私は19年で子供から立派な大人になり、前世とは違ってここの両親から引き継いだ美麗な顔で、この国の中で一番の才能ある美女として持て囃される。
しかし、私はそんなことなどどうでも良く、どうすれば全ての種族が彼に従ってくれるのか、そればかりを考え続けた。

悩みが多くて、睡眠時間も少ない。
私自身何故ここまで頑張れるのか不思議なくらい。

そんな私の悩みも、彼はすぐに解消させてしまう。
私が望んでいない、残酷な彼の考え方で。

ある日突然彼は支配した国に向かって、遠方から次々と殺戮を始めた。
ただ殺すのではない。
殲滅。
オークやゴブリンと同じ運命を、支配してきた国は辿った。
男女問わず老若男女子供の死体は細切れに、、バラバラと1人も残らずに。
国だけではない、人間の国にいた異種族も全て殺した。
支配していなかった魔族を殲滅した。
歴史が変わったとか勢力が変わったとかではない。数千年の戦争を終わらせる簡単な方法を経った1週間で終えた。
彼は、そこから大きく変貌した。

そこにいたのは私の愛した人ではなかった。
万能を持つ絶対的な権力者だった。



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