世界を渡る私のストーリー

鬼怒川 ますず

カードの館の人形姫9

ババ抜き

2人で行った勝負は人形姫が勝ち、私が今度はミレーナと案内してくれた人形の少女を交えて再戦を挑んだが、すぐに人形姫が一抜けして見事に全員負けた。



「あー何この人!?とんでもないくらい強い!」

「ヴィヴィーラ様!始めて2分で上がるなんておかしいです!」

「黙らぬか167563!お前も修行すればこれぐらい容易にできるはず、しかもビリケツとは……同型の先輩を見習え!」

「ヴィヴィーラ様強いね、もう一回やる?」

「興が乗ったからもう一度やっても良いぞ、特にツヅリも強いから私も本気を出さんといかんしな!」


そう言って意気揚々とカードを集めてシャッフルし始めるヴィヴィーラ。
さっきまで厳しかったその顔はまるで遊戯で遊ぶ女の子のように笑顔で満ちていた。

温かい。
私が、この奇跡を見て感嘆している間に2人の敗者がその姿に違うものを見ていた。

「ヴィヴィーラ様が獲物を狩る顔で恐い……魔王トシゾウの時の戦いもこんな顔してたんだろうなぁ」

「私はまだ初心者なんだけど…手加減してよ…」

口々に不満や不平を言う二人の獲物にはさすがに同情した。

あれから8時間も経った。

広い執務室には様々なゲーム道具が散らばり、私たちはようやくとった休憩で一息ついていた。
ヴィヴィーラ達もまるで生きている人間のように疲れた顔で、それでも満足気に床に横になって手足を広げていた。

その姿が、私にとっての奇跡だった。

1700年前、ヴィヴィーラが彼と言った人物が望んでいた光景がこれならば私はその偉業を前にしている。

多くの世界の偉業を見てきたが、造られたもの……人形や人造生命体はすべて悲劇的な結末を送ってきていた。
ほとんどが悲劇的で、それでもなお自分の存在を証明しようと必死に動いていた。
作製者達も一部外道はいたが、それでも彼らの幸せを祈っているものもいた。それでも最後は酷い終わり方をする。

作り物が終わった後にその偉業を糧に発展する世界があった。
作り物が消えて新たな世界を創造しようとする者達がいた。
作り物だけしかいなくなった世界があった。

そんな中でも、この世界は奇跡でできていた。

人間と人形の共存。
多くを求めず、唯それに等しい利益を出す。
魔王も勇者も、世にいる権力者も、ここには手を出せず中立を保つ。
ここ世界の前の姿を知らないが、これはひと時の平和であり、おそらく数千年の間はここだけ平和なままだろう。
転生した彼がヴィヴィーラを造った意図もここにあるはずだ。

…そして、ようやく掴めた。



「ねぇ、ヴィヴィーラ様。あなたを作った主人の書物とかって読ませてもらえないかな?」

「遊び疲れていたくせに、唐突だなツヅリ。人間の一生で書いた彼の書物、アレを読ませるにはもう少し私とゲームに付き合え」

「だめ、ゲームはもうおしまいね。それに……」


私は彼女に向き合って言う。


「彼をこの世界に呼んだ神について、少し知りたいの」

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