世界を渡る私のストーリー

鬼怒川 ますず

無力な万能を持つ支配者24

言った。
直後、空間が濁ってなぜか息苦しくなった。
呼吸も上手くできない苦しさと、どっと体の外から加えられたかのような気怠さに膝を曲げてしまう。
久しぶりに感じる『苦しみ』に目を閉じて耐える。
変な汗が額から流れる。
手足がガクガクと震えた。
それが1分ほど…いや実際には数秒ほどだった。
苦痛が消えて、目を開けると今まで通りの部屋だった。
周りに異変はなく、なにかが変わったわけではない。俺自身が変わっただけだった。
声が聞こえた。

「カカカ、お主の全能は確かに返してもらった。願いを叶えてやったぞ」
「…あんがとよ」
「…ふむ、もう少し焦ると思っておったが…やはり諦めがついたか?」
「気にするな、俺がしたかったことだし…」
「気にはしておらんよ」

声はいつも通りに聞こえる。
なのに体に力が無い感覚が、いつも聞いていた声に違和感を与えてくれた。
俺はその現実に全能を無くしたんだと改めて実感し、天井を仰ぐ。
高い、今まであまり意識しなかった手の届かない場所。
俺はそこを見てから、再度声に聞く。

「もう一個…いいか?」
「なんだ?まだ何かを願うのか?」
「まぁ些細なことなんだろうけど…お前もなんでもできるなら、これだけはなんでもやってでも実行してくれ」

俺はもう一度、最後の願いを言った。

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